一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週は、フィリピン経済成長に大きな影響のある海外からの直接投資(FDI)の最新の動向を中心にみていきます。

フィリピンへの外国投資

経済見通しが改善するなか。2023年11月のフィリピンへの外国直接投資(FDI)の純流入は、約2年ぶりの最高水準に急増しました。

◆2023年11月FDI純流入

フィリピン中央銀行(BSP)が公表したデータによると、FDIの純流入は前年同月比27.8%増の10.48億ドルで、2022年の同月の8.20億ドルから上昇しました。これは、2021年12月の26.62億ドル以来の最高月間FDI純流入額です。また、前月比でも、10月の6.55億ドルから60%増の10.55億ドルに急増しました。純流入の増加は、主に非居住者からの貸付の増加によるもので、これが企業への出資と利益の再投資の減少を相殺しました。

貸付は、2022年の同月の5.68億ドルから57.8%増の8.97億ドルに成長しました。一方、出資は、前年同月比52.5%減の8500万ドルに低下しています。また利益の再投資も、前年同月比8.1%減の6600万ドルに減少しました。また、株式と投資信託への長期投資も、前年同月比39.8%減の1億5100万ドルに減少しています。これらの投資は、主に日本と米国からのもので、製造業、不動産、建設業を中心に投資されています。

◆2023年1月~11月FDI純流入

2023年11月までの累計のFDI純流入は、対前年同期比で13.3%減の758億ドルに低下しました。中央銀行によると、高いインフレとグローバルな経済成長見通しが低い状態が続いている影響により、フィリピンの経済成長が持続しているにもかかわらずFDIは抑制されたままだといいます。

貸付は、1月から11月の間に11.3%減の547億ドルに減少しました。利益の再投資は、2023年11月までの11か月間で6.5%減の101億ドルに減少しました。株式と投資信託への投資も、11か月間で18.1%減の212億ドルに減少しました。日本、米国、シンガポールドイツから投資が大きかったです。

今後のFDIの予測は、経済指標の向上や投資家の信頼が持続すれば高い流入が続く可能性があり、フィリピンは依然として経済成長を続けているため、FDIが2023年の下落から逆転するとみられています。

フィリピン中央銀行(BSP)は、2023年末には80億ドル、2024年末には100億ドルのFDI純流入を記録すると見込んでいます。また、マルコ大統領の投資誘致活動がFDI増加に貢献し始めました。2024年末までには、約722億ドルに達する見込みで、これは約4,600億ドルの投資合意の20%に当たり、46のプロジェクトが含まれています。

フィリピン「家庭用品セクター」2023年成長の込み

フィリピンの家庭用品セクターは、所得の上昇が消費支出を促進することから、今年は2,704億ペソ(48億ドル)に成長する見通しです。

BMI Country Risk & Industry Researchによると、2028年までの5年間で、家庭用品への支出は年平均7.1%増加し、3,540億ペソに達する見込みです。フィリピンの家庭用品消費市場は、現地企業とグローバル小売企業が競合しています。フィリピンのSMグループなどの国内チェーンは、IKEAやJapan Home Centreなどの海外企業と競合しています。

中古住宅市場の空室率が減少し、首都圏のプレセール市場でのコンドミニアムの販売が向上しています。また、2023年の高いインフレが緩和され、失業率が過去最低水準に低下することで、これが家計支出を支える要因となると予測されています。

フィリピン政府は2028年までに貧困率を9%に削減することを目指しています。現在、インフレ率は低下し、失業率も過去最低水準に低下しています。これらも個人消費を後押しします。

写真:PIXTA