千葉県誕生150周年の令和5(2023)年度にこれから100年後の未来を考える。その共創の場として開催中の「百年後芸術祭」。3月23日(土)〜5月26日(日)には市原市木更津市君津市袖ケ浦市富津市の内房総5市で、「千葉県誕生150周年事業 百年後芸術祭〜環境と欲望〜内房総アートフェス」が開催される。2月9日(金)には企画発表会が行われ、アート作品展示における出展アーティスト約80 組と音楽ライブイベントの発表があった。主な展示会場やアーティストなど見どころを紹介したい。

内房総5市による広域連携、官民協同による初の試みとなる「百年後芸術祭-内房総アートフェス-」 。総合プロデューサーに小林武史アートディレクターに北川フラムを迎え、アート、クリエイティブ、テクノロジーの力の融合する芸術祭だ。小林は北川がディレクターを務める芸術祭に参加して以降、2019年には木更津市で「農業」「食」「アート」を軸とした複合施設「クルックフィールズ」を創設するなど、地域の営みと音楽とアートが混ざり合うような活動を行っている。千葉県を「東京に対するカウンターとしてのエリア」と位置付け、この芸術祭のテーマを「環境と欲望」とした。その理由について、小林は「“欲望”、つまり自己の利益を考えることと、“環境”、すなわち他者の利益を考えること。その両方と共振を考えることが未来を創っていくことではないか」と語る。

総合プロデューサー・小林武史 Photo:Osamu Nakamura

「百年後芸術祭〜内房総アートフェス」は、アートを主とする「LIFE ART」と音楽を主とする「LIVE ART」の両輪で進んでいく。「LIFE ART」では、内房総5市の各所で北川のディレクションによるアート作品が展示される。

アートディレクター・北川フラム Photo:Osamu Nakamura

まず市原市では、過去3回の「いちはらアート×ミックス」の成果を継承し、「アート×ミックス2024」として展開。内田未来学校、上総牛久駅周辺、旧里見小学校、旧平三小学校、月崎・田淵、月出工舎などを会場として、イ・ビョンチャン、千田泰広、森靖、アブドゥルラーマン・アブダラ、毛利悠子らが参加する。なお、市原湖畔美術館では、リュウ・イ、ディン・Q・レらを迎えて企画展「ICHIHARA×ART×CONNECTIONS」を6月23日(日) まで開催。人口の50人に1人が海外にルーツをもつ市原市で、多様な人々が共に生きる社会を目指してプロジェクトを展開する。

千田泰広《Analemma 2023》牛久リ・デザインプロジェクト(2023年)出展作品
ディン・Q・レ《この家の貴女へ贈る花束》瀬戸内国際芸術祭 2019 展示風景

また、木更津市では、木更津駅周辺、東京湾アクアラインの足元に残された盤州干潟、クルックフィールズの3カ所で、増田セバスチャン、槙原泰介、オラファー・エリアソンらの作品が展開される。企画発表会ではSIDE COREのメンバー・高須咲恵が登壇し、子供の頃に木更津に転居した思い出をもとに、アクアラインに残る浮島に家をつくるプロジェクトを発表した。岸辺から眺める観客の想像を掻き立てそうだ。

SIDE CORE・高須咲恵 Photo:Osamu Nakamura

高度経済成長期に製鉄業で栄えた君津市では、移住者の増加で建設された八重原住宅なども減りつつある。さわひらきは旧保育園、深澤孝史は公民館の空間を使い、再び息を吹き込む。また、袖ケ浦市では、四季の花が咲き誇る袖ケ浦公園が会場となる。東弘一郎が、国指定重要無形民族文化財である井戸の掘削技術「上総掘り(かずさぼり)」を利用した作品を制作するなど、地域の歴史を造形に活かす。さらに富津市では、富津埋立記念館と隣接する公民館を会場として五十嵐靖晃、岩崎貴宏らが展示。海苔の養殖、潮干狩り海水浴、マリンスポーツなど、海の恵みの歴史と現在が交差する。

さわひらき 過去作品

また、開発好明は5市で10人の先生を招く講座「100人先生の10本ノック」を開催。「けもの先生」猟師の原田祐介さんらユニークな人々に、カルチャーセンターにはない話が聞ける。

開発好明 過去作品 100 人教頭学校キョンキョン「滝教頭 松本靖彦」

一方、「LIVE ART」では、小林武史のプロデュースにより「通底縁劇・通底音劇」と題したスペシャルライブを4つの会場で敢行する。アンドレブルトンの『通底器』に想を得て「つながるはずのないものがつながる」イメージを込めている。パフォーマンスライブ「不思議な愛な富津岬」(アイナ・ジ・エンドほか出演 4月6日(土)富津公園ジャンボプール[予定])、「super folklore(スーパーフォークロア)」(櫻井和寿スガ シカオ ほか出演 4月20日(土)・21日(日) クルックフィールズ)、「dawn song(ドーンソング)」(宮本浩次ほか出演 5月4日(土)・5日(日) 君津市民文化ホール)、「茶の間ユニバース」(荻野目洋子、MOROHAほか出演 5月12日(日)袖ケ浦市民会館)と豪華メンバーが顔を揃える。

なお、「百年後芸術祭」では、小林武史のプロデュースで、山武市佐倉市、栄町でもパフォーマンスライブなどが開催される。山武市では「百年後芸術祭-内房総アートフェス-」 の参加作家でもある保良雄がディレクションし、梅田哲也、SIDE COREなどが参加する。

保良雄 過去作品 ©︎Taichi_Saito

アート展示は広域にわたるため、無料周遊バスやオフィシャルツアー、モデルコースなどをウェブサイトで要チェック。車でドライブもおすすめだ。豊かな歴史や地域性を持つ千葉のまちを、100年後の世代に何を残したいか考えながら巡りたい。

Text:白坂由里

<開催概要>
「百年後芸術祭-内房総アートフェス-」

会期:2024年3月23日(土)~5月26日(日)
休業日:火水(4月30日5月1日は除く。一部施設定休日が異なる)
時間:10:00~17:00
料金:当日一般3,500円、当日高中小2,000円/前売一般2,500円、前売高中小1,000円
パスポート
※県内の小中学生は無料引換券を配布
公式サイト:
https://100nengo-art-fes.jp/

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