Xやショート動画で大流行中の“猫ミーム”。登場人物を猫に置き換え、日常のおもしろいエピソードを再現したショート動画がムーブメントとなっている。ただ、猫ミーム自体は昔から存在し、ネット上で定期的に流行を繰り返している。今回は、猫ミームの歴史を振り返りつつ、現在流行っている猫ミームについて分析していこう。

参考:【写真】月残業100時間の会社員時代のエピソードを再現した猫ミーム

2ちゃんねるから逆輸入まで 猫ミームの歴史は深い

 猫ミームと一口に言っても、膨大な種類が存在する。海外が発祥の猫ミームも多いが、今回は国内で話題になったものを中心に見ていこう。2000年前後、電子掲示板2ちゃんねる』(現在は5ちゃんねる)で流行したのが“ギコ猫”だ。ギコ猫は、文字を羅列してイラストのように見せるアスキーアートの一種で、「ゴルァ」「逝ってよし」などのセリフを吐いているものが有名だ。かわいらしい見た目と発言の過激さのギャップが、当時のネットカルチャーにマッチしていたのではないだろうか。

 そして2013~14年ごろに流行したのが“宇宙猫”。宇宙の画像を背景にし、目を丸くした猫の画像の組み合わせは、誰しも一度は目にしたことがあるのではないだろうか。あっけに取られたような表情と壮大な宇宙の背景がシュールさを生み、Xなどで利用されるようになる。圧倒されたときや理解不能な状態をあらわす際に使用され、「宇宙猫顔」「宇宙猫状態」というようなネットスラングとしても使われるようになった。海外では「SpaceCat」という愛称で、国内で宇宙猫がミーム化する少し前から話題になっていた。

 2018年ごろには“仕事猫”が流行。仕事猫とは、ヘルメットをかぶり「ヨシ!」というセリフを発しているイラストがミーム化したものだ。仕事猫は、イラストレーターのくまねこのポストが発祥となっている。

 このイラストが“現場猫”としてネット上で流行し、その後“仕事猫”として正式にキャラクターとなった。現場猫は黄色いヘルメットを被っており、仕事猫は白いヘルメットを被っているのが見分け方となっている。ミームとなった現場猫は、問題がありそうなシチュエーションに向かって「ヨシ!」と指差し確認をするという使われ方をされていることが多く、このことから不安な状況を”現場猫案件”と呼ぶこともある。

 正式にくまねこから生み出された仕事猫は現在大人気キャラクターとなっており、ミーム化したキャラクターを公式のキャラクターへ逆輸入するという、稀有な道すじを辿った猫ミームとなった。

・ショート動画全盛期、ムーブメントとなっている“猫ミーム”とは

 そして時代は追いつき、現代。XやTikTokを中心としたショート動画で、猫ミームはふたたびムーブメントを起こしている。いままでの猫ミームのように、静止画で表現をするという使い方ではなく、現在バズっているのはあくまで動画の猫となっている。

 使い方としては、素材となる猫の動画を使い投稿者自身のエピソードを再現したショート動画を、XやTikTokといったプラットフォームに投稿するというものだ。数ある素材のなかでもとくによく使われている素材の猫動画には、Christellの「Dubidubidu(ドゥビドゥビドゥ)」という楽曲が使用されている。20年前の楽曲にも関わらず、猫ミームの影響でSpotifyのバイラルチャートで1位を記録しているのだ(2024年2月10日現在)。

 すでに多くのインフルエンサーやクリエイターが、猫ミームを投稿し話題になっている。猫ミームを使うメリットとしては、顔出しをしないまま自身のエピソードを紹介できることだろう。一般人や顔出しをしていないクリエイターにとっては、素性を明かすことなくおもしろいコンテンツを提供できるというメリットがある。昔に比べ、配信者やVTuberなど顔出しをしていない著名人が増えた状況にマッチしているのも、動画の猫ミームがバズっている要因だろう。

 今回紹介した猫ミームは一部にすぎず、世のなかには数え切れないほどの猫ミームが存在する。国内だけ見ても、アスキーアート、画像、イラスト、動画など、その時代に勢力を持つプラットフォームに合わせた猫ミームが、定期的にバズっているように感じる。

 いまはTikTokやYouTubeショートなどが台頭している時代だが、この先新たなプラットフォームがネット上に誕生したら、その時代に合わせた猫ミームが、また生まれるのだろう。見た目の愛くるしさと、絶妙にシュールな表情がネットの世界と相性がいいからこそ、猫ミームはバズり続ける。またいつか、新たな猫ミームが生まれるその日を楽しみにしたい。

はるまきもえ)

届木ウカXより