現実味を帯びてきた上野東京ライン川口駅停車。これが起爆剤となり、駅の全面改良や周辺まちづくりが進みそうです。

新ホームの建設を契機に駅と周辺エリアを再整備

埼玉県川口市JR東日本に対して要望を続けていた「中距離電車の川口駅停車」が現実味を帯びてきました。新たなホームの整備に合わせ、駅の改良や、駅周辺まちづくりも進む見通しです。どのように変わるのでしょうか。

現在、川口駅に停車するのは京浜東北線のみです。1路線しか乗り入れない駅としては、県内で最多の乗車人員となっています。コロナ禍で直近の駅利用者は減少していますが、川口駅が位置する市の中央地域では、2035年まで人口増加が見込まれています。

市は2024年2月8日に「川口駅再整備基本計画(案)」を公表。京浜東北線ホームの西側に新たなホームを設け、上野東京ラインを停車させる方針を明記しました。概算事業費は389~420億円と巨額ですが、ホーム増設に関係する経費は市が全額負担するとしています。

計画が実現すれば、東京方面への所要時間が短縮されるほか、将来的には羽田空港アクセス線「東山手ルート」経由で羽田空港へも乗り換え無しでアクセスできるようになります。

基本計画案で注目されるのは、新ホームの整備を契機に駅全体を再整備し、駅周辺まちづくりも推進していく方針が盛り込まれていることです。市は単にホームを新設するだけでなく、駅改良や周辺開発をあわせて行い、「選ばれる街」を実現したい考えです。

駅周辺では複数のプロジェクトが計画中

現在の駅舎の大部分は1960年代に建築されており、抜本的な改良が必要な時期に差し掛かっています。新ホームの整備にあわせ、コンコースが建て替えられるほか、店舗棟(駅ビル)などを新設することも想定されています。

駅周辺まちづくりをめぐっては、2023年3月に駅東口の川口栄町3丁目銀座地区で大規模な再開発ビルが竣工。同年12月には、市と三井不動産・三井不動産レジデンシャルの間で「川口駅周辺まちづくりに関する連携協定」が締結されています。

基本計画案では、2021年に閉店した東口の旧そごうビルを活用して集客拠点を整備するほか、西口にある「川口西公園」の再整備、総合文化センター「リリア」の大規模改修、「リリア」隣接地での美術館建設などを推進していくとしています。駅周辺ではこのほか、「栄町3-1地区」や「栄町3-11地区」といった有効活用されていない公有地もあり、今後再開発が検討されるとみられます。

市は川口駅への上野東京ライン停車に合わせ、駅からのバスネットワークも更に充実させ、幅広い地区に効果を波及させるとしています。上野東京ラインの停車後は駅勢圏が広がり、乗降者数が増えることが見込まれます。

新ホームが供用を開始し、上野東京ラインが停車するのは、市とJR東日本が基本協定を締結してから約12年後となる予定。実現は当分先になりますが、駅周辺では「千載一遇のチャンス」を活かすべくまちづくりが進みそうです。

上野東京ラインの車両(画像:写真AC)。