TVアニメ「SYNDUALITY Noir」(毎週月曜夜0:00-0:30ほか、テレ東ほか/ディズニープラスのスターで定額見放題独占配信)の第18話「Beyond the sky」が2月12日に放送・配信され、シエルを演じる青山なぎさの圧巻の演技力と歌唱力が存分に披露された。第1クールからただならぬ何かを抱えていそうなキャラクターとして、実際のところ敵か味方なのか?とやきもきさせてきたが、第17話のラスト、そして18話で本当の姿=スパイであることが明らかに。それでも最終的には主人公・カナタ(CV:大塚剛央)を取るという決断を下す、難しいキャラクターを青山が持ち前の見事な表現力で演じ切った。(以下、ネタバレがあります)

【写真】“彼女にしたい声優No.1”青山なぎさ、シエルのアイドル衣装でキュートな笑顔

■「SYNDUALITY Noir

同作は、バンダイナムコエンターテインメントバンダイナムコフィルムワークスBANDAI SPIRITSによる新規大型SFプロジェクト「SYNDUALITY」のアニメで、近未来を舞台にしたSFもの。西暦2242年。荒廃した地上でエネルギー資源を採掘する冒険者「ドリフター」になることを夢見る青年・カナタはある日、すご腕のドリフター・トキオ(CV:小林裕介)と共に廃虚となったミュージアムを捜索中、記憶を失ったメイガス・ノワール(CV:古賀葵)を発見する。ノワールは日常生活に必要なスキルが欠如しているポンコツメイガスだったが、エンダーズとの戦闘では抜群の能力を発揮。カナタはノワールをパートナーとして迎え、ドリフターとしての道を歩み始める、というストーリー。

第18話ではシエルの裏切りによって、カナタは囚われの身となってしまう。その後、シエルは自身のマスターであるヴァイスハイト(CV:梶裕貴)からカナタの始末を命じられる…というストーリーなのだが、かつてないシエルフィーチャー回となっており、シエルの過去が明かされた他、彼女が抱くさまざまな感情が描かれ、声を担当する青山の声優としてのポテンシャルを存分に堪能できる回となった。

人気声優がひしめく現代において、“彼女にしたい声優No.1”ともいわれる青山は、声優・歌手活動だけでなく、2月28日(水)には紙の1st写真集も出版するほど恵まれた美貌を誇る。そんな彼女の魅力も相まって今作で演じるシエルも人気キャラクターであり、1月31日にはシエルにフィーチャーした「シエル推し活トークイベント」も開催。シエルのアイドル衣装で登壇した青山がファンと交流し、多くのファンを歓喜させた。

青山の演技について取り上げると、第18話ではこれまでスパイとしてカナタの側にいたシエルが、ヴァイスハイトのメイガスとしての立ち居振る舞いを見せるのだが、青山はその切り替えをギャップの大きさで見事に表現。感情を失くして、まさに任務を遂行するだけの機械のように演じ、見る者の背筋を凍らせた。トーンを落として棒読みのように演じるのではなく、声の持つ“温度”を下げる演じ方で機械的な冷たさを表しているため、会話をしていても「どこまでいっても交わることができない」というような絶望感すら覚える。

一方で、任務と本心の間で揺れ動く“葛藤”や、明かされた自身の過去とヴァイスハイトとの関係性を起因とする“諦め”といった“人間的な表現”もふんだんに披露。本当の気持ちを押し殺して任務を遂行しなければならないこと、本当の気持ちを持つことですらタブーであるというメイガスゆえの苦しみと向き合いながらも、人と同じように接してくれるカナタの力になりたいという個人の思いを優先することを選び、その先は自身の破滅が待っていることを知りつつも自分らしく生きる選択をするという“精神的な自立の物語”を繊細な演技で紡いでいる。

■“精神的な自立”を見事に表現

そんな中で、特筆すべきはシエルがしっかり者でお姉さん的なキャラクターであるというところだ。青山は「嫁感が半端ないですよね。カナタも安心しきっちゃって、シエルのスパイ感がない」と語っていたが、シエルは身の回りのことを何もできないノワールと対極にあるキャラクターで、何でも知っていて、世話を焼いてくれて、いつもそっとカナタたちの背中を押してくれるような役どころ。大人びた印象のキャラクターの成長を描かなければならず、成長の余地が少ない中での演技となるためハードルが高いのだが、青山は“声に通わせる血の量”をコントロールする形で“精神的な自立”を見事に表した。

激情に振り回されたり、声を荒げたりといったような表層的な表現に頼るのではなく、せりふ一言一言に入れる熱量を調整することで感情の抑揚を表現しているのだ。

また、青山といえば2020年12月に「ラブライブ!スーパースター!!」の一般公募オーディションに合格し、2021年には葉月恋役で声優デビュー。スクールアイドルグループ・Liella!の一員として“アイドル歌手”としての一面も持ち合わせる。そんな彼女の今作での歌唱シーンについては、歌声の美しさもさることながら、やはり群を抜く表現力に触れざるを得ない。

キャリアの運転席で鼻歌を歌うシーンや、制作途中の新曲を歌うシーン、完成した新曲を披露してメイガススキルを発動するシーンなど、シーンごとにその時のシエルの感情を歌に乗せて歌っているため、歌でありながらしっかりとした感情表現として成立させている。決まったメロディーと歌詞でありながらも、「迷い」や「決意」「挑戦」「気合」「悲哀」「切なさ」といった感情を、歌い方でここまで雄弁に語れるものかと驚かされる。シーンにおいてはただの挿入歌ではなく、シエルの一つの感情表現として使われていることで、作品の深みを創出しているといえるだろう。

今作においては演技だけでなく歌唱パートでも圧巻のポテンシャルを披露した青山に対し、SNS上では「なぎちゃんの歌唱力がこの上なくいかされている」「青山なぎささん、凄まじいキャラを演ってるな…」「めちゃくちゃ感情伝わった」と絶賛する声が多く上がった。

第18話のラストでシエルは動かなくなってしまったが、今後シエル、そして青山の演技が見られるのか、非常に気になるところだ。

◆文=原田健

青山なぎさが演じるメイガス・シエル/(C)SYNDUALITY Noir Committee