国民を不安に陥れるのが「裁判官のお仕事」なのか。

 生殖能力をなくす手術を望まない性同一性障害の患者が戸籍上の性別変更を求めた家事審判で、岡山家裁津山支部(工藤優希裁判官)は2月7日、手術を事実上の要件とした性同一性障害特例法の規定は憲法に違反するとして、申し立てを行った患者の「女性から男性への性別変更」を認めた。最高裁判所では2023年10月25日最高裁大法廷で性別変更の必要要件としての性転換手術規定は「違憲・無効」と判断していた。

 この最高裁の判断が出た後、やはりというべきか、堂々と「女湯」に押し入る男たちが現れた。

 2023年11月17日三重県桑名市長島町の温泉施設で、入浴客が女湯で体を洗っていた男を発見し、知らせを受けた従業員が警察に通報。愛知県春日井市の無職、43歳の男が建造物侵入の現行犯で逮捕された。

 地元警察によれば、男は女装して受付を済ませる際、従業員が「女性の格好をしていたため、女性と判断」し、女湯のロッカーキーを渡したという。男は「心は女なので、なぜ女子風呂に入ってはいけないのか全く理解できない」と供述したという。

 さらに12月8日には鳥取県米子市内の大衆浴場で、20代の女性入浴客が、女湯に入ってきた男に体を触られる事件まで起きた。

 不同意わいせつ容疑で逮捕されたのは、米子市に住む32歳の無職の男で、やはり「心は女」「マッサージのつもりで触った」と主張し、容疑を否認。おまけに女湯押し入り男を「現行犯逮捕」した三重県警と違い、鳥取県警は女性入浴客にわいせつ行為をした男の「心が女なのか捜査中」という、ゆとり捜査発言まで飛び出した。

 これらの事件が起きた後だけに、全国の裁判官がどのような判断を下すのかが注目されていた。

 岡山家裁津山支部は今回、最高裁の判断を踏襲。申し立てを行った「男性」の名誉のために付け加えると、彼は手術は受けていないが、ホルモン治療は行っている。見た目もジェンダーレスで、交際するパートナーとの結婚を望むために性別変更を申し出た、という切実な理由もある。「異性と混浴するため」などといった下世話な性転換希望ではなかったのだ。

 今回の判断は妥当として、逆の立場で男が「男性自身」を切らなくても女性と認められてしまうのか。「心が異性」と主張さえすれば、何をやっても許されるのか。裁判官が少し踏み込んだ「線引き」を提示しないと、これからも女湯に押しかける「性犯罪者」はあとを絶たないだろう。

(那須優子)

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