画廊や展示会場で作家につきまとう「ギャラリーストーカー」の被害に悩む芸術系大学の学生たちが2月15日文科省や大学に対策を求めるオンライン署名を始めた。

●深刻なケースでは創作活動に影響することも

対策をうったえているのは、金沢美術工芸大、広島市立大芸術学部、武蔵野美術大の有志の学生や卒業生。

各大学では、芸術祭やオープンキャンパス、卒業制作展など、学内で作品の展示をする際、例年のように一部の来場者から、長時間のつきまとい、高圧的な態度で説教、盗撮、個人情報を聞き出すなどの迷惑行為があり、学生たちは対応に悩んできたという。

こうした迷惑行為は「ギャラリーストーカー」と呼ばれ、深刻なケースでは、作家の創作活動に影響することすらある。しかし、芸術系大学では、こうした来場者の迷惑行為に対する対応に温度差があり、学生たちは大学側が率先して対策をおこなうことを求めている。

●学生の負担が大きいギャラリーストーカー対策

昨年から今年にかけて、芸術系大学の芸術祭や卒業制作展では、ギャラリーストーカー行為の禁止を掲げるところがみられた。

たとえば、武蔵野美術大では、学生有志が「ギャラリーストーカー対策委員会」を立ち上げ、芸術祭で学内で注意を呼びかけたり、パトロールをおこなったりした。しかし、対策委員会の学生によると、学生の負担があまりに大きかったという。

そうしたことから、学生たちはオンライン署名で、国や文科省、大学に対し、次の3点を求めている。

1、芸術系大学におけるギャラリーストーカー行為および、学生の被害の実態調査を実施することを求めます。

2、芸術系大学におけるギャラリーストーカー対策を各大学が主体的に講じることを求めます。

3、芸術系大学における迷惑行為(ギャラリーストーカー行為)が発生した場合の被害者への適切なケアと二次被害を防ぐための啓発を求めます。

●「悪質な迷惑行為によって、作家の未来が潰されない社会を」

署名を呼びかけている学生たちは、オンライン署名サイトで次のようなメッセージを発信している。

「大学教授・職員一人一人の意識をアップデートしていくには時間がかかる事は承知しています。ですがそれまでの間に実際に警備に当たったり、対策にのぞむ私たちの貴重な学生生活は蔑ろにされて良いものでは無いはずです。そして何よりギャラリーストーカー問題を考える時に、これまでこの問題を放置してきた事で被害に遭い、その苦しみや傷に向き合いながら今日を生きる一人一人の人間が存在するという事を忘れないで欲しいと思います」(武蔵野美術大ギャラリーストーカー対策委員会)

「これまで学生たちは、卒業制作や卒業制作展自体の運営で多忙な中、さらに迷惑行為への対策や被害者を受けた学生のケアも担ってきました。学生が当事者として環境改善に取り組もうとすること、そのために自ら声をあげ具体的な策を講じること自体は素晴らしいのですが、これは本来大学側が担うべき部分でもあると思います。芸術を学ぶ学生たちがその成果を発表する場で不必要な不安や恐怖を感じなくて済むよう、発表の場自体がネガティブな経験を生み出さないよう、一律な制度的改善を求めます」(広島市立大有志の卒業生)

「ギャラリーストーカーの被害は、首都圏から離れた金沢でも、年々深刻さを増しています。学生だけでできる迷惑行為対策の限界に直面しているのが現状です。これからの新たな被害を防ぐためには、大学や行政機関と連携を取って、より効力のある対策を行っていくことが必要不可欠です。悪質な迷惑行為によって、作家の未来が潰されない社会を目指すために、多くの方々のご理解とご協力を頂けることを心から願っています」(金沢美術工芸大 学生の創作活動に対する迷惑行為対策委員会)

国や大学に「ギャラリーストーカー対策」求めるオンライン署名、美大生らが開始