艦艇や航空機、装甲車に搭載されている機関砲には、バルカン砲チェーンガン、リボルヴァーカノンといった名前が付けられているものがあります。それぞれの機関砲の違いとはどこにあるのでしょうか。

それぞれ機関砲に違いはあるのか?

艦艇や航空機、装甲車に搭載されている機関砲には、バルカン砲チェーンガン、リボルヴァーカノンといった名前が付けられているものがあります。どれも20mmかそれ以上の大きさの弾を短時間で大量にバラまく機関砲となっていますが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

基本的には発射形式が違います。バルカン砲チェーンガンはどちらとも電気を使って作動する機関砲ですが、そのうち、バルカン砲は、19世紀に登場したガトリング砲を祖先に持つ、複数銃身が電力で回転して弾を発射する形式の機関砲となっています。

電気を使わない機関砲は、発射時のガス圧でするボルト動かし、排莢と次弾装填を行う形式となっていますが、電動式であるバルカン砲は発射速度がかなり速いのが特徴です。

例えばガス圧を使う機関砲で戦前・戦中に普及した「エリコンFF」20mm機関砲の場合、発射速度が毎分520~540発であるのに対し、1959年から登場した同じ口径20mmであるM61「バルカン」は毎分6000~6500発という驚異的な発射速度です。高速化する航空機に対応するためには、発射速度も向上しなければならないという考えのもとで開発されました。

発射速度のほかにも、バルカン砲は複数の銃身により、単銃身よりも摩耗や加熱を抑制でき、外部動力で動くため弾づまりなどが起きても強制的に排莢し、次弾装填ができるといった動作の確実性という利点もあります。しかし、初弾発射までの時間がガス圧よりもやや長く、初弾からしばらくは弾道が安定しない、さらに重量が重くなるなど、欠点がないわけではありません。

なお、バルカン砲とは基本的にM61だけを指す言葉です。ほかの電力で動くガトリング砲に関しては、A-10サンダーボルトII」攻撃機などが搭載する口径が30mmのものは「アヴェンジャー」、小型の7.62mmのものは「ミニガン」と呼ばれます。また、艦載型のM61は小型のレーダーとセットのため「ファランクス」と呼ぶこともあります。そのため、特定のモデルに限定しない、動力で回転する機関砲全てを指す場合は「ガトリング砲」と呼ぶ方が適切です。

チェーンガンはバルカンと別の場所が電動!

チェーンガンは、通常の機関砲が、ガス圧でボルトを動かすのに対し、それを電力で行っている機関砲です。モーターを動力源として、ボルトに連結したチェーンを駆動させることで、全自動餅つき機のような要領でボルトがモーターの力で前後し、発砲・排莢・次弾装填を行います。

この形式の大きな利点は、給弾を電動で行っているため、不良な弾が発生した場合も、排莢レバーを操作し手動で除去する必要がない点です。モーターの力によりボルトが動くことで、不良な弾も通常の弾と同じく強制的に排莢できるため、弾づまりが発生しないようになっています。

発射速度は同じ電動式ガトリング砲よりも低く、銃身もひとつしかないため、加熱されやすいという欠点はありますが、初弾から弾道は安定しています。そのため、数発のみの射撃にも適しており、バルカン砲では難しい発射速度の調整も射手の方でやりやすくなっています。

主に艦艇用や車両用に使われていますが、航空機ではAH-64D「アパッチ・ロングボウ」攻撃ヘリにも搭載されています。

リヴォルヴァーカノンは名前の通りの内部構造

リヴォルヴァーカノンの場合は銃身の後ろに内蔵されている回転式の薬室(リボルバー)が、ガス圧により回転して弾を発射するタイプの機関砲です。2024年現在でも、ジェット戦闘機機搭載の機関砲としては、バルカン砲と並び主流の武装です。バルカン砲が銃身を複数持つのに対し、こちらは銃身はひとつで、後部のリボルバーが回転することで、次々と弾を発射させることで発射速度を向上させています。

発射速度に関してはバルカン砲よりは劣りますが、チェーンガンよりは早くなっています。また、基本的にガス圧で全ての動作を行うため、電源が必要なバルカン砲よりも、コストを安く抑えられるという利点があります。

射撃面では、ガス圧であるため弾づまりの危険性があり、銃身が1本のためにチェーンガンのように加熱し易いというのも欠点はあるものの、初弾の発射はバルカン砲よりも早く、弾道の安定性もリヴォルヴァーカノンの方が高いといわれています。

このようにバルカン砲ガトリング砲)、チェーンガンリヴォルヴァーカノンの3種類は欠点も利点も異なることから、その兵器が持つ任務や国の運用思想などにより使い分けられています。

整備中のM61「バルカン」(画像:アメリカ海軍)。