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貯蓄率1位の奈良は、家族でインドア志向

「年初来、日経平均株価が上昇し、バブル期以降の最高値を更新。その要因の一つと思われるのが、今年からスタートした新NISAへの関心の高さです。年金不信が根深いため、貯蓄熱が高まっているのではないでしょうか」(経済記者)

とはいえ、効率よく貯蓄できる人もいれば、貯めたいけど貯まらない人も多い。

「努力の差と見られがちですが、意外にも“県民性”に注目すると、その答えがわかるかもしれません。住んでいる土地によってお金に対する感覚も変わるものです」

こう語るのは『新・出身県でわかる人の性格』(草思社文庫)の著者である岩中祥史さんだ。

そこで総務省が5年に1度発表している全国家計構造調査(2019年実施、発表は2021年)を見ると、総世帯の年間年収と、年金生活となる65歳以上世帯の金融資産残高が、都道府県ごとにランキング化されている。

注目されるのが、奈良県。年収が全国25位と平均的なのに、金融資産残高は全国2位。本誌が独自で算出した、収入に対する貯蓄率(貯蓄額÷年収)では1位に輝いた(59ページ表参照)。

都道府県ごとの貯蓄率に着目し、気になる県の県民性を明らかにして、私たちの貯蓄に対する行動や姿勢について参考にしよう。

奈良県】(貯蓄率1位)

奈良県は通勤時間が5位と長く、女性の家事労働時間は1位で、学習塾費用も1位。お父さんがサラリーマンで、子供にはしっかり教育を与え、家庭は専業主婦が切り盛りしているという“昭和スタイル”の家庭像が見えてきます」

こう分析するのは、WEBサイト「都道府県別統計とランキングで見る県民性」(注釈のないランキングは、当サイトのランキングを使用)を運営する久保哲朗さんだ。

節約好きな主婦が家計を守っているためか、定価販売が主なコンビニ店舗数(10万人あたり)は全国最下位だ。

一方、ピアノ普及率や空気清浄機普及率1位に着目するのは、岩中さんだ。

「自宅でのんびり過ごす傾向があるのでは。大阪の食い倒れ、京都の着倒れに並び、奈良の寝倒れと言われています。“寝てばかりで身上を潰す”という意味で使われますが、実際のところ、心の余裕があって、あくせくしない県民性だと感じています。それが貯蓄率の高さにつながっているのでは」

私たちもインドアでのんびり過ごし、心の余裕を持つことが貯蓄につながるのでないだろうか。

兵庫県】(貯蓄率3位)

ディグラム・ケンミン調査では、52.1%が『カード払いが多い』と答え、全国平均を大きく上回り、また女性の48.2%が『ポイントカードのポイントはしっかり使うほうだ』と答えています」

とは、『47都道府県格差』(幻冬舎)の著書もある、リサーチプロデューサーでディグラム・ラボ代表の木原誠太郎さん。

カード払いによるポイ活にも力を入れているようすの兵庫県人は、一方で1世帯あたりに占める有価証券比率1位。資産運用や貯蓄にも関心が高いと言える。

ポイ活に励むことで資産を増やす意識を持ちたいものだ。

■商人気質もあり無駄遣いしないことが美徳の大阪人

大阪府】(貯蓄率5位)

年収34位にもかかわらず、貯蓄額は12位に躍進した大阪は、Jタウンネットが2019年に行った「ケチが多い都道府県といえば、どこ?」アンケートで、得票率31.5%で圧倒的1位だった。

「関西の主要都市であり、東京同様にお金を使う誘惑はありますが、商人気質もあり無駄遣いはしないことが美徳だと考えているのではないでしょうか」(木原さん)

徒歩・自転車通勤率1位というのも、ふだんから節約が当たり前になっているためだろう。

「一戸建ての平均階数は2.29階で全国1位。土地を無駄なく有効利用しています。

また大阪といえば、すぐに飴を人に配る“飴ちゃん文化”が有名ですが、じつはキャンディ消費量は34位。飴は買わず、もらった飴を右から左に回しているのかもしれませんね」(久保さん)

