北朝鮮当局は、国内向けに公開した動画で、自由民主主義体制を求める新党を結成した人々を摘発したと明らかにした。

この動画は、韓国のサンド研究所が入手し、先月28日に公開したもので、主な内容は「不順録画物(韓国や外国のコンテンツ)は社会主義制度を蝕む危険な毒素」であることを実例を挙げて紹介して警戒感を高めようとするもので、2021年か2022年に公開されたものと思われる。

中でも新党結成のくだりは驚きだ。

シン・テスという名の中学校教師が、南朝鮮放送と不順録画物に接して思想的に変質し、北朝鮮の制度に反感を持つに至った。普段から朝鮮労働党が自分を認めてくれないと不満を抱いていた彼は、自由民主主義に基づく新たな党を立ち上げ、10人の不純分子と国家転覆の陰謀を企んだが、人民の厳しい裁きを受けた、というものだ。

動画はシン氏の顔写真、メモ書きされた新党の綱領、組織原則を映し出している。これが事実だとすれば、シン氏らはもはや生きてはいないだろう。

それ以外にもキリスト教に入信した音楽教師、外貨と引き換えに電話帳など機密文書を外国に売りさばく行為などが、不順録画物の悪影響として挙げられている。

動画は、北朝鮮国内で頻繁に開かれている幹部に対する講演会で上映されたものと思われるが、新党結成の動きが事実かどうかは不明だ。

北朝鮮には朝鮮労働党以外にも、朝鮮社会民主党や天道教青友党が存在するが、いずれも衛星政党で、野党としての政党は存在しない。韓国・統一研究院のチョ・ハンボム博士は、米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に、綱領、指針まで備えた自生的組織としての政党が確認されたのは初めてだとして、大きな意味があると述べた。

また、サンド研究所のチェ・ギョンヒ代表は、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に、動画の要点は外部の文化コンテンツの視聴、流通に置かれ、その指示を受けて政党を作ったということならば、外部からの文化が国内で拡散すると体制がゆらぎかねないということを示した事例だと指摘した。

韓国から流入する韓流コンテンツは、北朝鮮の文化を変質させるほどの大きな影響力を持っている。危機感を覚えた当局は、反動思想文化排撃法、青年教養保障法、平壌文化語保護法の「反韓流三法」を制定し、取り締まりにやっきになっているが、極刑で対処しても根絶には至っていない。

韓国デイリーNKは北朝鮮当局が制作した、韓流コンテンツを視聴したなどとして公開批判される人々の映像を入手した(デイリーNK)