最近は新卒採用の応募条件を大卒ではなく学歴不問とする企業が増えているが、内定者は大卒ばかりで高卒や専門学校卒は皆無なんてケースは珍しくない。それだけに学歴があれば仕事の選択肢の幅が広がるし、より多くの収入を得られるチャンスが大きくなる。

 とはいえ、社会で生きていくうえで学歴が絶対に必要かといえば、決してそうでもない。でも、なかには自分の学歴の高さを鼻にかけ、周りの人間を見下してくる者もいる。佐々木龍一さん(仮名・27歳)は、自身の学歴を鼻にかける同僚が多いIT企業に就職した結果、息苦しい思いをしているそうだ。

◆営業部を小馬鹿にする高学歴社員

「営業部はまさに体育会系の雰囲気そのもの。初日から先輩についてガツガツと営業を体験させられました。ただ、自分は大学まで運動部に所属していたので、多少理不尽な上下関係にも慣れていました。厳しく鍛えられるのには全く問題ありません。営業が天職ではないかと思えるほどに、仕事自体は順調です」

 順調に成績を伸ばして、仲間たちと楽しく仕事をしているという佐々木さん。しかし、他部署の社員との打ち合わせや会議では、日常で感じたことがなかったようなストレスを受けることが……。

「営業部はガッツがある人材を集めているからか、出身校もさまざまで決して高学歴とはいえない社員が集まっています。一方で、エンジニアやデータサイエンティストなどの職種では、東京大学京都大学一橋大学などを卒業した高学歴の社員がゴロゴロ。だからなのか何か提案しても、小馬鹿にして『低学歴の社員が的外れなことを言っている』というスタンスを崩さないことが多々あります

◆やっかいな京大卒の“学歴マウント社員”

 一般的に見れば、佐々木さんも全国的に名の知れた有名大学を卒業しているものの、閉ざされた環境の中では“低学歴”扱いされてしまうのだとか。仕事を進めるうえで支障をきたすことも珍しくない。

「納期が遅れそうになったり、トラブルが発生したりした際に“学歴マウント社員”は重い腰を上げようとしません。すぐ対応してほしいところですが、『営業部の学歴が低いからそんなトラブルになる』などと難癖をつけてきて……。当然、クライアントを怒らせることもありますけど、頭を下げるのは我々営業部。たまったものではありません。もちろん、すべての高学歴が嫌なやつばかりではないのですが……」

 特に佐々木さんたちの営業部隊を悩ませたのが、京都大学を卒業したZさんだ。

「データサイエンティストとして入社して、営業部とも頻繁に仕事をすることが多い人物。ただ、かなり性格に難があり、実績のわりに昇進できず平社員のままという変わり者なんです。Zさんがプロジェクトに入っていると、みな気が滅入ってしまう。平気で『レベルの低い大学を出た人には理解ができない』という発言を繰り返すんです。実力がなければとっくにクビになっているでしょうが、頭が切れてさまざまなプロジェクトを成功させているから、そうもいきません」

◆学歴を振りかざすのは“負け組の社員”?

 ただ、このご時世で傍若無人な学歴ハラスメントは許されるはずがなく、暴言がキッカケで都落ちしてしまう。

新しく営業部の部長になったAさんが上層部に掛け合い、今後は理不尽な言動は許さないと宣言したんです。われわれからもヒアリングした結果、Zさんを代表とする学歴マウント社員の暴れっぷりが明らかになって。誰も擁護する人がいなかったZさんは、地方にある支社に飛ばされることになりました。ちなみに、部長のAさんは地方の国立大学卒で、決して社内では高学歴とはいえません。でも、さまざまなプロジェクトを成功させてきた叩き上げの社員で、学歴マウントが大嫌いなんです。Aさんが社内で影響力を持つようになり、さらにZさんが左遷されたこともあり、学歴をひけらかす社員はグッと減りました

 学歴マウントする社員に共通しているのは、「何かしら会社に不満があるのでは?」と佐々木さんは分析する。

「『東大や京大を卒業したのに、こんなポジションでしか仕事ができない』というような不平不満を持っている気がします。なので自分を大きく見せようとして、周りに学歴マウントを取るんです。これまで、そういった社員が出世したのを聞いたことがないですし、結局は“負け組の社員”が自分を武装しているに過ぎないと思います

 もしも、会社に学歴を自慢するような上司や同僚がいたら、「かわいそうな人」だと優しい目で見てあげるのが、正解の対応なのかもしれない。

<TEXT/高橋マナブ>

【高橋マナブ】
1979年生まれ。雑誌編集者→IT企業でニュースサイトの立ち上げ→民放テレビ局で番組制作と様々なエンタメ業界を渡り歩く。その後、フリーとなりエンタメ関連の記事執筆、映像編集など行っている

―[学歴マウント]―


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