大阪人の節制ぶりを見習いたい。

和歌山県】(貯蓄率11位)

収入40位にもかかわらず、貯蓄23位と大健闘。

「衣服・靴購入費に関しても和歌山は39位。なかでも女性用洋服購入費は42位と下位。一方、女性の家事労働時間が3位と長い。節約上手の専業主婦の存在が見えてきます」(久保さん)

統計を見ると、飲酒費用、ラーメン外食費用、スナック菓子消費費用、スポーツ用品購入額、文房具購入額など47位であるため、“倹約”精神が根付いている。

私たちも和歌山県民を見習い、主婦感覚で節約をし、外食やスナック菓子などでお金を浪費しないようにしたい。

富山県】(貯蓄率16位)

年収4位と、かなり上位に位置する富山県

「古くから工業が盛んで製造業が多く、安定した収入が得られるうえ、共働き率が4位と高い。そのため、年収1千万円を超える世帯も多い(5位)です。しかも持ち家率が1位と高く、持ち家住宅延べ面積も1位。先々の不安が少ない分、自由にお金を使うこともできるのでしょう」(久保さん)

それが年収は高いが、貯蓄額は10位とやや後退している理由か。

貯蓄をあまり意識しなくてもすむのなら、それに越したことはないが、しかし……。

群馬県】(貯蓄率21位)

年収・貯蓄額が21位。稼ぎ方も使い方もごくごく平均的。

「日帰り旅行人口3位、サイクリング人口4位、スキー・スノボ人口5位とアクティブな県民性」(久保さん)

■公営ギャンブルなどの誘惑もあるが、物価の安さが家計を助ける。

「群馬は幹線道路が発達しており、ロードサイド文化が根付いています。大型スーパーや量販店も多いので価格競争が起き、全国的にも物価が安いのです」(木原さん)

趣味も楽しみつつ、日々の買い物を節約することも大事だ。

山形県】(貯蓄率43位)

収入13位だが、貯蓄額37位と20ランク以上の差がある浪費県。

「“おしん”に代表される勤勉・我慢強さだけが山形県かというと、そうではありません。

日本海に面する酒田を中心とする地方は、江戸時代から交通の要衝として発展し、派手で見栄っ張りな側面も。山形県は結婚式も派手で“娘3人持つと家が潰れる”といわれる県民性です」(岩中さん)

たしかに結婚披露宴の費用は全国平均303万円のところ、山形県は405万円で2位だ。

娘さんの一生に一度の機会にお金を使うのは、人情としてはわからなくもないが……。

沖縄県】(貯蓄率46位)

年収、貯蓄額ともに最下位で、貯蓄率は46位。

「『NHK全国県民意識調査』では“働くことはつらいこと”と思っている人の割合が全国1位だったことも。亜熱帯という温暖な気候も関係しているのでは」(岩中さん)

人口10万人あたりの雀荘数、20歳以上の人口10万人あたりのキャバクラ数が1位というのも納得。

「ユイマールという地域共同体内相互扶助システムが機能しており、たとえば乳飲み子を抱えて離婚しても地域が支えとなってくれる(デキ婚率1位)。社会へのストレス、将来への不安を感じにくい社会構造になっているのでしょう」(岩中さん)

だからこそ「第5回地域版SDGs調査2023」の調査では、幸福度が1位なのだろう。

人生、お金だけじゃないということも考えさせられる。

青森県】(貯蓄率47位)

青森の西半分、津軽地方に代表される“じょっぱり”という気質も有名だ。

「強情っぱりで意地っ張り、頑固で一途で辛抱強い。一方、強情っぱりな分、夫婦間にヒビが入ると取り返しがつかなくなることもあるためか、離婚率は東北6県でも上位です」(岩中さん)

全国的にも、夫婦100組あたりの離婚件数は13位。それもあってか、父子・母子家庭数は全国9位。なかなか貯蓄をする余裕がないのかもしれない。

夫婦円満でいることが貯蓄の秘訣といえそうだ。

これら県民性を理解し、他県のいい部分を学んで貯蓄に生かそう!