先週2月11日に、招待制のゲーム大会『第3回Crazy Raccoon Cup STREET FIGHTER 6』が開催された。同大会はプロeスポーツチーム・Crazy Raccoonが主催し、ストリーマーやVTuberなどを招待しておこなわれる大会だ。

【動画】葛葉がマスターに到達するまでの軌跡

 出場選手・コーチ陣は、SHAKA、sasatikk、葛葉、叶、赤見かるび、獅白ぼたん、おぼ、わいわいドンピシャといった以前出場していた面々にくわえて、昨年『ストリートファイター6スト6)』が盛り上がるなかでプレイしつづけ、ランク上位へとのしあがった奈羅花、如月れん、渡会雲雀らが新たにラインナップされた。

 それぞれの個人配信にくわえて、ホロライブ戌神ころねやプロ格闘ゲーマー・ひぐちなど、同大会および『スト6』に関わりの深い面々が応援配信を実施、こちらも大いに盛り上がったようだ。同大会の視聴者数は数十万近くにのぼり、SNSでは関連ワードが上位に食い込むなど、三連休中に大きな注目を集めることになった。

 本大会は2月3日に開催が告知され、5日にチーム分けが発表されると、SNSを中心にファンからさまざまな期待の声があがった。

 今大会の勝者を予測するファンのなかで、大きな関心ごととなったのは初心者として挑む4人の出場者について。人気ストリーマー・ファン太、スタンミ、じゃすぱーに加え、にじさんじから不破湊らが参加。4人とも配信中に『スト6』をプレイしたことがなかったため、彼らがどれだけ成長できるかを見守る者も多くいたであろう

 今回は、そんな彼らの成長ぶりを振り返るとともに、格闘ゲームならではの熱いドラマ・名シーンについても記していこう。

■メンバー発表日からさっそく練習をスタート 4人の“初心者枠”

 前段でも触れたとおり、今大会は各チームに1名づつ初心者の参加者が割り振られていた。それがファン太、スタンミ、ジャスパー不破湊である。

 最初に紹介する不破湊は、他タイトルでの経験を生かして安定した成長を見せてくれた。過去に格闘ゲームMARVEL VS. CAPCOM」シリーズでスパイダーマンを使ってプレイしていたことがあり、『大乱闘スマッシュブラザーズ 』ではにじさんじ内でも強豪プレイヤーとして知られている。

 いずれのゲームも『スト6』とは操作感やゲーム性が少し異なるものの、それでも1対1の格闘ゲーム対戦のムードや経験を持つというのはアドバンテージだろう。

 さっそく配信で練習を始めると「昨日ゲームをダウンロードしました」と話しつつ、初めて『スト6』を見るリスナーに向けて簡単なゲーム説明をしていく。

「ケンはみんな使うじゃん? せっかくだし違うのやりたいよね?」

 そう話しながら不破が選んだキャラクターは、ケンと並んでシリーズの顔役として知られるリュウ。前日にすこし触っただけでクラシック操作でいきなりコンボ技を決めるなど、初心者にありがちな“バタバタ感”があまり無いプレイをみせる。認定戦を終えるとシルバー1になり、最後にはシルバー4へと進むなど、ポテンシャルの高さを見せつけた。

 次に紹介するストリーマー・ファン太は、一応『スト6』のプレイ経験がある人物。とはいえ半年以上前に触ってから久々のプレイで、自身のランクもほとんど覚えていない状況からスタートした。

 直前まで「ストグラ」(ストリーマーが集まる『GTA5』のコミュニティサーバー)で「“マ”と“ホ”が戦ったらどっちが強い?」と謎かけのように周囲に聞いて回り、初日の配信でもどのキャラを使うか決まらぬまま2月8日のカスタム初日を迎えることになった。

 ちなみに“マ”と“ホ”とは、以前まで使用していた「マノン」にするか、新たに「エドモンド本田」を練習するかの調査であったようだ。最終的にはチームの大将・かずのこコーチストーム久保に相談し、「簡単な方がいいですか? ちゃんとやりたいですか?」との問いに「勝ちたいんですよ。本田で勝ちに近づくのであれば是非お願いしたい」と答え、本田をプレイすることになった。

 格闘ゲームや『スト6』自体の経験がある不破・ファン太の2人は出場に関して焦りを感じることはあまりなかったが、逆に焦りの色がそのまま出ていたのはじゃすぱーとスタンミの2人だった。

