南極大陸が発見されたのは1818年のことだが、その後、全陸地の地形が地図化されたのは、100年以上が経過した1920年のことである。

 ところが、コロンブスがアメリカ大陸を発見した1492年から20年も経たない1513年に作成され、エジプトを征服したセリム1世に献呈されたとする地図の中に、当時の技術ではとうてい観測不能だった南極大陸の輪郭が描かれていた。今もってその理由が謎に包まれる古代地図。それが、ピリ・レイスの地図だ。地理学の研究家が言う。

「この地図は1929年トルコイスタンブールのトプカプ宮殿博物館に収蔵された写本類の中から発見されたもので、紀元前に描かれた複数の古地図を元に、オスマン・トルコの提督ピリ・イブン・ハジ・メムドが製作したとされています。ガゼルの羊皮紙で作られており、インド洋と思われる右半分は失われているものの、左半分の断片には大西洋が描かれている。そこには氷に覆われる南極大陸の海岸線が、しっかりと記されていたんです。つまりこの地図は、南極大陸が発見される遥はるか昔、その存在を知る何者かによって描かれたことになる。まさに謎に満ちた地図というほかありません」

 この地図の作成にあたっては、紀元前4世紀のアレクサンドロス大王の時代から伝わる33枚の古地図が元になっているとされる。

「そんな古代に、それを測量できる高度な文明が存在していたということです。研究者の間では、南極大陸の氷の下に、失われた超古代文明が眠っているのではないか、といった希望的観測もある。ピリ・レイスの地図は、世界の研究者たちを魅了し続けています」(前出・地理学の研究家)

 現在、この地図はトプカプ宮殿に保管されており、一般公開はされていないが、古代文明の痕跡を示す意味では、世界的に貴重な資料となっている。

ジョン・ドゥ

アサ芸プラス