累計13,000社400万人以上の組織開発・人材育成を支援するALL DIFFERENT(オールディファレント)株式会社(旧株式会社ラーニングエージェンシー 所在地:東京都千代田区 代表取締役社長:眞崎大輔)および人と組織の未来創りに関する調査・研究を行うラーニングイノベーション総合研究所は、社会人5~11年目の役職がついていない中堅社員(*1)600人に対し、2023年9月に直面している困難や不安(壁)に関して意識調査を行いました。

背景

外部環境の変化や競争の激しい昨今、組織が継続的に成長するためには「人」の成長が必要不可欠です。新入社員や管理職、次期管理職の育成に力を入れている企業は多いですが、社会人5年目から35歳前後の中堅社員は、既に経験豊富で自立していると判断され、指導や育成に対する優先度が下がり、いわゆる「育成の空白地帯」となっているケースが多く見受けられます。こうした状況も要因の一つとなり、まさにこれから活躍が期待できる中堅社員が離職してしまう、という課題をよく伺います。当社にも「中堅社員の離職を予防したい」「マネージャーなど次のステージに進んでもらいたいが、知識・スキルの習得が十分にできていない」「中堅社員の適切な育成がわからない」といったお悩みの声が日々寄せられています。そこで、今回は中堅社員が抱える課題とその解決策を明らかにすべく、中堅社員が直面する「壁」をテーマに調査を行いました。中堅社員はチームやプロジェクトの推進力となる大事な存在です。中堅社員の育成体制を構築することで、組織全体の能力向上に寄与することは間違いないでしょう。

(*1)当レポートでは社会人5年目以降35歳未満の役職がついていない社員を指し、「ミドルキャリア」とも記載

調査結果の概要

●ミドルキャリアが直面している壁は、「知識・スキルへの不安」が最大に

●「社会人6年目」と「社会人9~10年目前後」で、壁への捉え方が変わるターニングポイントあり
●「知識・スキル」「仕事の量」「上司との人間関係」の壁への捉え方は各年次で違いあり

調査結果の詳細

1.ミドルキャリアが直面している壁は、「知識・スキルへの不安」が最大に

本調査では、ミドルキャリアに対し、現在どのようなことに困難や不安(壁)を感じているか、仕事や上司、キャリアや自分の成長など9つの項目について質問しました。

結果、ミドルキャリアが最も壁を感じている項目は「自分の知識・スキルに不安を感じることがある」で45.7%となりました。次に、「仕事の量が多いと感じることがある」が44.2%、「上司との人間関係について苦労したことがある」が38.3%と続きました。

最大の壁としてあがった「自分の知識・スキルへの不安」は、当社が社会人2~4年目の若手社員に対して行った意識調査(*2)でも各年次で最大の結果となったことから、若手からミドルキャリアまで一貫して共通する不安であることがわかりました。(図1)

(*2)社会人2~4年目社員の意識調査(直面する壁 実態編)https://www.all-different.co.jp/download/all/news_20240110.pdf

2.「社会人6年目」と「社会人9~10年目前後」で、壁への捉え方が変わるターニングポイントあり

ここからは、ミドルキャリアが直面している壁のTOP3であった「自分の知識・スキルへの不安」「仕事の量の多さ」「上司との人間関係の苦労」について、各年次でどのような違いがあるか分析していきます。

「知識・スキルへの不安」の壁(年次別)

「自分の知識・スキルに不安を感じることがあるか」という質問に対し、「ある」「ない」と回答した人を、年次別に比較しました(「どちらともいえない」と回答した人を除く)。


結果、全年次で6割が「ある」と回答しました。その中でも、社会人7年目と社会人11年目以上はさらに高く、76.2%、75.2%と7割以上が「ある」と回答し、その前の年次(社会人6年目・10年目)で「ある」と回答した割合よりも16ポイント以上高くなりました。(図2)

「仕事の量」の壁(年次別)

次に、「仕事の量が多いと感じることがあるか」という質問に対し、「ある」「ない」と回答した人を、年次別に比較しました(「どちらともいえない」と回答した人を除く)。

結果、「ある」と回答した割合が、6年目と9年目の社員のみ半数以下となり、その他の年次はすべて6割以上となりました。(図3)

「上司との人間関係で苦労した」壁(年次別)

「上司との人間関係について苦労したことがあるか」という質問に対し、「ある」「ない」と回答した人を、年次別に比較しました(「どちらともいえない」と回答した人を除く)。

結果、「仕事の量の壁」と同様に、6年目と9年目の社員のみ、「ある」と回答した割合は半数以下となりました。また、社会人9年目以降は、9年目の45.7%に対し、10年目は62.5%と16.8ポイントの上昇が見られました。11年目以上も上昇は続き、68.0%と7割近くが壁を実感する結果となりました。(図4)

ここまで、ミドルキャリアが直面している困難な壁TOP3の年次別内訳をみてきました。多少の前後はあるものの、社会人6年目と社会人9~10年目で、壁の捉え方が大きく変わるターニングポイントが訪れていることが推察できます。

