日本財団エコノミスト・インパクトによる海洋環境保全イニシアティブ『Back to Blue』は、「有害化学物質による海洋汚染ゼロの実現:日本のロードマップと方策」」をテーマにしたパネルディスカッションを中心とするイベントを東京都内にて2月6日(火)に開催しました。
URL:https://backtoblueinitiative.com/about-jp/

 本イベントでは、ハーバード大学エルシー・サンダーランド教授、スウェーデンNGOのChemSec(国際化学物質事務局)のフリーダ・ヘーク副事務局長と会場をオンラインで繋ぎ、国立環境研究所 環境リスク・健康研究センター 鈴木規之センター長をはじめとする、国内外の海洋化学汚染に関する研究や政策の専門家やステークホルダーと共に、海洋化学汚染問題の深刻さを浮き彫りにすることで、最善の解決策を世界全体で共有し、次に取るべき行動を議論しました。

 本イベント開催に先立ち挨拶をした日本財団 常務理事 海野光行氏は、海との繋がりなくして生きていけないにも関わらず、その繋がりを忘れている状態を表すオーシャンブラインドネスについて触れ、次のように述べました。「オーシャンブラインドネスには、海に対する無知、無関心、そして問題があると知りながら見えないふりをする無視の3つの意味があります。本イベントが、このオーシャンブラインドネスの壁を打ち破る一歩になればと思います。そして、今回の議論で得られた結果をBack to Blueのプラットフォームから国内外に発信することで、国際的な議論の場で行動を促すきっかけになることを願っています。」

 エコノミスト・インパクト 編集主幹 チャールズ・ゴダードによるBack to Blueの紹介プレゼンテーションでは、これまでのBack to Blueの活動を振り返り、政策立案や交渉の場で取り上げるに足る十分なデータや化学物質汚染問題への理解が不足していることについて言及しました。過去の活動結果から今回のイベントは、有害な化学物質による影響を排除するためのロードマップの策定が目的であると紹介しました。目的達成のためには、データのプロセスを構築し、行動に移し早く結果を出す必要があると明言しました。また、人々によりこの問題を知ってもらうために、様々な国際機関と連携して、建設的な対話やデータ集めていきたいと、問題解決に向けて意気込みを見せました。

 ハーバード大学教授のエルシー・サンダーランド氏へのインタビューでは、海洋化学汚染問題が世の中で知られていない理由や海洋化学汚染による悪影響、今後の行動について、意見交換が行われました。その中でサンダーランド氏は、汚染源を見つけることで問題の透明性を高める必要や現在発生している事象や産業界で利用されている化学物質について知ることの必要性を訴えました。さらに、海洋化学汚染問題に対して関心を持たない、行動を起こさないことへの代償が大きいことについても言及しました。産業界で現在使用されている化学物質や材料の革新的な変化や規制の分野で変化がない限り、公衆衛生は悪化していき、海産物にも影響が出てくると警鐘を鳴らしました。サンダーランド氏は「この問題に対して、今アクションを起こすことが必要でBack to Blueがこの問題解決に向けて行動していることを嬉しく思います」とBack to Blueの活動を評価しました。

 パネルディスカションには、スウェーデンNGOのChemSec(国際化学物質事務局)のフリーダ・ヘーク副事務局長、国立環境研究所 環境リスク・健康研究センター 鈴木規之センター長、世界銀行 主席エコノミスト リチャード・ダマニア氏、東京大学 高村ゆかり教授が登壇しました。ディスカッション内では、海洋化学物質汚染の国内外の現状と取り組みや問題共有をし、海洋化学汚染による影響を排除するためのロードマップ策定に向けて議論が展開しました。まず、日本の海洋汚染問題は、各地域で発生している事象として捉えられていることから議論が始まりました。その後、十分な海洋汚染に関する研究やデータが不足していること、そして海洋化学汚染問題の認知向上の必要性について言及されました。国外でも同様の状況が指摘され、海洋への影響度に関する研究不足や、海洋汚染問題が気候変動や陸地での環境問題などとは別に議論されていることなど、これらの問題共有によって、海洋汚染の深刻さがより明確になりました。

 

 海洋化学汚染問題解決に向けて、本パネルディスカッションでは、海洋化学汚染問題をその他の環境問題などと包括的に議論していき、問題の認知向上が必要であると訴えました。さらに、この問題に対して同じ志を持った国際機関、国、政策提言者、科学者などが協力して問題解決に向けて、いち早く行動を起こすことの重要性についても言及しました。

日本財団 常務理事 海野光行
左から)チャールズ・ゴダード(エコノミスト・インパクト)、鈴木規之氏(国立環境研究所)、 リチャード・ダマニア氏(世界銀行)、高村ゆかり氏(東京大学)

