SNSで発表された作品は、直接コメントをつけたり、ほかの読者の感想が読めるのもポイントの1つ。そうした文化をさらに押し進め、「電子書籍で読者のコメントまでまとめる」試みを行ったのが、津夏なつな(@tunatu727)さんの「4コマ1000本ノックベストセレクション~みんなのコメント付き~」だ。

【4コマ漫画】津夏なつなさんの作品を読む

津夏さんは「4コマ1000本ノック」と称して、Xやブログで毎日4コマ作品を投稿し、たびたび注目を集めるクリエイター。発表した作品はAmazon Kindleで無料電子書籍としてまとめて公開してきたが、2023年12月にはこれまでの作品から反響の多かったものをピックアップしたベスト版の電子書籍を制作。

作品に寄せられたコメントや、リプライ・いいねの数を4コマと同じページに掲載しており、いわゆる「バズった際の反響」までもを切り取る形で楽しめるようになっている。ありそうでなかったSNSの強みを活用したアイデアや制作上の狙いについて、津夏なつなさんに話を訊いた。

■「SNS漫画ならではのにぎやかさも一緒に」読者との関係性から生まれた電子書籍

――電子書籍にSNSでの反響を盛り込むというアイデアがユニークです。こうした形式で電子書籍を作ったきっかけを教えてください。

【津夏なつな】SNSに投稿している4コマ漫画は昨年からKindleにてまとめ始めたのですが、それを自分で読んでみたときに、なんだか少し物足りないなぁと感じたことがきっかけです。

私の4コマは基本的に「ツッコミ役」が存在せず、読んでくれた人が思わずツッコみたくなる、コメントを投稿したくなるような漫画になるように意識しています。ですので、4コマ集としてコミックにまとめると、読者の皆さんからの的確なツッコミやにぎやかなコメントがないせいで、少しさびしさを感じてしまいました。このSNS漫画ならではのにぎやかさも一緒にまとめて読んでもらいたくて、何とか皆さんのおもしろいコメントも一緒に載せられないか、何かいい方法はないかと、実はかなり前から考えていました。

――ご自身が読者の立場で見たときの物足りなさがヒントになったんですね。実際に制作して気づいたことはありますか?

【津夏なつな】一つひとつコメントを抽出してまとめる作業のため、とても手間がかかってしまいます。もっとたくさん作りたいのですが、本業の仕事と毎日の漫画作成に追われ、ひとりではなかなか手が回らない状況なのが今の悩みです。誰かやってくれる人いませんか(笑)。

――作品・コメントをともに選ぶ中で感じたことや、選出で意識したポイントがあれば教えてください。

【津夏なつな】同じようなコメントばかりではなく、なるべくいろんな意見が載るように意識しました。特におもしろかったコメントは少し文字を大きくして強調したり、綺麗に締まるようなコメントを一番最後に持ってきたり。まだまだ試験的な段階ですので、楽しくなる工夫をもっと学んでいければと思います。

――収録作品のなかでも、この作品はコメントがついて特におもしろくなった、見方が変わったという作品はありますか?

【津夏なつな】「心の中のジョイマン」という作品で、皆さんがコメントでオリジナルのジョイマンラップを披露していたのがおもしろかったです。「なんだこいつら~!」って思いました(笑)。

――読者の声が作者だけでなくほかの読者にも見える、というのはSNSならではのポイントだとあらためて感じました。読者からのコメントについての思いがあればお聞かせください。

【津夏なつな】たくさんの読者と一緒に楽しみながら読めるのが、SNS漫画の醍醐味だと思っています。ほかの人はどう感じたのか、どんなことに気づいたのか、どんなツッコミをするのか、さまざまな意見とともに読むことができるのは、これまでになかった新しい漫画の形だと感じます。

私自身の作品につくコメントについては、欲しいツッコミをもらえたときは「しめしめ」と思いますし、自分では予想しなかった感想をもらえると、こう感じる人がいるんだなと勉強にもなります。さまざまな意見を見るのが楽しいので、それぞれ感じたことを好き勝手に書いてもらいたいと思ってます!ですが、批判や中傷は傷つくのでほどほどにお願いしたいです(笑)。

取材協力:津夏なつな(@tunatu727)

「バズった4コマ」の反響をそのまま電子書籍化!?WEB4コマ作家のアイデアが新しい/津夏なつな(@tunatu727)