3.「知識・スキル」「仕事の量」「上司との人間関係」の壁への捉え方は各年次で違いあり

次に、ミドルキャリアが直面している困難な壁TOP3である「自分の知識・スキルへの不安」「仕事の量の多さ」「上司との人間関係の苦労」について、社会人5年目~11年目の各年次で、直面している壁への捉え方に違いがあるか分析しました。

「知識・スキルへの不安」の壁

「自分の知識・スキルに不安を感じることがあるか」という質問に対し「ある」と回答した人が「知識スキルへの不安」をどのように捉えているか調査しました。結果、33.9%のミドルキャリアがそのまま「不安に感じた」と回答しました。次に、24.1%が「成長の機会と感じた」、20.1%が「負けたくない・乗り越えたいと感じた」と続く結果となりました。(図5)

さらに、この「知識・スキルへの不安」の壁の捉え方について、年次別に比較をしました。

結果、社会人5年目と8年目は、「成長の機会と感じた」と回答した割合がそれぞれ35.7%、34.4%と最も高い結果となりました。一方、「知識・スキルへの不安」をそのまま「不安に感じた」と回答した割合は、社会人6年目と9年目が特に高く、それぞれ40.7%、50.0%。社会人10年目以降も3割を超える結果となりました。(図6)

「仕事の量」の壁

次に、「仕事の量が多いと感じることがあるか」という質問に対し「ある」と回答した人が「仕事の量が多い」ことをどのように捉えているか調査しました。結果、37.7%のミドルキャリアが「大変と感じた」と回答しました。次に、「不満を抱いた」が21.9%、「我慢した」が18.1%と続きました。一方、「この経験を楽しもうと感じた」割合は最も低く、5.7%となりました。(図7)

さらに、この「仕事の量」の壁の捉え方について年次別に比較しました。結果、社会人5年目以外の全年次で「大変と感じた」と回答した割合がトップとなりました。その中でも、社会人9年目が最も高く55.0%でした。一方、社会人5年目は全年次で唯一「不満を抱いた」が「大変」を上回り、28.8%となりました。

「仕事の量」の壁の捉え方は全体的にポジティブな回答の割合が少なくなりましたが、社会人10年目は、25.0%が仕事の量の壁に対して「負けたくない・乗り越えたいと感じた」と回答する結果も見られました。(図8)

上司との人間関係への苦労の壁

「上司との人間関係について苦労したことがある」という質問に対しては、「ある」と回答した人が上司との人間関係についてどのような場面で苦労し、その苦労をどのように捉えているか調査しました。


結果、「意見が合わない」と回答した割合が38.3%と最も高くなりました。次に、「適切な指示を出してくれない」が33.0%、「厳しい/怖い」が27.8%と続きました。(図9)


次に、上司との人間関係で苦労した経験をどのように捉えているかを質問しました。結果、27.8%が「不満を抱いた」と回答。次に、「我慢した」が25.2%、「会社を辞めたくなった」が19.6%と続きました。前述した他の困難への捉え方と違い、「会社を辞めたくなった」が上位にランクインする結果となりました。(図10)

さらに、「上司との人間関係で苦労した」壁の捉え方について年次別に比較をしました。

結果、社会人9年目が「不安に感じた」と回答する割合が42.9%と突出しており、他の年次と比べ21ポイント以上の差がありました。また、社会人6年目、社会人8年目は「我慢した」と回答した割合が38.9%、38.5%と高くなりました。「会社を辞めたくなった」と回答した割合は、社会人6年目が最も高く38.9%、社会人8年目以降は徐々に減少する結果となりました。(図11)

まとめ

今回の調査結果から、ミドルキャリアと呼ばれる中堅社員も若手社員と同様に、年次によって異なる様々な困難に直面していることがわかりました。特に「知識・スキルへの不安」「仕事の量の多さ」「上司との人間関係への苦労」の3つは全年次で高い「壁」になりやすく、その捉え方も年次ごと異なることが明らかとなりました。

また、今回の調査からは多くの「壁」に共通して、社会人6年目と社会人9~10年目前後のタイミングで、壁の捉え方が大きく変わるターニングポイントが訪れていることも明らかとなりました。このターニングポイントを軸にミドルキャリアを前期(6年目まで)、中期(8年目まで)、後期(9~10年目以降)と分類して考えてみましょう。

まず、ミドルキャリアの前期は新人・若手という括りから脱し、「業務量の増加」や「周囲からの期待値の高まり」などに直面する時期です。調査結果からも社会人5年目は「知識・スキル」の壁を「成長の機会」と前向きに捉える方が多い一方、6年目からは「不安」な方が増える傾向が見受けられました。また、「仕事の量」の壁では「不満」や「大変さ」が高くなり、「上司との人間関係」の壁では5年目で「不満」が積もり6年目で「会社を辞めたい」がピークに達する様子が見てとれました。

次に、ミドルキャリアの中期は、業務内容が変わらない、評価されない、などが不安につながりやすくなる時期です。調査結果では、全体的に「不満」が高まりつつも「我慢」している中堅社員が多いことが見受けられました。

