一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週は、経済の好調を示す失業率が回復に向かうフィリピンの現状を中心にレポートしていきます。

フィリピン平均失業率…改善の理由は?

2023年、フィリピンの失業率が過去最低の4.3%に低下したとフィリピン統計局(PSA)が発表しました。PSAの労働力調査の予備結果によれば、昨年の平均失業率は、2022年の5.4%よりも低く、ほぼ20年ぶりの低水準です。

昨年の失業者数は219万人であり、2022年の267万人よりも低かったと報告されています。12月には失業率が3.1%に低下し、前月の3.6%からも、2022年の同月の4.3%からも低くなりました。これもまた過去最低の水準です。この月、失業者数は160万人に減少し、2022年12月の222万人から50万人以上減少しました。

一方、昨年12月の雇用率は96.9%と過去最高に達し、11月の96.4%および2022年12月の95.7%を上回りました。12月の雇用フィリピン人数は5052万人であり、前月から88.9万人増加。年間を通じて、2022年12月の4900万人から152万人の雇用が増加しています。

昨年の仕事の質は向上し、アンダーエンプロイメント率(雇用されているが、さらに仕事を探しているか、労働時間を延長したいと考えている人々の割合)は、14.2%から過去最低の12.3%に低下。これは、昨年のアンダーエンプロイドフィリピン人数が668万人から595万人に減少したことを意味します。

昨年12月のアンダーエンプロイメント率は11.9%。11月の11.7%からわずかに上昇したものの、2022年12月の12.6%よりも低い値でした。12月のアンダーエンプロイドフィリピン人数は601万人で、11月の579万人および2022年12月の620万人よりも増加しています。

昨年12月の労働力は5213万人で、前月より65.8万人、2022年12月より90.7万人増加。労働力参加率(LFPR)は66.6%に達し、11月の65.9%および2022年12月の66.4%から改善しました。

昨年12月、フィリピン人の平均週労働時間はに40.6時間。これは11月の40.2時間および2022年12月の40.3時間よりも長い時間です。産業別では、サービス業が引き続き最大の雇用主であり、総数の57.3%を占めています。農業が24.4%、製造業が18.3%と続きます。

フィリピンの失業率が過去最低に達したことは、農業部門での安定した雇用創出や季節的要因によるものだ考えられています。また政府のイニシアチブや台風の影響が少なかった(農業の雇用を維持した)ことが影響している可能性もあるとされています。

経済押上げ効果が期待できる「インフレ率」は低下傾向

1月のヘッドラインインフレーションは、フィリピン中央銀行(BSP)の2~4%の目標範囲内に2ヵ月連続で落ち込み、3年以上ぶりの低い水準である2.8%に急減速しました。

フィリピン統計局(PSA)の予備データによると、12月の3.9%から1月の2.8%に下がり、2022年の同月の8.7%からも低下しました。BSPは、2024年第1四半期にインフレ率が大幅に抑制される見込みであり、これは主にベース効果のマイナスと、主要商品に影響を与える供給制約の緩和によるものとしています。

食品と燃料の価格の変動を除くコアインフレーションは、12月の4.4%から1月の3.8%に引き続き低下しました。これは、17ヵ月ぶりにコアインフレーションが2~4%の目標範囲内に収まり、2022年6月の3.1%以来の低い数字です。

食品インフレ単独では、1月の食品インフレは3.3%に低下し、前月の5.5%および1年前の11.2%から低下しました。これは、2022年3月の2.8%以来の食品インフレの最低水準です。主な要因は野菜、塊茎、バナナ、豆の価格の急速な低下。魚介類も食品インフレの低下に寄与しています。

一方で、米のインフレ率は依然として加速しており、1月には12月の19.6%から22.6%に上昇しました。これは、2009年3月の22.9%以来、15年ぶりの高い水準です。これはエルニーニョ現象やベース効果の影響です。

最新のインフレと国内総生産(GDP)の結果を考慮したうえで、BSPの金融政策決定会議が2月15日に開催される予定です。BSPは、5.25~5.5%の16年ぶりの高水準で基準金利を2回連続して据え置いています。これは、2022年5月から2023年10月までの間に450ベーシスポイント(bps)引き上げた後のものです。

写真:PIXTA