圧倒的な成果を上げるために、本当に注力すべき重要指標(KPI)とは何か?本連載は、ロングセラーのマーケティング入門書『ドリルを売るには穴を売れ』の著者が、“顧客に刺さる”マーケティング戦略のつくり方と追うべきKPIについて徹底的に掘り下げた『顧客の「買いたい」をつくる KPIマーケティング』(佐藤義典著/朝日新聞出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。
第4回は、洗濯用の「ウタマロ石けん」が、ターゲットとする顧客に商品の強みを伝えるためにとったユニークなマーケテイング戦略について解説する。
<連載ラインアップ>
■第1回 「ドリルを売るには穴を売れ」マーケティングの大家・レビットの真意とは?
■第2回 ハーゲンダッツを売るには、何を「強み」として、どう伝えればよいか?
■第3回 10年間で販売個数が約6倍、「ウタマロ石けん」の独自のマーケテイング戦略
■第4回 製品の「強み」を顧客に伝え切る、ウタマロ石けんの戦略の「急所」とは?(本稿)
■第5回 「売上を増やせ!」と叫ばなくても、必然的に売上がアップする方法とは?
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前回、ウタマロ石けんの「子どもの靴下の泥汚れがよく落ちる」という「強み」をお客様に伝え切るには、実際に使っていただくことが極めて有効だった、ということを見てきました。
逆に言えば、使ってみなければその「強み」がわからない、ということでもあったのです。
ここで、下の図をご覧ください。
この図の中で、ウタマロ石けんの課題となっていたのは、中央部の「子どもの靴下の泥汚れが落ちることを伝え切る」ことです。
それを「お客様に実際に試していただく」という方法で実行しました。ただ、その「試していただく」ことの難しさは、顧客ターゲットに確実に届けるところにあります。顧客ターゲットでない方にサンプルを渡しても意味がありません。
顧客ターゲットは、「子どもの靴下の泥汚れに悩む親」です。大型ターミナル駅の駅前で無作為にサンプルを配布しても、顧客ターゲットに届く確率は相当に低いはずです。この「顧客ターゲットに確実に届ける」ことが「真の課題」だったと言って良いかもしれません。
■戦略の「急所」:サッカーイベントでサンプル配布
そこで、ウタマロ石けんが「顧客ターゲットに確実に届ける」ために取った施策が・・・、
『11月中旬、広島市で開かれた親子向けサッカーイベント。泥んこになって遊ぶ子どもたちの傍ら、緑色の固形せっけんが母親の視線を集めた。せっけんの名は「ウタマロ石けん」。会場の一角で、エプロン姿の男性がごしごしと部分洗いを実演。「しつこい泥汚れがこんなに簡単に落ちるなんて」。驚いた表情の30代の主婦は、エプロン姿の男性から手渡しされたサンプル品を持ち帰った』(2018/11/23、日経MJ、1ページ)
ウタマロ石けんのサンプルを『親子向けのサッカーイベント』で配るわけですね。
なぜ「親子向けサッカーイベント」かというと、そこに顧客ターゲット、すなわち「子どもの靴下の泥汚れに悩む親」がいるからです。
サッカーは「子どもの靴下の泥汚れ」度合いが極めて高いスポーツですから、そこにいる親はほぼ間違いなく「子どもの靴下の泥汚れに悩む」人です。
「親子向け」ですから、当然親がいます。例えば、父親と子どもがサッカーをしている間、手持ち無沙汰になっている母親にウタマロ石けんで泥汚れが落ちる「実演」をすると、その汚れ落とし力に驚くわけです。
そのタイミングでサンプルを配布し、家でお使いいただければ、子どもの靴下の泥汚れが落ちることを実感していただけます。
そして、ウタマロ石けんはスーパーやドラッグストアで売っていますから、お客様は次はそこに買いに行きます。そして、ここまでの、
顧客ターゲットである「子どもの靴下の泥汚れに悩む親」に、 その顧客ターゲットがいる「親子向けサッカーイベント」で実演して汚れ落ちを実際に見ていただき、 サンプルを配布して実際に使っていただくという一連の施策が、ウタマロ石けんの「買いたいを作る行動」となっていることがわかります。
これが、ウタマロ石けんの戦略の「急所」となっているのです。
ここでいう「急所」はお客様の心の中にあるボタンのようなものです。そのボタンを押すと、お客様の「買いたいランプ」が点灯します。そして、「あなたから買うよ! むしろぜひ買わせて!」と言ってくれるようになります。
つまり、
戦略の「急所」=お客様の「あなたから買いたい」が一気に高まる点=お客様の「あなたから買いたいボタン」です。
ウタマロ石けんの「急所」は、お客様にウタマロ石けんを実際に使って試していただき、その洗浄力を実感していただくことなんです。一言で言えば「試せばわかる」です。
逆に、ウタマロ石けんは使っていただかないと効果がわかりにくい(=「買いたい」が作れない)商品ということでもあります。
CMなどで効果を連呼しても、お客様が「強み」を実感しにくいのです。試していただく以外の打ち手が少ないのです。だからこそ、「買いたい」を作るにあたって、「顧客ターゲットに試していただく」ことが必須となります。
この「顧客ターゲットに試していただく」ことが、「必須ではあるが、実行が難しい」という意味で、自社から見ると「戦略上の最重要課題(の1つ)」となっていました。
その課題を解消したのが、「親子向けサッカーイベントでサンプルを配付する」という「行動」です。これがまさに「戦略の急所」でした。
ウタマロ石けんを「買って買って買って」とお願いするのではなく、「試せばわかる」という「急所」に刺すことでお客様が「買いたい」と思うからこそ、売上が10年で6倍になったんですね。
なお、この戦略の「急所」は、戦略によって、そして商品・サービスによって変わります。「試せばわかる」のが「急所」になるのは、あくまでウタマロ石けんの戦略・状況だからこそです。
<連載ラインアップ>
■第1回 「ドリルを売るには穴を売れ」マーケティングの大家・レビットの真意とは?
■第2回 ハーゲンダッツを売るには、何を「強み」として、どう伝えればよいか?
■第3回 10年間で販売個数が約6倍、「ウタマロ石けん」の独自のマーケテイング戦略
■第4回 製品の「強み」を顧客に伝え切る、ウタマロ石けんの戦略の「急所」とは?(本稿)
■第5回 「売上を増やせ!」と叫ばなくても、必然的に売上がアップする方法とは?
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