女子SPA!で大きな反響を呼んだ記事を、ジャンルごとに紹介します。こちらは、「義実家・家族」ジャンルの人気記事です。(初公開日は2020年1月18日 記事は取材時の状況)


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 DV(ドメスティック・バイオレンス)について世の中の理解は広まってきていますが、DVの中に「経済DV」というものがあることは、まだそれほど知られていないのではないでしょうか?



写真はイメージです(以下同じ)



 例えば、生活費としてごくわずかのお金しか渡さず、相手を金銭的に身動きがとれない状況に陥れる行動などがあげられます。


 夫本人だけではなく、夫の家ぐるみで金銭的に拘束された妻のケースをご紹介します。


 現在は東京で営業職に就き、バリバリ働いている晴美さん(仮名・37歳)。スーツがよく似合うキリッとした女性ですが、実はバツイチで、離婚と同時に九州から上京してきたそうです。


「私は実家が福岡で比較的都会っ子だったんですけど、別れた夫はもう少し田舎の方の出身でした。大学で知り合ってそのまま結婚したんですが、入籍前に『実家に帰って家業を継ぐ』って言われた時にちょっと考え直せば良かったと今は後悔しています……」


◆夫の実家の家業にかり出され、タダ働きで生理用品も買えず
 夫からの提案に、特に異論もなく賛成してしまった晴美さん。ですが、晴美さんの両親は「大丈夫か?」と都会育ちの娘が田舎の家族経営会社に嫁ぐことに心配そうだったと言います。それでも夫が「晴美さんには苦労させませんから」と懸命に頭を下げ、なんとか送り出してもらえたのでした。


「夫の実家は運送業で、たくさんのドライバーさんを抱えた会社でした。私はそこで内勤の事務のパートとして働くことになり、主婦業と両立させながら、しばらくの間は平穏に過ごしていました」


 ところが、晴美さんが嫁いで間もなく……というよりも、もともとかなり業績が悪化していたという義実家の会社。事務パートだったはずの晴美さんもドライバーとして駆り出され、朝から晩まで休む間もなく働きどおしに。



 さらに次期社長の妻としてドライバーを取りまとめるリーダー的なポジションにすえられ、彼らに対する指導や評価などの業務まで覆(おお)いかぶさってきたのです。


「給料? ありませんでした。嫁だからタダで使っていいという方針だったんじゃないですかね。お陰で生理用品すらまともに買えませんでしたよ……。


 本当に日々酷使されるばかりの生活で、夫とも生活時間が合わずにすれ違うばっかり。お金も無いのでかろうじて週1回あった休みの日はひたすら寝てました。」


◆風俗嬢として働き出した
 そんな生活に嫌気が差した晴美さんは、ある日ドライバー仕事帰りに通りすがりの道である店を見つけます。それは、路面営業をしている風俗店。晴美さんはフラフラと吸い込まれるようにその店に入り、気が付けば面接を受け、風俗嬢として働くことが決まりました。


「夫との性生活もなく、金銭面でも女としてもカラッカラになっていたタイミングだったんで無意識で選んだのかもしれません。私はドライバーの仕事が終わった後の短い時間と休日だけそこで働き始めました。


 風俗で働くわりには微々たるお金だったかもしれませんが、それでも無給の義実家の会社よりよっぽど生活の助けになりました」


 ところが、晴美さんがそのお店の近くの駐車場に社用車を停めていたため、「あの会社の人は仕事中に風俗通いをしてるのでは?」という噂が立ち始めたそうです。もちろん義実家や夫は犯人を割り出そうとしましたが、まさか嫁が働いているとは露ほども思っていなかったようで、何も判明せず。


◆義実家が会社を畳むタイミングで離婚



 そうこうしてるうちに信用がどんどん落ちて業績がさらに悪化。結局、義実家は会社を畳むことに……。


「私はそのタイミングで離婚を切り出して、風俗で働いていたことが万が一にでもバレないように、慰謝料も何もいらないからと逃げるように上京しました。


 その後は一切連絡を取ってないので元夫がどうしているのかは知りません。過ぎたことはもう仕方ありませんが、あんな男だと見抜けなかったことは私の反省すべき点ですね」


 家ぐるみで嫁に経済DVをして搾取していた分のツケが、結果的に自分たちに返ってきてしまった因果応報なお話でした。


―シリーズ「結婚の誤算」―


<文/もちづき千代子>


もちづき千代子】フリーライター。日大芸術学部放送学科卒業後、映像エディター・メーカー広報・WEBサイト編集長を経て、2015年よりフリーライターとして活動を開始。度を超したぽっちゃり体型がチャームポイント。Twitter:@kyan__tama