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 数学的な予測によれば、火星と木星の間にある小惑星帯には、「周期表の範囲外」にある超重たい元素でできた小惑星がただよっている可能性があるそうだ。

 この太陽系には、これまでに知られている元素では説明できないほど、やたらと密度が高く、重たい小惑星がある。

 こうした「コンパクト超高密度天体(compact ultra dense object/CUDO)」はなぜそれほどまでに重いのか?

 『European Physical Journal Plus』(2023年9月15日付)で発表された研究によれば、その理由は化学元素の「周期表」に記載されている元素を超えた「超重元素」でできているからだという。

【画像】 なぜ異常なほど重い小惑星があるのか?

  宇宙には「コンパクト星超高密度天体(compact ultra dense object/CUDO)」と呼ばれるやたらと重い小惑星がある。

 自然にできる元素の中で一番重い(密度が高い)とされるのは、原子番号76の「オスミウム」だ。だがコンパクト超高密度天体それよりも重い。

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一番重いとされる原子番号76の「オスミウム」 / image credit:Images of elements (CC by 3.0).

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火星と木星の間にある小惑星「ポリヒムニア」が重すぎる

 コンパクト超高密度天体の一例を挙げるなら、火星と木星の間にある小惑星帯をただよう直径55kmほどの「ポリヒムニア(33 Polyhymnia)」がそれだ。

 この小惑星の質量を、重力の影響から算出してみたところ、不可解なほどに重いことが明らかになっている。

 その重さはポリヒムニアがきわめて高密度であることを物語っていたが、ポリヒムニアの質量では、それほどの密度に圧縮されるはずがない。

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photo by iStock

周期表の範囲を超えた未知の元素でできている可能性

 なぜポリヒムニアなどのコンパクト超高密度天体は、これほどに重いのか?

  1つの仮説では、謎めいた暗黒物質(見えないのに質量はあるという物質)の粒子で満たされているからだと説明する。

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 だが、アリゾナ大学のジョハン・ラフェルスキー氏らは、また違う可能性を示唆している。それはポリヒムニアが、周期表の範囲を超えた未知の元素でできているというものだ。

もっとも重い元素より重い超重元素

 知られているものとしては一番重いオスミウムよりさらに重い元素が、自然に安定して存在できるのかについては議論がある。

 そのような「超重元素」は、原子核にたっぷり詰まった陽子同士が反発するおかげで、放射性が高く、数ミリ秒以内に崩壊すると考えられる。

 だが、周期表の原子番号164付近には「安定の島」と呼ばれる超重元素が存在できる領域があるとする説もある。この陽子の数ならば、元素がたちまちのうちに崩壊せず、短い間なら存在できるかもしれない。

 そしてラフェルスキー氏らが導き出した数学的な結論は、この予測と一致するものだ。

 ラフェルスキー氏らは、「トーマス=フェルミ模型」という原子についての模型を用いて、超重元素の原子構造を理論化した。すると原子番号が164に近い元素の密度は、1cm3あたり36~68.4gだろうと考えられた。

 この数値は、ポリヒムニアの推定密度(75.28g/cm3)に近い。つまり、もし本当に超重元素が存在するのならば、暗黒物質に頼らずともポリヒムニアなどのコンパクト超高密度天体の重さを説明できるということだ。

 だからと言って、今の時点でコンパクト超高密度天体の重さが暗黒物質によるものという説が否定されたわけではない。いずれも今のところ仮説に過ぎない。

 謎めいた小惑星で一番楽しいのは、その結論がどうなるのかよくわからないことかもしれない。

References:Superheavy elements and ultradense matter | The European Physical Journal Plus / Asteroid 33 Polyhymnia May Contain Elements Outside The Periodic Table | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo

 
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火星と木星の間にある小惑星帯に元素周期表範囲外の元素が含まれている可能性