100万個以上あるとされる太陽系の小惑星だが、そこにあった水はとっくの昔に蒸発しているだろうと考えられていた。
だが太陽系でもひときわ大きな小惑星「イリス」と「マッサリア」には、なんと水があることが明らかになったそうだ。小惑星の表面から水の分子が検出されたのは史上初のことだ。
成層圏赤外線天文台「SOFIA」の観測データによるなら、その土の中には1m3あたり350mlの水が含まれているという。
火星と木星の間の小惑星帯にある「イリス」は、ギリシア神話の虹の女神にちなんで名付けられた大型の小惑星だ。
太陽を3.7年かけて1周するこの小惑星の直径は、199kmととびきり大きなもので、100万個ほどある太陽系の小惑星の99%よりも大きいという。
一方の「マッサリア」もまたイリスに匹敵する巨大さで、直径は135km。イリスと同じような軌道で太陽を公転する大きな小惑星で、その名はフランスの都市マルセイユのラテン語名にちなんだものだ。
超大型望遠鏡VLTで撮影したイリス / image credit: ESO/Vernazza et al. / WIKI commons
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太陽系黎明期の様子を知るヒント
太陽系に無数にただよう小惑星だが、それぞれによって組成や構造が少々異なる。
たとえば太陽の近くにあるものは、ケイ酸塩でできたものが多いが、太陽から遠く離れたものは、主に氷でできている。
そうした小惑星の特徴の違いが重要なのは、それがどこにどれだけあるのか知ることで、太陽系が産声をあげる前の「原始太陽系星雲」にどのような元素があり、どのように移動したのか想像するヒントになるからだ。
また太陽系内の水の分布は、太陽系以外の惑星系における水や、地球外生命が存在する可能性などを推測するヒントにもなると考えられる。
成層圏赤外線天文台「SOFIA」のデータ分析で小惑星の水分子を発見
小惑星イリスとマッサリアの表面で水の兆候をとらえたのは、2022年に引退した成層圏赤外線天文台「SOFIA」だ。
米国サウスウエスト・リサーチ・インスティテュートの研究チームが、この空飛ぶ天文台に搭載された微光天体赤外線カメラ(FORCAST)のデータを分析したところ、1m3の土の中に約350mlの水が含まれていることが明らかになった。
SOFIAは2020年に月に水があることを発見している。今回イリスとマッサリアで検出されたスペクトル線の強さからは、水の量と分布が月と一致していることが確認されている。
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こうした小惑星の水もまた、ケイ酸塩に吸収され、鉱物と結合して閉じ込められていたという。
サウスウエスト研究所の科学者たちは、NASAの成層圏赤外線天文台(SOFIA)のデータを使って、初めて小惑星の表面に水分子を発見した / image credit:NASA/Carla Thomas/SwRI
またSOFIAは、もっと暗い小惑星である「パルテノーペ」と「メルポメネ」からも水らしき兆候を検出しているが、こちらはノイズが多すぎて決定的なものではない。
太陽系に水がどれだけあるのか解明するには、引き続きさらなる分析が必要になる。
研究チームは今後、より高性能なジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で太陽系の水について調べる予定であるそうだ。
この研究は『The Planetary Science Journal』(2024年2月12日付)に掲載された。
References:Water found on supposedly dry asteroids for the first time / Water Detected on The Surface of Asteroids For The First Time Ever : ScienceAlert / written by hiroching / edited by / parumo
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