ネリストからのコメント

ChemSec(国際化学物質事務局)副事務局長 フリーダ・ヘーク氏

「今回、海洋汚染における日本と世界の状況と、今後の対策についてとても有益な議論が出来ました。海は私たちを繋ぐもので、我々全員でこの海に流れてしまっている有害化学物質をどのように安全にしていくかを、国際的に協力しながら、出来ることから取り組んでいくことが大事です。」

世界銀行 主席エコノミスト リチャード・ダマニア氏

「海洋汚染の90~95%は陸から来ています。この負の連鎖に目を向けることで海洋汚染問題のも目が向けられることになり、経済界にも行動を促すことができます。国際的な規制を制定することも一つの案ではありますが、各国が国益を考えてしまい、制定には時間がかかってします。まずは、同じ意思を持った国々や人々が一緒に問題解決に向けて行動をしていく必要があります。」

国立環境研究所 環境リスク・健康研究センター 長 鈴木規之氏

「科学者として、この問題を議論する必要があります。海洋汚染問題は、大気や気候変動などの問題と分けて考えられています。さらに海洋汚染の研究やデータが不足しています。そのような不確実な状況中でも、政策者へ提言をすることでこの問題に対応していかなければなりません。」

東京大学教授 高村ゆかり氏

「日本の環境省は次の環境基本計画作成に向けて動いています。ただ、海洋汚染の汚染源や予測データなどの科学的なデータが不足しています。そのため、他の環境問題と比べて社会的な問題として取り上げにくいのが現状です。ただ、そのような状況の中でも、法的な拘束力のないグローバルなプラットフォームを活用し、国際的に協力しながら、ステップ・バイ・ステップで問題解決に向けて取り組む必要があります。」

『Back to Blue』は今後も世界の海をとりまく喫緊の課題について、科学・エビデンスに基づいた形で世界に警鐘を鳴らしていくとともに、本会議のように持続可能なソリューションを模索し議論できる場作りを続けてまいります。

本イベントは下記URLから視聴いただけます。

日本語:https://www.youtube.com/watch?v=7aAvNbU-ZRA
英語:https://www.youtube.com/watch?v=dxMcNXZksg8

■Back to Blueのこれまでの代表的な活動

・2022年3月 海洋化学汚染に関する報告書

『海に忍び寄る新たな脅威 - 有害化学物質による海洋汚染と克服に向けたビジョン・方策』を発表

・2023年2月 パネルディスカッションイベント 「海洋酸性化:忍び寄る危機」を開催

・2023年3月 プラスチック消費に関する調査報告書『ピーク・プラスチック: 消費曲線を曲げる』を発表

日本財団の代表的な海洋ごみ対策事業

・産・官・学をつなぎ、オールジャパンでの海ごみ問題の解決を目指す:海と日本プロジェクト CHANGE FOR THE BLUE

https://uminohi.jp/umigomi/

・50社の企業とプラスチックごみのアップサイクルを通じて、海洋ごみ削減を目指す:ALLIANCE FOR THE BLUE

https://www.alliancefortheblue.org/

環境省と共に行う累計260万人が参加の全国一斉清掃キャンペーン:海ごみゼロウィーク

https://uminohi.jp/umigomi/zeroweek/

■Back to Blueについて

エコノミスト・インパクトと海洋科学と海洋環境の保全をけん引してきた日本財団は、海洋汚染と海洋環境保全に関する取り組み『Back to Blue』を2021年にローンチしました。2021年夏には海洋汚染をテーマとし、世界25か国を対象とした「プラスチック管理指数」を発表致しました。当イニシアティブでは海洋課題への取り組みにあたって、科学・エビデンスを活用することの重要性を分かち合い、サステナビリティの推進と海洋環境の保全にむけたソリューションを模索したいと考えています。

より詳しくはhttps://backtoblueinitiative.com/をご覧ください。

エコノミスト・インパクトについて

エコノミスト・インパクトは、シンクタンクとしての75年の歴史、および205カ国における分析実績を持ち、シンクタンクの厳格性と、世界的に影響力のあるオーディエンスを惹きつけるメディア・ブランディングの創造性を兼ね備えています。エビデンスに基づく洞察が議論を深め、視野を広げ、進歩を加速させることを信念に掲げ、ベンチマーキング、経済・社会的影響の分析、予測、シナリオモデリングに加え、創造的なストーリーテリング、イベントに関する専門知識、デザイン思考のソリューション、市場をリードするメディア製品(EIU ソート・リーダーシップ、EIUパブリック・ポリシー、EIU ヘルス・ポリシー、エコノミスト・イベント、Eブランドコネクト、シグナルノイズ等)を提供しています。

日本財団について

痛みも、希望も、未来も、共に。

日本財団1962年、日本最大規模の財団として創立以来、人種・国境を越えて、子ども・障害者・災害・海洋・人道支援など、幅広い分野の活動をボートレースの売上金からの交付金を財源として推進しています。海洋分野では、海洋の未来を切り拓く人材の育成と、海の豊かさの次世代への継承を目指しています。

https://www.nippon-foundation.or.jp/

配信元企業:The Economist Newspaper Limited

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