山本の登板数は日本時代よりも増えそうだ(C)産経新聞社

 ドジャース山本由伸が、メジャー1年目のキャンプを迎えた。10年総額7億ドル(当時のレートで約1015億円)の歴史的な契約額でFA移籍した大谷翔平はもちろん、山本も投手としてはメジャー史上最高額での契約。しかも、MLBで1度も登板したことのない投手の契約としては破格で、開幕に向けて注目度が増している。

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 12年総額3億2500万ドル(当時のレートで約471億円)。この価値に見合う1年目の成績は、どれほどのものを求められるのか。キャンプ2日目の10日(日本時間11日)、山本の獲得交渉に敗れたヤンキースの地元メディア『ニューヨーク・ポスト』紙の記者がデーブ・ロバーツ監督に質問を浴びせた。

「山本が日本で好成績を挙げているのを理解した上で、メジャーリーグで1度も投げたことがないピッチャーが最高額の契約をしたことについて、不服などを言う人はいるか」

 ロバーツ監督は、冷静に返答した。

「ただただ、(山本とドジャースの)両サイドが完全にマッチした。タイミングの良さや需要の高さもあったと思う。確かに、こちらでは投げたことはないが、我々は彼のことを何年も見ていた。投げ方や、の使い方、抜群の制球力も考慮して、自信を持って投資したと思う。価値でいえば驚くことかもしれないが、ここ最近では、そこまで驚くことではない」

 鳴り物入りで入団したとはいえ、それ相応の活躍が求められる。大谷も経験したが、懐疑的な目を向けるメディアもいるだろう。黙らせるには、1年目で結果を出すしかない。

 指標になるのはまず、登板数だ。オリックス時代は週1回のペースで先発がほとんどで、ここ数年は年間で25試合前後だった。だが、メジャーでは基本的に中4日で1年間ローテーションを守れば、30試合以上を投げることとなる。この点に関して言えば、ロバーツ監督も「もちろん、休養日を挟んでいくことにもなると思うが、週に1度の登板ではないことが、最大の変化だと思う」と案じた。

 目を光らせる米メディアも同じ見解だった。ドジャース担当で『ロサンゼルスタイムズ』紙のジャック・ハリス記者は「大きな疑問は、どれだけ投げられるか。後半戦でも中4日で投げていくのか。25~30試合を投げられれば、自然と12~13勝はできると思う」と持論を明かした。確かに、ベッツ、フリーマンに加え、大谷を擁するドジャース打線があれば、打線の援護が見込める。ある程度、失点が続いたとしても、それをカバーしてくれる強力打線があれば、2ケタ勝利は自然と近づいてくるだろう。

 ドジャースで活躍した過去の日本人の先発投手で言えば、野茂英雄が13勝(28試合)、石井一久が14勝(28試合)、前田健太が16勝(32試合)と、いずれも1年目に好結果を残している。契約額を考慮し、それと同等、あるいはそれ以上が求められるとすれば、登板数は必然的に30試合前後が必要となってくる。

 山本は今キャンプ3日目に、メディア対応を行い、意気込みを語った。「まだ数字の部分はまったく分からないですけど、とにかく精いっぱい投げて、ワールドチャンピオンになることに貢献できたらうれしいです」。質疑応答の中には、新人王についての問いもあった。「とにかく、シーズンに集中してやっていけたら。いい結果につながればいいかなと思います」。

 異国の新しい環境で、適応すべきことは山ほどある。大谷らのサポートがあるとはいえ、慣れるまでには時間を要する。野球のパフォーマンス以外でも適応した上で、162試合の長丁場、さらにポストシーズンを戦っていく体力をどう養うか。まず、30試合前後の登板を果たせれば、山本の史上最高額の契約に懐疑的な声を黙らせることができるかもしれない。

[文:斎藤庸裕]

【著者プロフィール】

ロサンゼルス在住のスポーツライター。慶應義塾大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。プロ野球担当記者としてロッテ、巨人、楽天の3球団を取材した。退社後、単身で渡米し、17年にサンディエゴ州立大学で「スポーツMBAプログラム」の修士課程を修了してMBA取得。フリーランスの記者として2018年からMLBの取材を行う。著書に『大谷翔平語録』(宝島社)、『大谷翔平~偉業への軌跡~【永久保存版】 歴史を動かした真の二刀流』(あさ出版)。

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