Netflix映画『パレード』(2月29日より世界独占配信)の完成披露試写会が2月14日にユーロライブで行われ、藤井道人監督が出席。主演の長澤まさみをはじめ、坂口健太郎横浜流星リリー・フランキーら豪華俳優陣が顔を揃えた撮影現場の秘話を明かした。

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『余命10年』(22)や『最後まで行く』(23)の藤井監督が手掛ける本作は、旅立ってしまった人の目線で、遺された人への想いを描く壮大な愛の物語。瓦礫が打ちあげられた海辺で目を覚ました美奈子(長澤)が、離れ離れになった息子を捜す道中でアキラ(坂口)や元ヤクザの勝利(横浜)、元映画プロデューサーのマイケル(リリー)らと出会い、息子の手がかりを探し求めながら、その過程で各々の心に触れていく様子を映しだす。

もともとは『新聞記者』(19)や『ヤクザと家族 The Family』(21)、『ヴィレッジ』(23)、『月』(23)などで知られるスターサンズの故・河村光庸が2020年ころから企画開発していた作品だが、2022年6月に河村が急逝。一時は企画自体を終了させる案も出たものの、一念発起した藤井監督が企画を再構築して新たな形に生まれ変わらせた。あらゆる作品で河村とタッグを組んできた藤井監督は、「河村さんとつくってきた作品を、しっかり完成させたいという思いがあった」と本作に込めた想いを明かした。

豪華キャストが顔を揃えたことでも話題だ。「河村さんが『MOTHER マザー』という映画で長澤さんとご一緒していた」と切りだした藤井監督は、「僕は長澤さんの中学校の一個上の先輩で。中野に引っ越してきた彼女が、中学の時に知っていた。いつか長澤さんと映画の仕事ができたらなと思っていたところ、河村さんがどうしてもやらせたいんだと言っていた」と長澤とは以前から縁があったそうで、続けて「スターサンズの作品に縁のある俳優たちが、『自分たちも出たい』と一人、一人と増えていって、このようなキャスティングになった」と経緯を語った。

実力派たちが集まった現場について、藤井監督は「リリーさんがみんなをまとめてくれて。すごく寒いロケだったんですが、(寺島)しのぶさんが『寒いね!』と一番最初に声をあげてくれたりと、お母さんのような存在だった。坂口くんは、ひょうひょうとして、辛い時にも場を盛りあげてくれる」とムードメーカーばかりだったと回想。さらに「長澤さんは作品を背負ってくれる方。自分はずっと『映画が失敗したら自分の責任だ』と思って生きてきたけれど、長澤さんは『主演として、私も同じようにそれを背負っています』と考えてくださっている。人間として本当に尊敬する俳優」と長澤への並々ならぬ信頼感を吐露していた。

また河村が亡くなってから「彼の死後2日くらいで熱海に行って」と個人合宿を行なって脚本を書いたという藤井監督だが、「ひどく落ち込んでしまった」こともあるという。そこで支えてくれたのが横浜で「東京から姿を消した時に、(横浜が)ついてきちゃって。『大丈夫か。一人になるとよくないから』と言って、僕が脚本を書いている横にずっといた。一番最初に初稿を読んでもらったのは、俳優としては流星」と寄り添ってくれた横浜にも感謝しきりだった。

劇中では、旅立ってしまった人たちが愛を与え合い、支え合い、やさしさを持ち寄る姿が描かれている。藤井監督は「喪失というのは、誰にとってもあるもの。大事な人を失って、そんな人たちが生きている世界は辛いものもなく、幸せに生きていてくれたらいいなと。そのように僕は信じたい」とコメント。「『もっと前に進まないといけないな』と思いながらも、長くこの世界で映画をつくっていけるかはわからないですが、もっと自由でいいんだなと思ってつくりました。守りに入らず、自分が好きな人のために、自分が好きなものをつくることができたらいいなと思って、自由にやらせていただいた」と熱を込めていた。

取材・文/成田おり枝

藤井道人監督が、新作『パレード』に豪華俳優陣が集結した経緯を明かした