2階級での4団体統一を成し遂げ、世界的な声価を高めた井上。そのパフォーマンスには、様々な意見が寄せられている。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 プロキャリア26戦無敗(23KO)と、文字通り敵なしの強さを誇っている井上尚弥(大橋)。他を寄せ付けない戦いぶりを見せ続けているからこそ、ファンは「誰なら倒せるか」「あいつには勝てない」と“妄想”を膨らませる。

 昨年12月にマーロン・タパレスとのスーパーバンタム級4団体統一戦を10回KOで制した井上は、2階級での4団体統一を成し遂げた。これは同年7月にテレンスクロフォード(米国)がやってのけて以来、史上2人目の快挙であり、5年7か月での達成は史上最速であった。

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 ボクシング史に残るファイターとなった井上。それだけにいまだ無敗の“怪物”の存在は、米国内でも広く知れ渡っている。ゆえに一部のファンは彼をいかに倒すのかという想像を膨らませ、「非現実的」と言うべき対戦をぶちまけている。

 それが階級では井上よりも3つも上に位置する現WBA世界ライト級レギュラー王者ガーボンタ・デービス(米国)とのマッチアップである。

 昨年7月に井上がスティーブ・フルトン(米国)を打ち破った直後から、SNSを中心に一部のファンや識者の間でにわかに論じられてきた同対戦。両雄の階級差を考えれば、パワーやスピードはもはや危険な領域にある。仮に井上が上げたとしても、彼が求める「ベスト」でないことは明らかだ。

 ゆえに海外メディアでは、デービスとの対戦説を真剣に否定する声もある。フィリピンボクシングアナリストであるエド・トレンティーノ氏は、地元紙『Manila Times』は「イノウエとデービスとの対戦は夢でしかない」と断言。「一部のファンは2人がリング上で完璧にマッチすると真剣に信じている。そして、両者を戦わせるために大枚をはたくプロモーターがいることも間違いない」としつつ、「残念ながら2人の階級差はあまりに高いハードルだ」と論じている。

イノウエはあるインタビューで『お金がいいからといって、フェザーやスーパーフェザーにまで上げるつもりはない』と語っている。つまり彼はお金のためだけにボクシングを続けているわけではないのである。イノウエは素晴らしいことを言っている。『階級』が設けられているのには理由があり、複数階級を制覇したボクサーは一握りだけだ」

 さらにトレンティーノ氏は、8階級を制した母国の英雄マニー・パッキャオフィリピン)を引き合いに出し、「前人未到の偉業をやってのけた我らがパッキャオでさえ、契約書にキャッチウェイト条項を入れるなど、慎重にその道を歩んできた」と強調。そして、次のように結論付けている。

イノウエとデービスの体重差は、理想的なキャッチウェイトを見つけるには差が大きすぎる。何よりもイノウエは自らの肉体の限界を明確に認識している。108ポンドからスタートした彼にとって、135ポンドまでの増量は無理がある。

 おそらく彼は2025年にはフェザー級で戦いを繰り広げることになるだろう。ただ、その頃には、デービスは少なくともウェルター級にまで増量している。そうした現実を見ても、両雄の対戦は、空想の産物にとどまる運命にある」

 やはりデービスとの対戦は、本人たちも認める通り、非現実的というほかにない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

3階級差のデービス戦は「空想の産物」 パッキャオ母国識者が井上尚弥を称賛「彼は肉体の限界を認識している」