 スタンミとじゃすぱーは、『League of Legends』を共通項に知り合ったストリーマー・コミュニティ「げまげま」のメンバーであり、古くから気心知れる間柄でもある。それゆえ互いに「絶対にこいつには負けられない」と意気込みを語っていたのだ。

 スタンミはチームの大将・しゅーとと共に初の練習配信をスタート。スタンミはこの『スト6』が初めての格闘ゲームであり、初プレイにして大舞台に立たなければならないというプレッシャーも重なってか、プロとして一線級の活躍をするしゅーとに対して「上手い人なんですか?」と聞いてしまうほどの焦りっぷりを披露。

 その後は歩き方からガード、攻撃ボタンの一つ一つに至るまでしゅーとに教わるスタンミ。モダン操作での必殺技を教えてもらうと「うおおお! すっげぇ!」と興奮しきりだった。

 そのあともゲージの説明などを踏まえながらキャラクターを動かし、気になるポイントがあればコーチ役であるしゅーとに逐一質問し、基礎を学んでいく。その後しゅーとと別れてもじっとプレイを続け、なんと10時間以上も練習を重ねることになった。

 そんなスタンミに負けじと練習していったのが、ライバルであるじゃすぱーだ。公式からメンバーが発表されたタイミングでちょうど配信をしており、リスナーから「CRカップおめでとう」「スト6やらないの?」とコメントが相次ぎ、すぐに出場メンバーを確認したじゃすぱー。

 「みんなオレみたいに初心者じゃないの?」「このモデルの人、コスプレイヤーの方はやったことないでしょ?(スタンミを指しながら)」などと冗談をはさみつつ、『ストリートファイター6』の経験について「ほんとうにやったことない。ガチ初見。いまから練習を始めていい?」とプレイすることに。

 スタンミ同様に操作方法や必殺技の出し方まで練習していったじゃすぱーだが、両者の大きな違いは、じゃすぱーはゲーム内のチュートリアルとともに、配信を見ているリスナーのコメントを頼りにしながら操作方法を覚えていったことにある。

 ひとまず一通りのプレイ方法を覚えた彼は、トレーニングモードのCPUを相手にしながら10時間以上に渡ってプレイ。「イメージはできてるのに出ない」と悩みつつも、手探りで手慣らししていった。

 そんな2人は、リスナーやその場に居合わせたメンバーからお互いのランクや様子を聞いて「負けてられないでしょ」と言わんばかりに精を出すという状況に。競うように配信・練習にも熱を込めていくこととなったのだ。

 結果、じゃすぱーとスタンミ、それにファン太を含めた3人は10時間前後の配信を連日のようにつづけることとなる。配信こそしていなかったものの、不破も同様に配信外で相当練習を積んでいることが目に見えてわかるほど、素晴らしい上達ぶりをみせた。

 そのため初心者4人が務める先鋒戦は、実力上位・下位がまったくハッキリしない、まさに実力伯仲・五分五分の戦いが予想され、盛り上がりをみせていたといえよう。

■最初期から現在までのストリーマー×プロゲーマーの師弟関係がキモに

 続いては全体を見ていこう。各チームのメンバーは本大会に向けて練習を重ねていったわけだが、一つ重要なキーとなったのは「師弟関係」だったように思える。

 この1年ほどのあいだで格闘ゲーマー・ストリーマー・VTuberらがそれぞれ交流を深めた結果、次鋒・中堅・副将のなかには格闘ゲーマーの教えを受け、高いレベルで研鑽を積んだ者が多かったのだ。

 ゲームが発売したばかりの頃におこなわれた初回大会では出場メンバーの大半はランクがゴールドやシルバーランク程度だったが、約10ヶ月経過した本大会では(初心者4名を除けば)ダイヤモンドランクが多数を占め、副将はすべてマスターランクという状況。「高レベルな対戦会」と呼んで差し支えのない、見応えのある大会となったのだ。

 そのメンバーのなかでも、今大会に出場した三人称・ドンピシャコーチ役であるSaishunkan Sol 熊本所属のひぐち、この2人はもっとも深い師弟関係をもつ組み合わせであろう。

 2023年6月25日に開催された『第1回 Crazy Raccoon Cup STREET FIGHTER 6』にドンピシャが出場した際に、コーチ役としてひぐちと出会って以来、ここまで二人三脚で続いてきた関係だ。以降『REJECT FIGHT NIGHT Round2』『FAVCUP online SF6 #8』『第29回 iXA CUP』とさまざまな格闘ゲーム大会に出場するドンピシャを、ひぐちはコーチングしてきた。

