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震災で使えなくなったマイナ保険証(写真:時事通信

《まったく使っていない》
《機械がないと、保険者番号もわからない。紙くず以下》

被災地からはこんな声が。能登半島地震によって、災害時に通信インフラが止まってしまうと、まったく使えないことが露呈した“マイナンバーカード”(以下、マイナカード)。

にもかかわらず、河野太郎デジタル大臣(61)は1月23日、〈災害時にはマイナカードを財布に入れて一緒に避難してほしい〉と会見で述べ、批判が高まっている。

「河野大臣は、マイナカードと一体となった“マイナ保険証”があれば、薬の処方歴などが確認でき、災害時の医療に役立つことをアピールしたかったのでしょう。

しかし被災地では、携帯の基地局も被災したため、マイナ保険証による資格確認だけでなく、スマホから自身の個人情報を確認できるマイナポータルにすらアクセスできなかったと聞いています」

そう明かすのは、マイナ関連のトラブルを調査している、全国保険医団体連合会(以下、保団連)の事務局次長・本並省吾さんだ。

被災地では、保険証がなくても、被保険者が加盟する保険組合が医療機関に対し、既往歴等の情報を提供することで対応している。

さらに本並さんは、「河野大臣の今回の呼びかけが、“二次災害”を引き起こす可能性もある」と、こう危機感を示す。

「実際に、倒壊しかかった家に貴重品を取りに帰った際に、自宅が崩壊して危うく命を落としかけた高齢者もいたと聞いています。河野大臣の発言は、“平時”の発想としか思えません」

■体調不良で顔認証が使えない

オンラインで各種行政手続きなどもでき、“便利なはず”だったマイナカード。しかし、〈本人とは異なる人物とひも付けされていた〉など、トラブル続きだった。

これを受けて岸田文雄首相(66)は昨年6月、システムの総点検を指示。昨年12月に〈総点検は終わった〉として、2024年12月には現行の保険証を廃止し、マイナカードと一体化した“マイナ保険証”へ移行すると決定した。

にもかかわらず、マイナ保険証の利用率は8カ月連続で低下。2023 年12月段階で、わずか4.29%にとどまっているのだ。

「医療現場では、点検が終わった今でも相変わらずトラブルが続いています。すでにマイナ保険証を取得している患者さんでさえ、〈こんなにエラーが出るなら既存の保険証のほうがいい〉と言って使用していない人も少なくないようです」(本並さん)

保団連が全国の医療機関を対象に行った直近の調査では、表のようなトラブルが現在でも多発しているという。

「保険に加入しているのに該当番号がなく“無保険”にされたり、1割負担の方が3割負担で登録されていて、後から返金に追われるケースもあります。そもそも、体調不良のときは人相も変わることもあり、顔認証が通らないケースもいまだあります」(本並さん)

医療現場では、こうしたトラブルが生じた場合、すぐ確認できるよう「既存の保険証も持参してください」と、併用を呼びかけてきた。これに対し河野大臣は昨年12月、〈医療機関に紙の保険証を持ってこいと言われたら、国に連絡してほしい〉と“通報”を促したのだ。

「既存の保険証があれば、その場で確認して、すぐ診療につなげられます。しかし既存の保険証が廃止されると、事務スタッフはエラーが出るたび保険組合などに照会を取らねばならず、現場は大混乱に。一刻を争う病気だった場合、健康被害が生じたり、命を落とす危険性だってあるのです」(保団連会長・竹田智雄さん)