一般社団法人 日本損害保険協会(会長:新納 啓介)は、2月15日(木)の理事会において、各損害保険会社から拠出される自動車損害賠償責任保険の運用益を活用し、新規8事業を含めた41事業に対する総額17億5,980万円の支援を決定しました。

当協会では、1971(昭和46)年から、同運用益を活用して自動車事故防止対策事業や自動車事故被害者対策事業などの多様な分野に対する支援を行っています。

2024年度は、事故当事者や家族等への支援につながるよう、自動車事故被害者対策を中心に取り組むとともに、昨今の交通環境の変化を踏まえて、自動車事故防止対策にもより一層注力することを基本方針としています。事業の詳細は、添付しております別紙「自賠責運用益拠出事業一覧」をご参照ください。( https://www.atpress.ne.jp/releases/384646/att_384646_1.pdf )

なお、自動車事故防止対策においては、自動車事故の防止に貢献する様々な取組みに関して幅広く情報を収集するため、2019年度から公募制を導入し、より社会的ニーズに即した事業・研究に拠出するように努めています。

※自動車事故防止対策事業の公募については、当協会ホームページをご参照ください。

(2025年度の公募は、2024年4月頃にご案内予定です)

URL: https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/reduction/jibai-info/

交通事故等で亡くなったメッセンジャーが展示される 「生命(いのち)のメッセージ展」

交通事故等で亡くなったメッセンジャーが展示される 「生命(いのち)のメッセージ展」

1. 2024年度「自賠責運用益拠出事業」概要

(1)自動車事故防止対策

交通事故防止のための啓発・教育

交通事故防止機器の寄贈

交通事故防止に関する研究

(2)救急医療体制の整備

救命救急医療機器・機材の購入費補助

救急医師・救急看護師の育成

ドクターヘリ事業の推進

(3)自動車事故被害者対策

交通事故相談等への支援

交通遺児への支援、被害者・家族等の心のケア

講習会の支援、研究支援

(4)後遺障害認定対策

公募による医療研究助成

(5)医療費支払適正化対策

医療費支払適正化の取組み

2. 2024年度に支援する新規事業・研究の紹介

(1)自動車事故防止対策

ア. オンラインを活用した全世代向け交通安全教育の拡充(事業主体:一般財団法人 日本交通安全教育普及協会)

・学校向けプラットフォームである「交通安全オンライン教室」を発展させた「交通安全オンライン講習」を開設し、更にユーザーからの意見等を取り入れ、コンテンツの強化を図ります。また、本プラットフォームを活用した指導者を増やすため、マニュアルの作成・配布、講師派遣、研修実施を通じて指導者育成を図ります。

イ. 「健康と交通安全を考える高齢者ドライバーズ・クリニック(高齢者のための安全運転・健康診断)」実施の支援(事業主体:一般財団法人 全日本交通安全協会)

・当団体が実施する交通安全教室のイベント等の機会を活用し、事故防止の観点から、高齢運転者が容易かつ迅速に身体機能をチェックするよう誘導することで、医療機関への受診や安全運転等への気づきを提供します。

ウ. 自動車運転に必要な視覚認知機能を向上させる仮想現実シミュレーションを用いたビジョントレーニングの構築と効果検証(事業主体:国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター)

・自動車運転で重要な視覚認知の向上を目的に、仮想現実(VR:virtual reality)を用いて大規模人数に適用可能なビジョントレーニングプログラムを開発し、高齢者の運転技能を向上させる環境を整備します。

エ. 横滑り防止装置(ESC)の横運動に連係した加減速制御(G-Vectoring Control)によるAEB装置(衝突被害軽減ブレーキ装置)作動時の事故防止技術の実用化(事業主体:神奈川工科大学)

・研究担当者が開発した横運動を加減速制御する技術(G-Vectoring Control)を用いて、ドライバーの危機回避動作に対して横方向に制御できるようにシステム(ESC)の機能向上を図り事故回避装置の機能を高めるとともに、ドライバーの人間本来の危機回避動作を支援し、自動車事故の防止または軽減を図ります。

オ. 交通事故低減を目的とした路面摩擦情報のデータベース化と車両前方路面摩擦推定システムの開発(事業主体:一般社団法人 先進路面摩擦データベース研究組合)

・路面と路面最大摩擦特性の変化(雪氷路等)の連続的な測定を可能とする装置を用いて、事故発生に関係すると予想される道路位置に対する摩擦係数の変動を連続的に計測することで、事故の原因解明に資するデータベースの整備、システムの開発に取り組みます。

(2)自動車事故被害者対策

ア. 車いす移動車利用時の車椅子簡易固定システムの社会実装に向けた研究(事業主体:一般社団法人 日本福祉車輌協会)

車椅子移動車は通所介護施設等で多く利用されているものの、固定にあたり手間がかかっていることなどにより正しく使われていないケースが一定あることから、脊髄損傷者など車椅子利用者のQOL向上のため、車椅子を簡易に固定できる「車椅子簡易固定システム」の検証を行います。

イ. 障害者等の新規運転免許取得及び中途障害者の運転再開による社会参加と運転寿命の延伸に向けた障害者等への支援事業(事業主体:一般社団法人 全日本指定自動車教習所協会連合会)

・四肢及び体幹機能障害や高次脳機能障害等の障害を持つ方が運転免許を取得するための教習や中途障害となった方の運転再開の指導を行う教習所に対し、教習に必要な運転補助装置の配備を行います。これらの装置を活用し、運転免許の取得や継続、さらには適切な教育を行うことにより、障害者の社会参加の促進を図ります。

ウ. 高次脳機能障害者の社会復帰支援に関する研究事業(事業主体:一般社団法人 日本脳損傷者ケアリング・コミュニティ学会)

・支援機器を通した支援が高次脳機能障害者の社会復帰に与える影響の事例検証や社会復帰を果たした高次脳機能障害者のナラティブ(物語)動画の当事者支援にかかる効果検証を行います。これらの実施を通して、脳損傷者の主体性の変遷とそれを育む実践のあり方を探求します。

<ご参考>「自賠責運用益拠出事業」について

自賠責保険は、交通事故被害者への損害賠償という保険本来の役割だけでなく、自賠責保険の収支の改善や被害者保護を増進するため、交通事故防止や救急医療体制の充実、被害者やその家族への支援事業などを支える役割も担っており、自賠責保険の運用益が活用されています。

自賠責運用益の使途は、将来の自賠責保険の収支改善のための財源とするほか、自動車事故防止対策、救急医療体制の整備、自動車事故被害者対策等に必要な費用など、被害者保護の増進に資する施策に活用できるとされています(自賠法第28条の3)。

・当協会では、各損害保険会社から運用益の拠出を受け、真に被害者の支援となる事業を心掛け、「自賠責運用益拠出事業」の運営を行っております。

交通事故等で亡くなったメッセンジャーが展示される 「生命(いのち)のメッセージ展」