 「日本一のガイル使い」と呼び声高い師匠・ひぐちと弟子・ドンピシャのコンビは『スト6』配信でもおなじみとなり、この大会でも2人は練習をともにしていたのだ。

 ほかにも、おぼ&ハイタニ、如月れん&フェンリっち獅白ぼたん&稲葉/ACQUAあくあ)、奈羅花&よっさん/マゴ、叶&Reiketsu/あきらなど、長く続く師弟関係を背負って今大会に臨んだ選手が多かった。

 また初出場となったメンバーにもプロプレイヤーや大将がしっかりとコーチングをおこない、『スト6』上級者であるリスナーをプライベートマッチに呼び寄せて対戦・研究・指導する流れが生まれたことで、今大会は過去と比較してもかなり高いレベルの試合が繰り広げられることとなったのだ。

 一方、前述したような二人三脚で本大会に臨む師弟もいれば、師匠と弟子とで闘うことになった2人もいる。にじさんじ・葛葉とボンちゃんだ。

 第1回大会に出場した葛葉は、チームメイト・大将だった梅原大吾からコーチとしてボンちゃん、Nobleの2人を紹介されて『スト6』の練習をスタートした。

 特に前作『ストリートファイター5』をプレイした際にはボンちゃんの動画をかなり参考にしており、今作でルークを使うと決めた際にもボンちゃんコンボ動画をみて参考にしていた(始めたてだったため当時は「いやこんなん無理無理!」と半ば諦めていたが)。

 第1回大会を通じてボンちゃんの教えを受けた葛葉は、大会後もソロ配信でマスターランクへと到達し、折を見てプロゲーマーやストリーマーらとチームを組み大会に出場してきた。また自身が主催する『KZH CUP』や『にじさんじ6周年企画』にも出場するなど、この1年ですっかり「にじさんじの『スト6』強者」の看板を背負う1人となったのだ。

 そして迎えたこの第3回大会では、「老師」と慕うようになったボンちゃんとの対決が実現。本人が口に出すことこそなかったが、並々ならぬ気持ちで臨んだことは想像に難くない。

 なお葛葉の仕上がりはというと、今大会では世界大会優勝経験もある格闘ゲーマー・カワノをコーチにして練習を組んでいたが、カワノの技・動きにもしっかりとついていき、3-0と勝利を収めることすらあった。カワノが普段の持ちキャラではないうえでの対戦とはいえ、プロにも勝利を収めるほどに仕上がっていたようだ。

■見どころだらけだった各4チームのハイライト

 大会結果を先に記せば、しゅーと、葛葉、わいわい、おぼ、スタンミの「スペシャルウルトラスーパーズ」が優勝を果たした。大会の主催を務めるCrazy Raccoonへの加入が発表されたしゅーとが、自身の新たな門出を飾った格好となったのだ。

 このチームの特徴といえば、ふだんから口数が多くにぎやかな面々が集まっていた点だろう。5人が揃うと練習中・試合中・休憩中と常にガヤガヤとした空気になっており、笑いの絶えないチームであった。

 「28歳にして一番の最高出力がきた!」とアピールしていたスタンミが勝利をもぎ取れば、「オレ史上もっとも強い日です」と自己評価した葛葉は、SHAKAドンピシャ、sasatikkと並んだ副将戦で全勝を収めてチームに貢献。

 かずのこどぐら、師匠・ボンちゃんとの「大将挑戦戦」では、1戦先勝方式でかずのこボンちゃんから1ラウンドを奪い、“葛葉史上最高の葛葉”が大金星を掴むまであと1Rと迫ったのは非常にドラマティックであった。

 普段はひねった言葉選びで笑わせることの多い葛葉だが、格ゲーの対戦となると一転して口数が減り、眼の前の戦いに思いっきり集中していく姿をみせてくれる。これまでプレイしてきたチーム対戦ゲームやバトルロワイヤルゲームと異なり、格闘ゲームは完全に自身と相手の1対1の対戦になる。ゾーンに入り込んで戦えるシチュエーションというのは、彼としてもうれしいことなのかもしれない。

