女性の閉経前後の更年期症状は広く知られているが、男性にも同様のものが起きることはあまり認知されていない。テストステロンの減少で中高年男性の6人に1人がなるといわれる更年期障害。実際に体験した人たちに話を聞いてみた。「気力がわかない」「カッとなって暴力」etc…。中高年の6人に1人が苦しんでいるという「男性更年期障害」の実態とは?

◆テレビの収録中にこのまま倒れるかもしれないと思った

 芸能人も例外ではない。タレントのヒロミ氏は’22年に朝の情報番組『スッキリ』(日本テレビ系)で自身が男性更年期と診断されたことを明かし、大きな話題となった。当時の症状についてこう話す。

「僕はあまり汗をかくほうではないんだけど、50歳を過ぎた頃に、やけに汗をかいたり、動悸がするようになった。ネクタイをつけると息苦しいし、それまで感じたことのないぼんやりとした不安が生じるようになって、『なんだろう、これ?』というのが始まり。

 子供の頃、朝礼で並んでいるときにふらつくことってあったじゃない? あの感じに似ているかな。何が不安なのか自分でもわからず戸惑っているうちに、どんどん胸がドキドキしてくる。テレビの収録をしている最中に動悸がし始め、『このまま倒れてしまうかもしれない』と恐怖を覚えたこともある」

◆不調を感じる頻度が増え病院へ

 不調を感じるのは決まって仕事中だったという。

 症状には波があり、一時的な不調を乗り越えれば治まっていたが、その頻度や強さが少しずつ悪化傾向にあったため病院へ行くことを決意した。

「同世代の男同士で話していたら、『それ更年期だよ』って言う人がいて。僕は詳しくないけど、ママ(妻の松本伊代)が通っている病院がホルモンの検査や治療をしてくれるというから一緒に行ったんです。そこで男性ホルモンの数値が落ちていることがわかり、男性更年期だと診断された。塗り薬で治療を始めたら、みるみるよくなっていきましたよ。心臓が悪かったらどうしようと心配だったから、原因がわかってホッとしたね」 

◆心と体でギャップがあることを認めれば楽になる

 仕事も順調で趣味もアクティブに楽しみ、早寝早起きを習慣にしているというヒロミ氏は、ストレスを感じにくいタイプだという。「そんな俺でもなったんだから」と笑う。

「中高年になると、『若いヤツには負けない』とか『まだまだ働ける』とか躍起になっちゃって、自分の体が弱っていることを認められない。その気持ちはわかる。だけど実際には心と体で確実にギャップがあるし、ホルモンのことなんて自分ではどうすることもできない」

◆まずは認めることが大切

「俺だって病院なんか好きじゃないけど、今の自分の状況を認識することがいかに大事なのかわかった。弱っている自分が恥ずかしいからって見て見ぬふりをするより、50代以降はその不調とうまく付き合っていくほうが生きやすいと思うよ」

 男性更年期は自分もなり得る。それを認めることが正体不明の恐怖を回避するコツだ。

【ヒロミ氏】
1965年生まれ。東京都出身。数々のバラエティ番組のMC・レギュラーを抱えるほか、スポーツやDIYなどの趣味や資格が豊富なことでも知られる

取材・文/週刊SPA!編集部

―[本当に怖い[男の更年期障害]]―


ヒロミ氏