母とは違う存在感。
こんにちは、食文化研究家のスギアカツキです。『食は人生を幸せにする』をモットーに、「一生モノの能力を養う食育」についてさまざまな実践法を提案しています。
受験シーズン中のご家族のみなさま、おつかれさまです。体調やメンタルのコントロールをしながら、志望校合格に向けて最後のひとふんばりが重要な時期。受験に立ち向かう本人はもちろんのこと、応援する側も大変なご苦労だと思います。
私と兄はどちらも念願の東京大学に合格することができましたが、後に日々の食事の影響が非常に大きかったことに気がつきました。これまでは母のしていた工夫をエピソードとともに紹介してきましたが、今回は父についてご紹介できればと考えました。
◆母だけではない誰かに頼ることを大切に
最初に誤解ないようにお伝えしたいのですが、必ずしも父の存在が必要であるということではありません。
商社勤めだった父は仕事で忙しく、平日の帰宅時間はいつも深夜。海外出張やゴルフなどで自宅を留守にすることも多く、物理的にいつもそばにいるような存在ではありませんでした。
だからといって母だけに負担がかかるのもおかしな話で、必ずしも父でなくてもOK。祖父母や近所の友人など、誰かに力をもらえるという発想が健全ではないかと考えています。
しかし現実的には子どもの受験をサポートする上で、ママやパパどちらか一方の負担が大きいという家庭は少なくないでしょう。
仕事が忙しいパートナーに、自分と同じことを期待してしまうとうまくいかないことがありますから、成功ポイントは“自分とは違うサポート”をお願いすることにあります。
それでは我が父がどんな食事を考えてくれていたのか、話をはじめたいと思います。
◆父は“勉強のリフレッシュをサポートする存在”だった
受験をサポートする上で、母が大事にしていたスタンスは、「普通を貫くこと」でした。
親が動揺して特別な気分でいると、子どもに伝染してしまい、受験を意識しすぎてしまうと考えた母は、私や兄がおろおろしてしまわないように徹底したそうです。
父は私たちの勉強を近くでサポートするような時間がなかったため、母とは違う役割を考えたそうです。それは、勉強のリフレッシュをサポートする存在。
「いつもがんばってるから大丈夫だよ」という気持ちを、言葉ではなく食事で考えてくれました。
◆我が家にいつもあったのは「和菓子」
その一つが、「和菓子」。当時の私や兄は、和菓子が大好きで、おやつにどら焼きやカステラ、栗まんじゅうを食べるのが楽しみでした。
高級な羊羹(ようかん)や生菓子ではなく、食卓に置いてあって自分で取り分けられるような気軽なものが多かったように思います。
これらの和菓子は、父が休日の買い出し時に買ってきてくれたり、仕事帰りの手土産として渡してくれるものでした。
和菓子はやさしい甘さのものが多いおかげで、身体への負担も少なかったのでしょう、勉強の集中力を持続させることができました。
◆父の「特製握り寿司」が、何よりのごほうびごはんだった
そしてもう一つが、「父特製の握り寿司」でした。
子どもたちが毎日頑張っていることを理解してくれていた父は、過剰な激励をすることなく、ごほうびごはんとして寿司を握ってくれたのです。
父は寿司職人ではありませんが、私にとっては技術よりも愛情のほうが嬉しく、休日の夕方に機嫌よく準備をしてくれている姿が、自分の励みにもなりました。
育ち盛りだった私達は、食べる量も多く、食卓いっぱいに寿司が並んだことを覚えています。マグロ、イカ、タコ、ヒラメ、ウニ、エビをはじめ、私が好きなシャコ、塩辛軍艦も用意してくれました。
父は母以上に「頑張れ!」というプレッシャーを感じる言葉を発することなく、気晴らしにお菓子屋さんに連れていってくれたり、休日の食事を大切に考えてくれる存在でした。また、「ママの教育スタンスに賛成している」という母への信頼感も子どもながらに感じることがありました。
父と母について美化しすぎるつもりはありません。人並みにケンカやストレスがお互いにあったとは思いますが、深刻化させないスタンスを両者が持っていたことは、親になった私自身が学ばせてもらっています。
以上、少しでもヒントになることがあればうれしく思います。さあ、もう少しで受験シーズンも終わります。なるべく平常心を持って、おいしい食事を食べて元気に乗り切ってくださいね! 応援しています!
<文/食文化研究家 スギアカツキ>
【スギアカツキ】食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram:@sugiakatsuki/Twitter:@sugiakatsuki12
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