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所有歴3年、EVについて振り返る

EV(電気自動車)の普及は、ジェットコースターのように波乱に満ちている。

【画像】日産リーフは現行型も大人気、電動化の進む英国【日産リーフを写真で見る】 全20枚

ゼロ・エミッション車の普及を目的とした政府の補助金が出たり消えたりする一方で、販売価格は概して高止まりしている。そして、筆者(英国人)自身がEVを所有するようになって3年が経った今、もっと安くEVを乗り続ける方法を見つけたいと思うようになった。

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EVのある生活とはどんなものか、電動化が叫ばれる英国で実践してみた。    AUTOCAR

先に断っておくが、この記事は伝道的な売り込みではない。EVは万人向けのものではない。しかし、日常的な運転には向いている。

筆者の家庭では、自分と妻のために2021年初めに2台のEVを購入した。散々言われていることだが、EVは底なしのトルクと低重心で、運転するのが楽しいと思う。ガソリンスタンドにも行かなくて済む。

ここでは、筆者がEVに乗り換えた理由、かかった費用、中古車の探し方について紹介したい。

EVを買うのにいくらかかった?

2021年初頭にはまだ英国政府の補助金が残っており、それに加えてお得なキャンペーンがあったため、筆者にとって「エンジン車との価格差」はほぼ中和された。ヒョンデ・コナ・エレクトリックやキアeニロといった、長距離を走れる手頃なEVが登場したことも切り替えの決め手だった。

そこで筆者は、手持ちのガソリン車とディーゼル車をキアeニロとルノー・ゾエZE50 R135 GTラインに乗り換えた。ゾエは主に自宅近辺での使用を想定していたが、どちらのクルマでも長い距離を走れるようにしておきたかったので、一番大きな52kWh(使用可能容量)のバッテリーを選んだ。

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ルノー・ゾエ    AUTOCAR

バッテリーのコストはEVの総価格の40%にもなると言われているので、個人的にはこの選択が「失敗」だった。使わないバッテリー容量を買うのは無駄である。

とは言っても、今回はそれなりにうまく条件が重なり、総所有コストを抑えることができている。

キアの場合、それまでのディーゼル車(2012年式BMW X5 xドライブ40d Mスポーツ)にかかっていた多額の燃料代、税金、保険料とは対照的に、6km/kWhと電費が良く、税金も安い。

ルノーの方は、フォード・プーマ1.0エコブーストからの買い替えだったため、それほど印象的な違いはないが、それでも長期的には意味があった。

筆者は2台とも3000ポンド(約55万円)の補助金を利用し、PCPで購入した。PCPとは、個人向けのリース契約のこと。ルノーの場合は補助金をそのまま頭金としたが、キアの場合は月々の支払いを抑えるためにかなりの頭金を追加した。

EVは安く買えないの?

バッテリーの大きすぎたルノー・ゾエの代わりとして、筆者は安いEVを探し始めた。候補はいくつかある。特に英国で支持を集めているのは、2012年に発売された旧型(ZE0)の日産リーフだ。BMW i3も検討してみたが、価格はかなり高い。

リーフは見た目の好みが別れてしまうかもしれないし、空冷式24kWhバッテリーの航続距離もそこそこなので、長距離の移動には向かないだろう。しかし、よくできていて、室内が広く、通勤やちょっとした移動には最適だ。

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初代日産リーフ    AUTOCAR

また、インストゥルメント・ディスプレイには12本のバーでバッテリーの健康状態が表示される。リーフ愛好家が推奨する「リーフスパイ」という診断用アプリもあり、スマートフォンで詳細なバッテリー情報を得ることができる。

12本のバーが表示されていれば、バッテリー容量が本来の85%以上残っていることがわかる。

調べた結果、理想的な状態は、12本のバー、低走行距離(5~6万km)、高速道路を走った形跡が少ない、急速充電の回数が少ない、できるだけ高年式であると判断した。

より大きな30kWhバッテリーが2015年から導入されたが、英国では希少で、24kWh車よりもバーが少なかった。おそらく、人々は長距離走行を見据えて購入し、急速充電を多用したのだろう。

これはあくまで仮説に過ぎないが、筆者は航続距離については必要な範囲で頑張ることにして、可能な限りバッテリーの状態が良い24kWh車に決めた。

中古EVは「バッテリー」が重要

英国仕様の初代リーフには、大きく分けて3つのグレード(Visia、Acenta、Tekna)がある。

エントリーグレードの装備は寂しいが、小径ホイールのタイヤ代は安く抑えられる。上位グレードには、筆者が欲しかったシートヒーターなどが装備されており、大径ホイールの維持費は高いが、見た目は良い。

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初代日産リーフ    AUTOCAR

中古車をいろいろ見て回るのも大変なので(余計に高くつくこともある)、地元の日産ディーラーで候補車を見つけられたのはありがたかった。7995ポンド(約150万円)と理想よりもかなり高価だが、4万8000km以下、12本のバー、1年のディーラー保証が付いている2015式の最上位グレードだ。

満充電時、ディスプレイ上の航続距離は137kmと示された。バッテリーの使用可能容量は22kWhなので、電費を6km/kWh弱と仮定すると、まあ妥当なところだろう。

おそらく街乗りが中心で、数年前からディーラーで点検を受けていたと思われる。内装は傷ひとつなく完璧で、急速充電器なんて見たこともないのでは?

このリーフは、スコットランドの会社が提供するEV向け無利子ローンを利用して購入した。

リーフは長持ちするという評判があるし、英国の道路税は無料(今のところ)で、「燃料代」は1マイルあたり2ペンス(1.6kmあたり3.8円)以下、メンテナンスの手間もほとんどかからない。ということで、筆者は中古EVの所有にはリスク以上の価値があると考えた。

キアeニロも気に入っているので、PCPをさらに1年延長して、3年間の保証期間が残っているうちに買い取るかもしれない。

その頃には、もっと手頃な価格のEVが登場しているかもしれないし、中古EVもたくさん出回っているだろう。

中古EVを購入する際の5つの「鉄則」

1. 使うことのないバッテリー容量を買うのはお金の無駄。

2. バッテリーの健康状態には年式が関係するため、予算が許す限り最新の年式を選ぶこと。

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キアeニロと日産リーフ    AUTOCAR

3. 満充電(100%)における航続距離のディスプレイ表示を確認する。予想より航続距離が短いのは、運転の仕方に原因があるかもしれない。

4. ディーラーに質問したり、点検履歴を確認したりして、車両がどのように使われてきたかを知る。

5. 近場を走るだけでよく、自宅で充電できるのであれば、低価格でEVを手に入れることができる。


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