週刊少年ジャンプで2020年まで連載され、コミックス全45巻の累計発行部数は6000万部超、4シーズンにわたるTVアニメ化もされた大人気作品「ハイキュー!!」。バレーボール=排球に青春をかける高校生たちの物語で、ファンの間でも人気の高いエピソードである烏野高校と音駒高校の対戦を描いた最新作『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』(2月16日公開)がいよいよ公開となる。主人公・日向翔陽役を務める村瀬歩に、今作の見どころや、自身が演じる日向や今作で対戦相手となる音駒高校の孤爪研磨に対する想いなどについて聞いた。

【写真を見る】アフレコ終盤は試合終盤のようにクタクタになったと明かす村瀬歩

■「サウンドへのこだわりも大きい『ハイキュー!!』。是非劇場で観ていただきたいです」

ハイキュー!!」のTVアニメは2020年に第4期が放送。そこからじつに3年以上が経過しての劇場版公開とあって、ファンの期待も熱量も高まっている。村瀬は劇場版製作を知った時には率直に「また続きができる、と嬉しかった」と語る。「劇場版というのも『いいな』って思いました。劇場は何と言っても音響がすばらしいんです。『ハイキュー!!』はサウンドにもとてもこだわっていて、ボールやシューズの音も本物なんです。体育館に響く歓声も迫力あるものになっていますし、より没入感のある作品にできたと思います」と手ごたえを感じている様子だ。

TVアニメの放送から時間が空いていることで、日向を演じるときの難しさは感じなかったのかを尋ねてみると、唯一悩んだのが“半年前の日向”の声だったという。ゲームや企業コラボなどで日向を演じる機会はあったものの、今作では日向と研磨(CV:梶裕貴)の出会いのシーンを新たに収録しているのだという。

「烏野と音駒の練習試合のタイミングなので、作中では約半年前ということになるのですが、TVアニメで同様のシーンを演じたときを見返してみると、すごく線の細い声をしていて。あのころの日向はまだ試合の経験も少なくて、筋肉もきっと少なかったし、現在ほど使い込まれていないのがわかるんですね。その声を再現できるか不安だったところもありますが、アフレコの際、朝一番にそのシーンを収録して、音響監督から『日向はその感じだったね!』とポジティブな声をいただけたおかげで安心できたし、その後も乗り越えられたところがありました」

■「試合をしている日向たちと同じように、僕らもクタクタに…(笑)」

コロナ禍には人数を集めてのアフレコが行えなかったという話も耳にするが、今回は烏野の主要メンバーと、彼らとの関わりの大きい研磨や黒尾鉄朗(CV:中村悠一)とは合同でアフレコを行うことができた。久々の集結に感慨深かったのではと尋ねてみたが、「ラジオやイベントで定期的に『ハイキュー!!』メンバーとは顔を合わせることも多いので、そんなに『久しぶり』という感じではないんです」と笑ってみせる。

「ただ、今回はアフレコを1日に固めていたので、体力と集中力の消耗がすごかったです(笑)。劇場版の上映時間は、TVアニメにするとおよそ4話分。それを一気に録るので、後半には日向たちだけでなく実際に僕たちも疲労がピークで…。アフレコの終盤に試合の終盤の収録をもってきていただいたので、自然な『疲れている声』が出せたかもしれません(笑)」

日向と対のような立ち位置になる研磨を演じる梶とも、今作の収録にあたって特別に打ち合わせなどはしていないそう。「研磨も含め、『ハイキュー!!』は付き合いの長い作品でもあるので、ストーリーの向かう先と、その中で自分がなすべきことというのがはっきりわかっているようなイメージなんです。その中でセリフを投げかけて、反応が返ってきて…という感じで。休憩時間にはお芝居を離れてみんなでおしゃべりをしたり、一緒にご飯を食べたりして楽しく過ごしていましたよ。クタクタになっていた終盤の収録に向けては、栄養ドリンクを飲んで『頑張るか…!』と気合を入れたのも記憶に残っています」

■「研磨というキャラクターに没入できる演出にも期待してほしい」

劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』では、双方の監督の代から続く因縁からの悲願ともいうべき「公式試合での烏野対音駒」が描かれる。全員が攻撃に参加する“超攻撃型”の烏野と、どんなボールも拾い、頭脳である研磨へと“つなぐ”音駒。対照的な2校による試合となる点にも注目したい。

「日向と研磨は、2校を象徴するように対照的なキャラクターとして描かれてもいますが、根っこの部分はすごく似ているというか。どちらもすごく頑固で、『負けたくない』という気持ちが強いんですよね。日向にとっても研磨は、バレーという共通項でつながった友達だけど、やっぱり負けたくない相手の一人というか。そこにお互いにシンパシーを感じているのかも」

村瀬にとって、2014年の放送開始から10年の付き合いになる日向というキャラクターはどのように映っているのだろうか。第一声は「難しい質問!」との声だった。「自分とは性格も全然違っていて、頑固なところしか共通点が見当たらないんです(笑)。でも日向を見ていると、彼と関わる人がみんなバレーを通して何かしらの熱を受け取って、その熱量がどんどん増えていく。他の人を奮い立たせる力をもったインフルエンサーのような存在なのかなと思います」

研磨もまたその一人。黒尾に強引に誘われてバレーボールを始め、なんとなく続けてきた。そこで日向と出会い、「ゴミ捨て場の決戦」を通して日向たちと本気で戦い、彼の心にも火がともっていく。

「監督からは『今回の作品は研磨の物語です』と最初に言われました。その言葉がずっと心に残っていて…。烏野と音駒の試合が進む中で、物語のうえでは敵の立ち位置ですが、観ている人が“研磨”というキャラクターに没入できる瞬間や演出がきっとあると思います。日向と一緒にバレーをすることで、研磨が初めて心からバレーを『たのしい』と感じる瞬間を劇場で見届けてもらえたら、うれしいです!」

取材・文/藤堂真衣

『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』で主人公・日向翔陽役を務める村瀬歩にインタビュー/撮影/黒羽政士