豪雪地の道路は区画線も雪に埋もれ、視界が極めて悪くなります。そうしたなか、雪のなかで緑色に光る区画線を発見。調べてみると、雪がどんなに積もっても見えにくくなることがない線だとわかりました

青森県内の東北道で遭遇した未来的な光景

豪雪地では道路の車線も何もかもが雪に埋もれ、どこを走っているのか分からなくなるようなケースもしばしばあります。そうしたなか、筆者(武若雅哉:軍事フォトライター)は2024年1月末から2月初旬にかけ取材のため向かった青森県で、「光る区画線」を発見しました。

「光る区画線」を見かけたのは東北道でした。この日は降雪が少なく、青森県内の市街地では普通に道路のアスファルトが見えるほど雪がない状態。東北道で最初に光る区画線をみたときも、「路側帯に沿って緑色のライトが光っているなぁ」くらいにしか感じていませんでした。

しかし雪が積もり、青森市内が一面の銀世界に一変し、夜になっても、この緑色の路側帯は光が衰えることなく、同じように存在感を放っていたのです。

なぜ、こんなに雪降る夜中でも目立つのか。降り積もった雪に負けず、明るさを維持できる秘訣は何なのか、取材後に調べてみたところ、このライトの正体が判明しました。

これは、NEXCO東日本と積水樹脂株式会社が共同で開発した「帯状ガイドライト」というものです。雪地域の夜間における視程障害時、つまり雪によってアスファルトに描かれた路側帯の白線(区画線)が見えなくなったさいに、その位置がわかるように緑色のLEDライトで区画線を表示するものだといいます。

路肩を避けて中央寄りを皆が走ると…

降雪によって路側帯の区画線などが見えにくくなると、ドライバーは脱輪などを恐れて、右寄りを走る傾向がありました。場合によっては片側2車線の中央付近を走るといった状況もあったといいます。

積雪直後に1台でも道路の中央寄りを走ると、そこに轍(わだち)ができるため、後続車も車線の中央寄りを走らざるを得ない状況に陥ります。すると、走行車線を走るクルマと、追越車線を走るクルマの左右の間隔が極めて狭くなり、追い越しする際に車体同士が接触してしまう恐れが常にあったのだそうです。

特に、トラックなどの大型車両を追い越したり、逆に追い越されたりするときには、トラックが発する風圧によって、一般的な乗用車は左右に大きく振られることになります。

ただでさえ路面の凍結によって不安定で滑りやすく、先行車が作った轍に沿って走っているところ、さらにトラックの風圧に煽られたとなれば、最悪スリップする可能性もあります。こういった危険な状況を改善するために誕生したのが「帯状ガイドライト」です。

これは、幅35cm、照射距離20mの常時発光型の緑色LEDを搭載した装置で、緑色のラインを地上3.5mの高さから路側帯に沿って斜めに照射し続けています。これにより、街灯が少なく薄暗い山間部の高速道路でも、降雪時にハッキリと路側帯の位置を確認することができます。

場合によっては、急激な天候の悪化によって一気に周囲の状況がわからなくなる時もあるでしょう。そんな時でも、この緑色のライトを見るだけで、どこを走れば良いのか一目瞭然です。

すでに400基以上を設置済み

また、この緑色のLEDライトはドライバーの視線を自然に誘導するため、悪天候であってもドライバーに走行位置を示してくれます。

実際に走ってみてわかったのは、ガイドライトがあることで、ドライバーが自然と路側帯を意識して走ることができるため、走行車線と追越車線に適度な間隔を保った轍が作られるということ。思わず「なんて便利なんだ!」と口に出してしまうほど効果的な装置でした。

なお、地上3.5mの高さから照射しているため、極端な話をすれば積雪が3mあっても路側帯付近を示すことが可能なのが、このガイドライトの特徴です。

筆者がX(旧Twitter)に写真付きで投稿したところ、瞬く間に拡散され、「わかりやすい!」「これは良い!」「○○道路にも欲しい!」といった声が多くポストされました。

NEXCO東日本によると、帯状ガイドライトは降雪地域を中心に2023年4月現在で計361基設置しているとのこと。なお、NEXCO東日本以外にも、公共団体や民間会社なども導入しており、全国には442基(2023年4月現在)あるそうです。

とはいえ、雪道は非常に滑りやすく危険です。安全な速度と車間距離を保つことはもちろんのこと、運転スキルやスタッドレスタイヤの性能を過信せず、急が付く運転操作を控え、安全第一で運転することに心掛ける必要があるのは、言うまでもありません。

青森県内の東北道で見られた「光る区画線」(武若雅哉撮影)。