取引先から入金がない……期限内に振り込みがないと、どのように対応すべきか迷われると思います。長年関係のある取引先だとなおさら対応に悩みますよね。何度も催促していいものか、はたまた弁護士に相談したほうがいいのか。そこで、実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、代金未入金時の対応について、熊本健人弁護士に解説していただきました。

「確認します」の一点張り……今後はどう対応すべき?

相談者の法人相談さんは、求人広告代理店をしています。とある会社から「1月末締め3月末払い」で申込書をもらい、広告の掲載をしていました。

しかし期限までに支払いがなく、なんと4月初旬に入っても入金されません。値引きまでしているのに入金がない……相談者は対応に困っていました。

そこで相談者は電話で3回、メールで2回催促をしてみることに。度重なる催促にも関わらず、「確認します」の一点張りです。

状況が変わらないため、4月にはメールで「未入金の場合、第三者機関へ相談します」と伝えました。

そこで、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の3点について相談しました。

(1)催促状や督促状を内容証明郵便で送る等、今後はどのように対応すべきでしょうか。

(2)遅延損害金・延滞利息・手数料も請求できるのでしょうか。

(3)遅延損害金を請求できる場合、相場はいくらになるのでしょうか。

弁護士に依頼するメリット

再三にわたる電話やメールに対し返答がない場合、何か手を打たなければ事態は進展しない可能性が高いです。

まず考えられることは、弁護士に依頼し、弁護士を通じて支払請求を行ってもらうことです。この請求は、請求を行ったことの証拠を残すために、内容証明郵便の方法で書面を送付することが一般的です。弁護士の名前で書面が送付されてくると、事の重大性を認識し、素直に支払に応じてくることもよくあります。

仮に、どうしてもすぐに一括での支払が難しいと言われた場合は、分割払いを前提とした交渉を行うこともあります。分割払いの場合は、途中で支払が滞ってしまうリスクがありますので、長期の分割になる場合は、公正証書を締結する方法で合意することもあります。

公正証書とは、公証人がその権限に基づいて作成する公文書のことをいい、この証書で合意をすれば、仮に合意内容への違反が生じても、訴訟提起を行わなくても、直ちに強制執行により、相手の財産を差押えることが可能になります。

弁護士が代理人として間に入ることによって、事態が進展する可能性は高まりますので、回収が難しそうな場合は、早めに弁護士に相談してみることをおすすめします。

相手から返答がないときはどうすべき?

弁護士の名前で支払請求の書面を送っても返答がない場合もあります。この場合は、訴訟提起を行うなど、法的措置を講ずることを検討する必要があります。

管轄の裁判所に対して訴訟を提起すると、裁判所から相手に対して訴状等の書類が送られます。書類を受け取った相手がこれを無視して裁判所に出頭しない場合は、請求者が主張する事実を自白したものとみなされ、勝訴判決が出ることになります。勝訴判決を得ても相手が任意に支払を行わない場合がありますが、この場合は強制執行により、相手の財産を差押えて回収を図ることになります。

このような訴訟提起の方法のほかにも、支払督促を申し立てるという方法もあります。この手続では、相手から異議がでなければ判決と同様の法的効力が生じ、書類だけの簡易な手続で行われるため、裁判所に出向いたり、証拠を提出したりする必要もありませんので、弁護士費用が懸念される場合は、弁護士に依頼せずこの手続を利用するのも選択肢の1つです。

また、相手が期限までに支払を行わないということは、何らかの理由で資金繰りに窮している可能性もありますので、事前に相手の財産を仮差押えするなど、民事保全手続等を検討する必要もあります。破産されてしまうと回収が困難になる可能性もありますので、回収が難航した場合は、早めに弁護士に相談する必要があります。

延滞金の請求はできる?

期限までに支払がなされない場合は、元金に対して遅延損害金(延滞金)を請求することができます。契約書などでその利率について定めている場合は、これに従って延滞金の額を計算します。契約書などで規定している場合は、年14.6%の利率が定められているのを多く見かけます。

なお、事業者と消費者の間で締結された金銭消費貸借以外の契約において、遅延損害金の利率を定める場合、その上限は14.6%とされており、これを超える部分は無効となります(消費者契約法9条2号)。

仮に、契約書などには特に定めがない場合でも、遅延損害金(延滞金)を請求することは可能です。その場合は、民法所定の利率である年3%で遅延損害金を計算することになります。2020年に民法が改正される以前は、一般の取引に対しては年5%の民事法定利率が適用され、商行為によって生じた債務には年6%の商事法定利率が別途適用されていましたが、民法改正の際に商事法定利率の規定は削除され、法定利率は一律に年3%となりました。

なお、遅延損害金は、「延滞利息」や「手数料」と言ったりもしますが、遅延した場合に生じるものはすべて同じものを意味しています。他方で、「利息」というのは、通常は金銭を借りてから返すまでの間に発生するものを意味し、返済遅延の有無にかかわらず発生するものです。  

熊本 健人

弁護士

(※写真はイメージです/PIXTA)