立春をすぎ暦の上では春ですが、むしろ寒さがようやくピークを迎えた感のある今日この頃。

 突然ですがクイズです、気温が下がるにつれて増えていくものってな~んだ? ……そう、自動販売機の「あったか~い」ドリンクですね。冬のお楽しみとしてコーンスープと双璧をなすのが、おしるこ! ひと口飲むだけでほっと穏やかな気分になれる、何であれば小腹も満たせる。

 今回はそんな「おしるこ」を飲み比べてみました。自販機にあれば買うという感じで、メーカーによる味の違いを意識している方は少ないのではないでしょうか? 味わいはもちろん製法や使用している豆など、それぞれにちゃんと個性があるんですよ。

◆今回実飲する3本はこちら!

 今回セレクトしたのは、全国的に自販機が設置されている「アサヒ」「伊藤園」「ダイドーの3社。一部地域では販売されていない可能性もありますが、もっともメジャーだと思われるこの3本でいってみましょう。

 ちなみにあずきといえば、「あずきバー」でおなじみの井村屋も、缶のおしるこを2023年3月末まで販売していました。現在は販売を休止しており、理由を広報の方に尋ねてみたところ、「商品構成の見直しによる終売」とのこと。しかし現在、井村屋からはカップや袋に入ったおしるこ・ぜんざいが多数販売されているそうです。袋を開封せずにレンチンできる「レンジで簡単おしるこ」など、本格的な味をお手軽に味わえるラインナップが充実しています。

◆アサヒ 老舗あんこ屋特製おしるこ

 さあ、では飲み比べ、まずはアサヒから。缶の表記によると、竹小豆・いんげん豆・あずきという3種の豆を使用。創業70年を超える老舗あんこ「遠藤製餡」が製造に携わり、さっぱりとした甘みが特徴のようです。いざ実飲!

 豆を煎ったような香ばしさが印象的。飲むとすり潰した豆の舌触りがあり、かなりとろみがあります。大きめの豆粒や皮が、ひと口ごとにゴロリと当たるのも印象的。それとともに、まったりとした甘みと風味が長く持続します。「豆を“食べている”感じがほしい」という方にうってつけ。もっとも小腹を満たせそうです。

伊藤園 大納言しるこ

 続いては「お~いお茶」でお馴染みの伊藤園。こちらは特許を取得している「まるごと茹で上げ製法」が一番の特徴で、なんと豆を缶に詰めてから、じっくりと茹で上げているそうです。それにより素材本来のおいしさを逃さず、濃くてしっかりとした味わいを実現しているのだとか。豆は北海道あずきを使用しています。では実飲!

 香りはあくまで自然ながら、甘さの印象が強め。飲むとそれに反して、あずきの品良い風味がふわりと来て、甘みよりも深いコクを感じます。余韻のキレもよく、しっかり濃厚というよりは、すっきりめの部類だと感じました。「自然で優しい味わい」を求めるならこれでしょう。なお、粒は小さめながらどっさり。

ダイドー 金のおしるこ

 3つ目はダイドー。こちらは缶よりも公式HPのほうが記載が詳しく、「ふっくらとした“こつぶあずき”と“金時豆(いんげん豆)”を使用。風味豊かな味わいで、しっかりと小腹も満たしてくれる」とのこと。おしるこで小腹を満たせると感じるのは自分だけだと思っていたのですが、意外と共通認識なんですね。

 あずきのコクを感じる香り。飲むと液体はさらっとしているものの、水飴のような甘みがどっしりと口を満たします、その後からあずきの風味が追いかけてきて、余韻には皮のほのかな渋みも感じました。「とにかく甘いのをガツンと入れたい」という方におすすめです。こちらも粒は小さめ。

◆味覚をリセットする方法

 最後に「甘~いおしるこを、どうやって立て続けに飲み比べたのか?」という余談をひとつ。

 甘味処などでおしるこを頼むと、塩昆布と濃いめのお茶が付いてきますよね? 今回もそれにならってみました。

 実はこれ、おしるこの甘みを、塩昆布の“塩味”と濃いお茶の“苦み”でリセットするという効果があるようです。リセットすることで、甘み豊かなおしるこを最後まで飽きずに楽しめる、というわけですね。

 今回はこの方法で甘みをリセットしつつ飲み比べを実施。個人的にはかなり効果を感じました。

◆筆者の推しは「伊藤園 大納言しるこ」!

 伊藤園おしるこは、とにかく優しい。引っかかりが一切なく、これなら毎日でも飲みたいと思わせてくれる一本でした。“食べ応え”ならアサヒ、甘みのインパクトを求めるならダイドー、といったところでしょうか。

 毎年おしるこが並ぶ時期にはズレがあり、しかも自販機によってラインナップされているかどうかはまちまち。冬の風物詩として、あればひとまず飲んでおくことをおすすめします。小腹も満たせますよ!

文/川瀬章太

【川瀬章太】
フリーライター。神戸・大阪の編プロに8年勤務し、グルメ・街ネタ誌や飲食業界誌などを手がける。取材経験は1500件以上。某純文学新人賞の最終選考に3度残ったことがある。現在はWEBサイト「LIQLOG」などで、ビギナーにやさしいお酒の基礎知識や取材記事を執筆中