最後に、ミドルキャリアの後期は、管理職の一歩手前として求められる期待が変化し、組織目線で判断をすることが求められる時期です。「知識・スキル」に対しては社会人9年目から「不安」が急激に高くなります。また、「仕事の量」の壁に対しても「大変」と感じる割合が最も高くなります。さらに、「上司との関係性」においても、社会人9年目で「不安」や「辛い」気持ちが急に高まり、それ以降「不満」や「我慢」が右肩上がりとなりました。「不安」や「不満」といったネガティブな感情を抱く場面としては、上司と意見が合わない、適切な指示をもらえていないという場面が多いこともわかりました。

本調査より、ミドルキャリアといっても周囲から期待や業務内容が年次により変化するため、直面している壁とその捉え方は異なることがわかりました。こうした結果からも、企業は入社5年目以上の中堅社員を一括りにするのではなく、前期・中期・後期で異なる壁を抱えていることを理解し、育成計画を構築していくとよいといえるでしょう。

調査概要

◆調査対象者:社会人 5 年目~11年目以降の管理職未満の就労者

◆調査時期:2023年9月28日9月29日

◆調査方法:調査会社によるインターネット調査

◆サンプル数:600人(勤続5年目96人、勤続6年目74人、勤続7年目64人、勤続8年目79人、勤続9年目60人、勤続10年目63人、勤続11年目以降164人)

◆属性(所属企業の業界)

製造業130人(21.7%)、医療・福祉90人(15.0%)、卸売業・小売業50人(8.3%)、公務 42人(7.0%)、情報通信業37人(6.2%)、サービス業(他に分類されないもの)37人(6.1%)、建設業28人(4.7%)、金融業・保険業25人(4.2%)、教育・学習支援業24人(4.0%)、運輸業・郵便業21人(3.5%)、生活関連サービス業・娯楽業21人(3.5%)、宿泊業・飲食サービス業19人(3.1%)、学術研究・専門・技術サービス業10人(1.7%)、農業・林業8人(1.3%)、電気・ガス・熱供給・水道業8人(1.3%)、不動産業・物品賃貸業8人(1.3%)、複合サービス事業8人(1.3%)、その他34人(5.7%)

*本調査を引用される際は【ラーニングイノベーション総合研究所「中堅社員の意識調査(直面する壁 TOP3)」】と明記ください

*各設問において読み取り時にエラーおよびブランクと判断されたものは、欠損データとして分析の対象外としています

*構成比などの数値は小数点以下第二位を四捨五入しているため、合計値が100%とならない場合がございます

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ALL DIFFERENT株式会社 CLM(最高育成責任者)による考察

本調査から、ミドルキャリアが直面する主な壁は「知識・スキルへの不安」「仕事の量」「上司との人間関係」であることが明らかになりました。これらの壁に対する捉え方には、キャリアの各段階で顕著な変化が見られ、特定のターニングポイントが存在することが示されています。これらの知見は、企業における組織開発・人材育成において重要な意味を持ちます。

ミドルキャリア社員の活躍と定着を促し、ポテンシャルを最大限に引き出すためには、以下の3点が重要です。1点目は、本人に期待する役割を適時適切に伝えることです。2点目は、中長期的な視点での意図的なアサインメントです。そして3点目は、役割を果たすために必要な知識・スキル習得を支援する仕組みの構築です。

特にミドルキャリア後期においては、フォロワーシップの習得が鍵となります。これは、ミドルキャリア社員が組織の一員としてより広い視野を持ち、リーダーへの貢献と建設的な提案を行なう意志と能力を高めることを意味します。フォロワーシップの習得を通じて、彼らはネガティブな感情から脱却し、前向きな問題解決に取り組む姿勢を育むことができます。

このように、組織はミドルキャリアの社員一人ひとりが直面する困難を理解し、それぞれの成長段階に応じた支援を提供することが求められます。近い将来、会社の牽引役となるミドルキャリア社員がその能力を最大限に発揮し、組織にとって貴重な資源となるような環境を整えることを強く推奨いたします。

ALL DIFFERENT株式会社

組織開発コンサルティング本部 シニアマネジャー・開発室 室⾧

CLM(最高育成責任者)

根本 博之(ねもと・ひろゆき

事業会社を経て、2010年にALL DIFFERENT株式会社(旧トーマツイノベーション株式会社/株式会社ラーニングエージェンシー)に入社。コンサルタント業務・講師業務を通じ、年間100~150社ほどの組織開発・人材育成を支援する傍ら、社内の育成責任者としても活動。大阪支社の立ち上げに参画し、営業リーダーとして年間目標達成に導いた後、本社にてコンテンツ開発業務に従事。中堅・大企業向けコンサルティング事業部門の責任者を歴任。日本経済新聞、NHKなどメディア出演多数。

※記載されている社名、サービス名などの固有名詞は登録商標です。なお、本文および図表中において、必ずしも商標表示( (R)、TM )は付記していません。

配信元企業:ALL DIFFERENT株式会社

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