 この日の配信タイトルに「教えてもらった全てをぶつける」という真っ直ぐな言葉をつけたあたり、尋常じゃない気持ちを滾らせていて本大会を迎えたのが伝わってくる。

 そして師匠・ボンちゃんが葛葉を「強くなったね」と褒め称え、その実力が確かなものであるとハッキリ示すことができた、充実の大会だったといえよう。

 そんな師匠・ボンちゃんのもとには、葛葉の所属するにじさんじから3人、不破、渡会、叶に加えてドンピシャとが揃い、「おじさんじ」としてチームを組んだ。

 明るく周囲を盛り上げる不破と渡会の2人が揃っていたこともあり、ぎこちないコミュニケーションを払拭するどころか、ネガティブなムードに陥ることもほとんどなくスクリム・大会へと進んでいったのはさすがといったところ。

 特に渡会がバーンアウト状態に入ったキャラクターを「脱ぐ」と形容する口癖がチーム内に広がると、バトル中や練習でも「脱ぐ」「脱がす」「脱がされた」と言い合って笑いあうシーンが生まれた。

 男5人で集まっているからかちょっとした口癖がまるで思春期男子高校生のようなノリで広がっていった流れは、ファンにとって微笑ましいものに映ったのではないだろうか。

 本大会中は選手・コーチ陣合わせて最大12人の面々が同じボイスチャットで会話し、相手の対策について言葉をかわしたり、駆け引きの一つ一つに一喜一憂したりと、男12人の熱気が非常にダイレクトに伝わってきた。

 初心者枠として呼ばれた不破は「クラシック操作で大丈夫か?」という心配の声を蹴散らすほどに実力を磨き上げ、個人成績2勝1敗でチームの決勝進出に力を添えた。

 惜しくも準優勝となったが、にじさんじの面々が格闘ゲーマーらと繋がりをより強くしたという意味で、今後より面白い進展が起こっても不思議ではないかも知れない。

 決勝に残れなかった2チームは、「じゃすとインパクト」と「特選中落ちかるび」だった。

 じゃすぱー、獅白ぼたん奈羅花SHAKAどぐらの5人によるチーム「じゃすとインパクト」内でも、やはりじゃすぱーとスタンミのライバル勝負に注目が集まった。第3戦で相まみえた2人の真っ向勝負は2-1でじゃすぱーの勝利となった。雌雄を決した直後にはお互いに大声をあげ、悲喜こもごもに気持ちを爆発させていた。

 そんな2人以上に感情があふれ出る様子を見せたのが、ホロライブ獅白ぼたんであった。

 これまで2度に渡って『Crazy Raccoon Cup STREET FIGHTER 6』に出場してきたが、すべて敗北を喫していた彼女。いつの間にか口癖のように「どぐらさんに初勝利を見せたい」「1勝をみせるまでやめられない」と話すようになっていた彼女に、ようやくチャンスが巡ってきたのだった。

 第2戦に当たった赤見かるびに対して初勝利を挙げ、「やった! 勝ったぁ!!」と喜ぶ獅白。大会を視聴していた筆者は、この時点では単に喜んでいるだけかと思っていた。だが、チームのボイスチャットに戻ってチームメンバーやコーチたちの声を聞いた瞬間に、心のどこかがフッと緩んだのだろう、ぼたんは自分でも止めることができないほどに泣いたのだった。

 人目をはばからず……とはまさにこのこと。初めて見る姿に動揺する奈羅花、すこし笑いながら様子を見守るSHAKAだるまいずごっど、「嬉し泣きはなんぼでもいいのよ」と声をかけるコーチACQUAと、メンバーたちが様々に彼女をいたわるあたたかな雰囲気が生まれた。

 前回大会で涙を隠せなかった彼女は、今回も涙を隠すことはできなかったが、悔し涙から嬉し涙へと変わったのだ。

 また奈羅花コーチとして帯同したマゴが、持ち前のフランクな性格で的確なアドバイスとお笑いを提供し、スクリム・本大会を通してチーム全体を盛り上げる役となっていたのは頼もしい限りだった。「運動会にやってきたお父さん」「まるで父兄参観や保護者会」とツッコまれつつ、別け隔てなく言葉をかわしていく姿に彼の人間力を見た気がした。

 また、ファン太、赤見かるび、如月れん、sasatikk、かずのこによるチームの「特選中落ちかるび」は、ひとつひとつの差し合いで有利を重ねることさえできていれば、優勝していたのは彼らだったのではないか? と思えるほどだった。そう、今大会は全チームの実力が非常に拮抗した大会だったことは記しておきたい。

