2023年上半期、転職入職率は5.5%。100人が働く会社であれば、5人が転職者として入社してくる、というもの。いまや転職は珍しいことではありません。しかし転職初日の手続きでつまづくケースは多いのだとか。みていきましょう。

転職入職率5.5%、転職理由トップは「労働条件」

厚生労働省令和5年上半期雇用動向調査結果』によると、2023年上半期の入職者数は 500万9,100人、離職者数は451万人。そのうち「転職入職者数」は285万2,500人で「転職入職率」は5.5%、 「未就業入職者数」は2,15万6,600人で「未就業入職率」は4.2%。つまり100人が働く企業では、そのうち5人が転職してきた人たち、という水準です。ちなみに未就業入職者のうち新規学卒者は 123万6,600人で、高卒者は44万6,700人、大卒・大学院卒は55万0,300人でした。

厚生労働省令和2年転職者実態調査』によると、転職理由のトップは「(賃金以外の)労働条件が良くなかった」で3割弱。そのほか「仕事内容」や「賃金」、「会社の行く末」「人間関係」が転職へと走らせる主な理由になっているようです。

一方で転職先の決め手として最も多いのが「仕事の内容・職種に満足がいくから」で18.8%。そのほか「キャリアを活かせるかどうか」「労働条件」「会社の立地」「賃金」が、最終的に転職先を決める基準といえるようです。

【「転職理由」上位5】

1位「(賃金以外の)労働条件が良くなかった」28.2%

2位「満足いく仕事内容でなかった」26.0%

3位「賃金が低かった」23.8%

4位「会社の将来に不安を感じたから」23.3%

5位「人間関係がうまくいかなかったから」23.0%

その他主な理由…「他によい仕事があったから」16.1%、「いろいろな会社で経験を積みたかったから」15.9%、「能力・実績が正当に評価されないから」15.3%、「結婚・出産・育児」6.2%、「介護・看護」2.7%

【「入職理由」上位5】

1位「仕事の内容・職種に満足がいくから」18.8%

2位「自分の技能・能力が活かせるから」18.3%

3位「(賃金以外の)労働条件がよいから13.5%

4位「転勤が少ない、通勤が便利だから9.3%

5位「賃金が高いから」7.0%

その他主な理由…「「地元だから(Uターンを含む)」6.0%、「会社に将来性があるから」4.4%、「会社の規模・知名度」2.3%

転職は給与アップのための正攻法ではありますが、給与を理由に転職した人は4人に1人程度。ちなみに転職で給与アップを実現した人の割合は38.6%で、給与減となったのは33.2%。転職による「増加-減少」のポイント数を年齢別にみていくと、最もポイントが高いのは20代前半で34.7ポイント。年齢と共に下がっていき、30代後半では9.4ポイントまで低下。しかし40代前半では17.8ポイントと再び上昇します。

40代前半といえば、マネジメント力が評価され、組織においても欠かせない存在になる人も多くなるころ。これまでの実績をひっさげて、栄転を実現する人も多くなるのでしょう。

40代前半・正社員の平均給与は月収で37.9万円。年収で616.2万円。そして転職で1割以上も給与が増えた人は29.8%。平均的な給与の場合、1割増だと、月収は41.7万円、677.8万円に。これだけ給与が増えれば「転職も成功!」といえるでしょうか。

転職初日のつまづき…「年金手帳の提出」を求められたが、どこにあるか分からず

40代、これまでのキャリアを引っ提げて初めての転職。しかし、新天地で早々につまづいてしまう人が多いといいます。そのきっかけになるのが転職時の手続き。退職日の翌日に転職先へ入社する場合、多くの転職先で「①マイナンバー」「②雇用保険被保険者証」「③源泉徴収票」「④基礎年金番号のわかるもの」「⑤扶養控除等(異動)申告書」「⑥健康保険被扶養者(異動)届」「⑦給与振込先届出書」の提出を求められます。このなかで「えっ⁉」となりがちなのが「④基礎年金番号のわかるもの」です。

基礎年金番号は健康保険や厚生年金の手続きの際に必要になるもの。多くの企業で

――年金手帳をもってきてください

と言われることが多いでしょう。年金をもらうなんて当分先の話だから、年金手帳がどこにあるのか……そもそも、年金手帳という存在をいわれて初めて認識する人もいるかもしれません。転職先では順調な滑り出しを切りたいところですが、「すみません、年金手帳、無くしたみたいで……」と平謝り。いきなりつまづいてしまうケースが多いのです。

もしどんなに探しても見つからない場合、最近は「基礎年金番号が分かれば結構です」とか、「マイナンバーでも結構です」という会社も多いようです。その場合は年金手帳がなくても大丈夫。

「基礎年金番号が分かればいい」という場合、「ねんきんネット」にアクセスしたことがある人であれば、そこで基礎年金番号を確認することができます。また住所地の役所の国民年金課や年金事務所などで教えてもらう方法も。本人確認できるものを持参すれば、調べてもらうことができます。

このように、最近は年金手帳がなくてもなんとかなるので慌てる必要はありません。しかし「やはり手帳を手元に持っておきたい……」という人もいるでしょう。しかし2022年4月に年金手帳は廃止となり、再発行をしてもらうことはできなくなりました。代わりに「基礎年金番号通知書」が発行されるようになったので、きちんと保管しておきましょう。

また年金手帳は廃止になったとはいえ、そこに記載されている「基礎年金番号」は年金の手続きの際に必要になるもの。今後「マイナンバーカードがあれば大丈夫」ということになりそうですが、新規発行が廃止となった年金手帳、引き続ききちんと保管しておいたほうが何かと安心です。

[参考資料]

厚生労働省『令和5年上半期雇用動向調査結果』

厚生労働省『令和2年転職者実態調査』

厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』

日本年金機構『基礎年金番号・基礎年金番号通知書・年金手帳について』