高速道路SA・PAの駐車場を将来的に有料化することを検討――法的にも休憩のために必要とされている場所なのに、どうしてそのような議論になってきたのでしょうか。SA・PAそのものが進化する設備投資のためかと思いきや、そうではないようです。

一気に打ち出された「今後のSA・PA整備方針」

2023年の12月末、高速道路SA・PAの駐車場を将来的に有料化するという議論が大きく報じられ、話題になりました。

これは、日本高速道路保有・債務返済機構NEXCO3社(東日本・中日本・西日本)、本四高速12月26日に発表した「高速道路SA・PAにおける利便性向上に関する整備方針」を受けてのもの。このなかでは、大型車の駐車マス不足へのさらなる対策として、駐車場の立体化や、スぺースをより有効に活用するため複数縦列式(コラム式)にすることなどを、2024年度から検討するとしています。

NEXCO各社は2022年度までに約3000台分の大型車駐車マスを拡充してきましたが、いたちごっこの様相で、依然として駐車マス不足が解消されない現状があります。東名・新東名といった主要高速道路では、夜間にトラックが本線まであふれて駐車している有様です。

その抜本的な解決だけでなく、たとえばドライバー向けシャワー施設、24時間営業店舗の増強といった労働環境改善への施策や、EV充電器の大幅増加などといったことも「整備方針」には打ち出されています。

ここまでくると、既存設備の修繕・改良というレベルを超え、大幅な設備投資を必要としていることがわかります。そこへさらに「駐車場有料化」という手段も見据えられているなか、そのコストはどう捻出されているのでしょうか。

NEXCO東日本によると、「シャワーやEV充電器など、高速道路料金以外でお客様から利用料を頂いている設備については、サービスエリア事業(関連事業)として整備をしております。高速道路のご利用で休憩に必要な駐車場やトイレは、道路として必要な設備として、高速道路事業として整備をしております」とのこと。両者はハッキリと財源が分かれるようです。

そのようななか、現状無料の駐車場へ有料制を導入することについては、「財源確保のための有料化ではありません」とし、駐車できないクルマをなくすためのコントロールの一環であるとしました。

駐車場有料化への踏み台が?

駐車場の「有料化」、その検討に入る前段階として、まず進められていることがあります。それが、2023年11月から順次導入が始まった、大型車の「短時間限定駐車マス」です。NEXCO東日本管内では同月に東北道の上河内SA上り、12月に蓮田SA上りで導入されており、一部の大型車マスが「60分以内」の利用と決められています。

この短時間限定駐車マスは、実証実験の位置づけですが、「長時間駐車車両の存在により、駐車ができずにSA・PAを出ていく大型車が多い休憩施設」を対象に整備するとされています。

「有識者委員会にて実施した長時間駐車の実態分析では、長時間駐車(8時間以上)車両の内、トリップ長が300km未満の高速道路の走行距離が短い車両が4割を占めており、『自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)』で定められている休息によらない、時間調整等による長時間駐車を行う車両が多いことが明らかとなっています」

NEXCO東日本はこう話し、駐車マス不足で「4時間に30分の休憩を適切にとれないドライバーへの対策として」短時間限定駐車マスを運用しているとしました。

さらに、「有料化」については次のように説明しました。

「短時間限定駐車マスの拡大を進めていっても、混雑が解消せず、適切な休憩環境を提供できない休憩施設に対して、改善基準告示に基づく休憩が必要となる利用者への配慮をした上で、一定時間以上の利用に対して検討するものとしており、中長期的な対策として今後検討していく予定です」(NEXCO東日本

つまり、短時間限定駐車マスがドライバーのあいだで適切に運用されなければ、今後「有料化」議論に傾く可能性がある、という見方もできます。

有料化ついては、予約システムを導入した東名の豊橋PA下り線(旧豊橋本線料金所跡)にて、無料運用から夜間の1時間以上の利用を有料(中大型60円/5分)に切り替えたところ、予約・利用の大半が1時間以内になった、という効果もNEXCO各社は得ています。

このほかに、高速道路外も含めたSA・PAの数を増やす方針も打ち出されています。

駐車マス増強策のひとつ、大型車マスのV字レイアウト。山陽道の例(画像:NEXCO西日本)。