2023年11月に劇場公開されたマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の映画「マーベルズ」が、2月7日に配信された。同作は、多くのマーベルヒーローの中でも「最強」の呼び声高いキャロル・ダンヴァース/キャプテン・マーベル(ブリー・ラーソン)が、アメリカ・ジャージーシティに住む謎の腕輪“バングル”を身に着けたことで能力に目覚めた高校生カマラカーンミズ・マーベル(イマン・ヴェラーニ)、ワンダマキシモフ/スカーレットウィッチ(エリザベス・オルセン)のヘックス・パワーに触れたことで能力が覚醒したモニカランボー(テヨナ・パリス)とチームを結成し、銀河を破壊する陰謀を阻止するために戦う物語。今作で引き続き孤高のヒーロー、キャプテン・マーベルを演じているブリー・ラーソンのこれまでのキャリアを振り返ってみたいと思う。

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■9歳の時にシットコムでデビュー

1989年10月1日、アメリカ・カリフォルニア州で生まれたラーソンは、6歳の頃から演技を学び、1998年ジェイ・レノのコメディー番組「ザ・トゥナイト・ショー・ウィズジェイ・レノ」の出演が俳優としてのキャリアスタートとなった。

2001年から2002年にかけて放送されたTVシリーズ「Raising Dad」で主要キャストの1人として“エミリー・スチュワート”という役で出演し、2003年にはテレビ映画「レーシング・エンジェルズ」でも主要キャストに選ばれている。男性優位のモータースポーツ“ジュニアドラッグレース”の世界でトップに上り詰めたエンダーズ姉妹に、女性に負けていられないと手強いライバルたちが現れる。そんなエンダーズ姉妹の妹コートニーをラーソンが演じている。

2004年のコメディー映画「スリープオーバー」で商業映画に初出演。「スパイキッズ」シリーズに出演したアレクサ・ヴェガが主演を務め、イケてないヒロインたちが憧れのハイスクールライフを送るために人気者しか座れないランチスポットを巡ってライバルのグループと張り合うというストーリーで、ラーソンはライバルグループの1人“リズ”を演じた。同年、ジェニファー・ガーナー主演のロマンティック・コメディー「13ラブ30」にも出演。

実はこの後、2005年から音楽活動をスタートさせている。16歳のラーソンがリリースしたアルバム『Finally Out of P.E.』はシングル化された「She said」を含む全13曲を収録。キャッチーなポップ・ロックに乗せて、悩みや葛藤を含めたティーンのリアルな心情などを表現している。

2010年公開の映画「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」では、主人公スコットの元カノの“エンヴィー”役を担当し、劇中ではライブハウスで「Black Sheep」という曲を挑発的に歌唱するシーンも。こういうのもアーティスト活動をしていたことからつながった役だったと言えるだろう。音楽活動を本格的に行っていた期間は長くなかったようだが、音楽はずっと好きなようで、Instagramにテイラー・スウィフトやアリアナ・グランデ、オリヴィアロドリゴなどの曲をギターで弾き語りする動画をアップしている。

俳優業の話に戻ると、2009年から2011年にかけて放送されたトニ・コレット主演のテレビシリーズ「ユナイテッドステイツ・オブ・タラ」での、反抗しがちな娘ケイト役で広く知られるようになった。そして2012年の「21ジャンプストリート」で好演し、2013年の主演作「ショート・ターム」では問題を抱えるティーンエイジャーのためのグループホームのケアマネージャー“グレイス”を演じ、多くの賞を受賞し、高い評価を得た。

2015年、7年もの間一つの部屋に監禁されているヒロインと、その部屋の中しか知らない5歳の息子がたどる予測不能な運命を描いた映画「ルーム」に主演。この作品で、「第88回アカデミー賞」「第73回ゴールデングローブ賞」などで主演女優賞を受賞し、俳優としての評価がさらに高まった。

2017年には自身の出世作である「ショート・ターム」のダスティン・ダニエル・クレットン監督と再びタッグを組んだ「ガラスの城の約束」に主演。この作品ではニューヨークで自立して暮らすジャネットを演じており、関係を絶っていたホームレスの父親との再会をきっかけに本当の幸せをつかむための人生を再び歩き始める姿が描かれている。同年公開された映画「キングコング:髑髏島の巨神」では戦場カメラマンのメイソン・ウィーバーを熱演。この作品で、MCUで“ロキ”を演じるトム・ヒドルストン、ニック・フューリーを演じるサミュエル・L・ジャクソンと共演した。

■「キャプテン・マーベル」でMCU初参戦&主演

翌2018年に「キャプテン・マーベル」のキャロル・ダンヴァース/キャプテン・マーベル役でMCUに初登場。MCUでいえば2019年の「アベンジャーズ/エンドゲーム」、2021年の「シャン・チー/テン・リングスの伝説」、2023年の「マーベルズ」へとつながっていく。

この時期にも重要な作品がある。一つは2019年の「ユニコーン・ストア」。主人公のキットは、子どもの頃、ユニコーンの飼い主になることを夢見ていた。大人になったキットは芸術の道に進もうとするが芽が出ず、諦めて平凡な仕事に落ち着いた。そんな彼女に、昔からの夢をかなえられるチャンスが訪れた。それはユニコーンの世話係になるということ。ラーソンは、この作品で主演のみならず監督も務めており、長編映画監督デビュー作となった。この作品でもサミュエル・L・ジャクソンと共演しており、俳優同士の信頼関係の厚さも感じられる。

主演作ではないが、2020年に公開された映画「黒い司法 0%からの奇跡」も重要な作品。ブライアンスティーヴンソンのノンフィクション「黒い司法 死刑大国アメリカの冤罪と闘う」を原作にして、人種差別や冤罪(えんざい)を取り上げた社会派な作品で、弁護士のブライアンスティーヴンソンに協力するエバ・アンスリーを演じている。スティーヴンソンを演じているのは「ブラックパンサー」でエリック・キルモンガー役のマイケル・B・ジョーダンだ。

社会派のシリアスな作品からMCUスーパーヒーローまで、幅広い作品でいろんな役に挑戦し、音楽、そして映画監督など、豊かな才能も発揮。「マーベルズ」を楽しみつつ、過去の作品や楽曲などもぜひ味わってもらいたい。

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◆文=田中隆信

映画「マーベルズ」より/(C) 2024 Marvel