「犯罪」と聞くと「乱暴」や「威圧的」といったイメージを抱く人が多いかもしれないが、逆に「親切心」や「同情心」を利用して近づいてくるのが詐欺師である。

以前X(旧・ツイッター)上では、ドン・キホーテ店員を名乗る人物からかかってきた「疑惑の電話」が話題となっていたのをご存知だろうか。

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■「カードが不正利用されてる」

ことの発端は2023年12月、とあるXユーザーが投稿した一連のポスト。

最初の投稿には「『表示圏外』の通知でドン・キホーテ梅田から電話があり、『父親名義のクレジットカードで買い物をしようとしている中国人がいて怪しく思い本人確認したところ、住所とこの電話番号を言われたが、生年月日が言えなかったので念のため確認の電話をしてきた』とのこと」と綴られている。

続く投稿では「『紛失か盗難にあっていないか』と聞かれて『ありません』と伝えると、『個人情報が漏れて不正にカードを作られる被害が多発している情報もあるので、警察に連絡しておく』と、一旦電話が切れたがまたかかってきて『クレジットカードの消費者センターに連絡するよう警察から言われた』とのことで、電話番号を告げられた」と、その後の経緯が記されていた。

 

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■「騙されそう」と怯えるネット民続出

会話の内容を読んで、怪しさに気付いた人もいることだろう。

3つ目の投稿では「一応メモったけど『050から始まるIP電話って明らかにおかしくないか?』と思って調べたら、消費者センターは03から始まる固定電話…」「警察に連絡してみました。そういう詐欺が多発してるらしいです」と、真相が明かされていたのだった。

ポスト本文は「言われた番号にかけると個人情報根こそぎいかれてアウトらしいです。皆様もお気をつけください!」と締められている。当然ながら、発信元の番号もドンキ店舗ではなかったようだ。

非常に手の込んだやり口は人々に衝撃を与えており、Xユーザーからは「何重のトラップを仕掛けてるんだ…」「これは巧妙すぎる、騙されそう」「詐欺被害を装った詐欺っていうのが、悪質」「『カードが不正利用されたかも』って聞くと、頭真っ白になるもんね」など、驚きの声が多数寄せられていた。

クレジットカード

誰もがクレジットカードとスマホを利用する現代、話題となった事例は決して人ごとでないと言える。そこで今回は、こうした詐欺の事例について「警視庁」に詳しい話を聞いてみることに。

すると、前出の会話内容の中に潜んだ「致命的な矛盾」が明らかになったのだ。

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■「警察官」を名乗る人物がやって来て…

話題のポストを全て確認した警視庁の担当者は「2023年中の被害傾向をみると、百貨店等を騙った場合の殆どが『キャッシュカード詐欺盗』に発展しています」と、説明する。

特殊詐欺における「キャッシュカード詐欺盗」の手口について、担当者は「警察官や銀行協会、大手百貨店等の職員を装って被害者に電話をかけ、『キャッシュカードが不正に利用されている』などの名目により、キャッシュカード等を準備させた上で隙を見るなどし、同キャッシュカード等を窃取するものとなります」と語る。

クレジットカード

キャッシュカード詐欺盗」は、20年1月から「特殊詐欺」として計上することとなった手口で、口頭で説明された番号に電話をかけてしまった場合、前出の「キャッシュカード詐欺盗」の被害に遭うと推測される。23年は1月〜11月末の期間内で、318件もの被害が確認できた。

なお、警視庁において確認できるドン・キホーテを騙った手口は1件のみである(23年11月末時点)。また、今回のケースとは若干やり口の異なる詐欺も確認されているようだ。

その手順というのが、まずは家電量販店員を名乗る人物から「あなたのクレジットカードを不正に使っている者がいるので、警察署に届け出ました」等の電話がかかってくるパターン。

次いで、警察官を名乗る人物から「犯人を逮捕しました。カードのスキミングをされ、口座から現金が引き出されています。どこの銀行の口座を持っていますか。キャッシュカードを準備しておいてください、今から警察官をご自宅に向かわせます」といった電話がかかってくるという。

そして警察官を名乗る人物が被害者宅に訪問し、自ら準備してきた封筒に「被害者名義のキャッシュカード」および「暗証番号記載のメモ」を入れさせ、「封をするため印鑑を持ってきてください」等と被害者に指示を出す。

そして被害者が印鑑を取りに行っている隙を見て、予め準備しておいたトランプ等のカード類が在中した封筒にすり替え、戻ってきた被害者に何食わぬ顔で封筒に封をさせ『新しい封筒が届くまで、この封筒は開封せず保管しておいてください』等と伝え、すり替えたキャッシュカードを盗み取る…というのだ。

 

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■警察からの伝言は「あり得ません」

今回話題となったポストを受け、記者が最も違和感を抱いたのが、詐欺師の発した「クレジットカードの消費者センターに連絡するよう警察から言われた」という下りである。果たして警察が「伝言」という形式で第三者を介し、指示や依頼を出すケースはあり得るのだろうか。

こちらの疑問に対し、警視庁の担当者は「あり得ません」と断言。その理由について「第三者に『◯◯に電話をしてほしい』等の依頼をすると、本人(今回でいう被害者)に連絡がいったか確認がとれないため、第三者を介すことなく、警察官自身が本人に直接連絡をしています」と、説明していたのだ。

つまり、クレジットカード関連の電話で「警察から『◯◯をしてほしい』と連絡があった」という説明があった時点で、高確率で詐欺を疑って良いだろう。

これらの特殊詐欺への注意喚起を交え、警視庁は「不審な電話(アポ電)があれば、迷わず警察に通報してほしいです」「国際番号や知らない番号には安易に出ることなく常時、留守番電話の設定にしたり、迷惑電話防止機能付き電話機の活用をしたり、ナンバーディスプレイやナンバーリクエストの活用をして頂きたいです」とのコメントを寄せてくれた。

クレジットカード

繰り返しになるが、相手の親切心や同情心を利用し、「不安」を煽ってくるのが詐欺師の常套手段。突然の電話の内容に不安を感じたときこそ、落ち着いた対応を心がけたい。

 

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■執筆者プロフィール

秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク

新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。

X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。

クレカ不正利用を告げる電話、その手口にゾッとしたが… 警視庁は「あり得ない」と断言