 チームメンバーの大半が穏やかかつ落ち着いたメンバーで、イジりやすいかるびにメンバーたちがちょっかいをかけても、大声で煽り合うようなことがほとんど起こらなかったほどの温和なムードであった。

 かずのこ、sasatikkともに様々なゲームをプレイするタイプであり、ある程度理論的にゲームをやりこんでいくタイプということで2人の会話に期待を持っていたリスナーは多いだろう。実際、面白いかみ合わせを見せてくれたのだった。

 対戦前後のコーチとの練習時間でさえも、和やかに会話しつつ黙々と練習を重ねていくメンバーたち。非常に優等生的な面々が揃ったともいえるが、やはり大会本番となれば別。

 格ゲー大会に初めて出場する如月れんは、緊張しいだという話は以前から話題になっていた。しかし本番はというと、初戦でチームを応援しているときから声が普段よりも高く、いつものおとなしげでクールな姿ではなかった。

 ラウンド間にアドバイスを受けているときに「アホほど緊張する!」と口走り、戦っているあいだにも「緊張しすぎてラッシュが出ない」と自己分析を交え、なんとか勝利を収めれば「やあぁったああ!!」と、普段なかなかみせない歓喜の声をあげる彼女の姿があった。

 なにより、sasatikkは前回大会で大将・どぐらに勝利して金星をあげていたこともあり、「sasatikk vs どぐら」の対戦はファン・出場者全員が注目するカードとなった。ふたたびどぐらを追い詰めるsasatikkに対し、実況・解説にくわえて観戦していた他のプロすらも驚くカウンター技で勝利をもぎとったどぐら。もはや「CRカップの名物」という声があがるほどの素晴らしいエンタメとなっていた。

■はやくも次大会が? 今後もまだまだ注目すべきことが起こりそう

 最後に、この先に開催される“かもしれない”大会についても記しておこう。

 大会終了直後、副将を務めた葛葉、SHAKA、sasatikk、ドンピシャの4人が改めて集まり、副将同士の総当たり戦をしつつ、大会を振り返る感想戦をしていた。

 「大将挑戦戦」で惜しいところまでいった葛葉とsasatikkは自身のプレイと心理戦を語りながら、「あのときあの選択をしていれば……」と漏らしていた。凄腕にまで成長したストリーマーやVTuberが、何人ものプロゲーマー相手に土をつけるという未来が、「もしかすればすぐそこまで来ているのでは」ということを予感させてくれたのだ。

 くわえて、過去の配信中に話題があがっていた「師弟杯」に触れ、SHAKAドンピシャに出場について話を振り、もっとも早くていつごろ開催されるのか? といった具体的な話まで明かしていた。「師匠に対して弟子が多いときはどうする? 弟子杯でもさきに開いて決めてもらう?」などと、出場メンバーの決め方までオープンに話していたが、実際に開催されるとなれば、どのような形式であっても盛り上がりそうだ。

 これとは別に、3月24日に有明GYM-EXにてRAGEによる『STREET FIGHTER 6』大会がオフライン開催されることが発表されている。プロシーンだけでなく、ストリーマー~VTuberシーンを中心とした大会が昨年よりも数多く開催されそうな予感がヒシヒシとしてくる。

 ファンが期待しているのは、自分たちと近しい存在でもあるストリーマーやVTuberらが、プロゲーマーと同レベルにまで腕をあげ、白熱した試合やドラマを見せてくれることにある。

 筆者が以前、梅原大吾に取材した際のことだ。梅原はそのとき、「格闘ゲームの世界に必要なのは“キャラクターのあるプレイヤー”」だと語っていた。

 格闘ゲーマーらは賞金のかかった大会に出場して実力を示しつつ、個性豊かでときに突き抜けすぎた振る舞いをみせることもあり、それらが絡まり合って人気が強まっていくこともある。この流れを考えると、これまで活躍してきた格闘ゲーマーらの強烈な個性は、配信者やストリーマーにも共通する点であると言えなくもない。

 配信者 兼 プロ格闘ゲーマーとして第一線を張れる若きスターは、いまの盛り上がりのなかから生まれるかもしれない。数年後、もしかすれば“数カ月後に突如”現れるかもしれないのだ。

(文=草野虹)

『ストリートファイター6』