木村拓哉ら世界各国の豪華出演者が集結したHuluオリジナル「THE SWARM/ザ・スウォーム」。“宇宙よりも謎が深い”と言われる深海を舞台に、世界の海で起きている不可解な現象を追うSFサスペンスだ。第6話ではついに「イール」と名づけられた“知的生命体”へ、科学者たちが挑む展開に。本記事では、考察を踏まえながら同話を振り返る。(以下、ネタバレを含みます)

【写真】木村拓哉“アイト・ミフネ”が放つ強烈な存在感

■“なんらかの意思”を主張するも、委員会は嘲笑…

大きな津波によって、大切な人を失ったトロンヘイム大学教授のシグルヨハンソン(アレクサンダーカリム)と海洋生物研究所(IBM)の研究員・シャーロット・“チャーリーワグナー(レオニー・ベネシュ)。

ラジオニュースでは、津波に関する被害が取り上げられていた。津波によって沿岸沿いの村々が壊滅的な状況に陥り、行方不明者が350人以上いるという残酷すぎる最新情報が流れる。しかしあまりに突然かつ被災範囲の広さから、全ての被害までは把握しきれていないようすだった。

シグルチャーリーは亡くなってしまった大切な人を偲ぶ気持ちに向き合う時間を経て、海洋異変の原因を突き止めるべく再び立ち上がる。

そのころジュネーブでは、同時多発的に起こっている海洋災害の関連性を議論するために国際海洋保護委員会(ICPO)が開催されていた。天体物理学者のサマンサ・クロウ(シャロンダンカン=ブルースター)、ミフネ財団のサトウなどが参加するなか、発表をしていたのは「大学病院医療センター」に勤めるセシル・ローシュ(セシル・ドゥ・フランス)だ。

セシルは血液に触れると毒素を生成するバクテリア「ビブリオ・バルニフィカス」が人工、自然問わずあらゆる水路に入り込んだことを報告。さらに地球人口の4割が沿岸に住んでいることから、予想される被害の大きさを警告した。

深刻なセシルの表情とは裏腹に、ほかの科学者からは「毒性の強い変異株の出現は驚くことではないのでは」と呑気な意見も飛び出す。セシルは「たしかにその通りです」と肯定しつつも、新種の生物が変異株を運び込むのは異常であることを告げた。わざわざ水道に入り込み、人の住む陸地に“感染したカニ”を送り込む動きは、まるで人間への感染を目的としているようだと訴える。

しかし、その一言がよくなかった。ある種ファンタジックともいえるセシルの言葉に、聞いていた参加者から「カニが故意に水を感染したとお考えで?」とあざ笑う声が。セシルは調べたデータをもとに、可能性としてありえる推論を示しているに過ぎない。だが会場には「数字が物語っている」というセシルの言葉を聞き、うなずく者はいなかった。

閉会後、委員会のようすを動画で見ていたシグルは、サトウに電話でセシルと話がしたいと依頼。さらにセシルとだけでなく、レオンとも会いたいと話す。「なるべく早く」というシグルの依頼に思うところがあったのか、サトウもすんなり了承する。

■「未知の知的生命体」を知るための手段

シグルはサトウを通して、セシルと話すことに。まずはオンラインで話したところ、セシルはロブスターやカニの背後には“学習している何か”がいるという考えを打ち明ける。

ロブスターは漁師によって偶然運び込まれたが、カニは自ら陸に上がってきた。これは被害を広げるために、目的を持って手段を変えたと考えられるというのだ。

「このことは会議じゃさすがに伏せたけど」と話すセシルに、シグルは「あなたの意見に賛成だ。ほかにも賛同者はいる」と言って直接会うことを提案する。「明日」という急な話ではあったが、事態の緊急性を知るセシルは少し悩みながらも承諾した。

シグルの呼び掛けやサトウの協力により、セシルレオンが海洋生物研究所(IBM)へやって来る。そこにはチャーリーもおり、資料を読んでいた。読み終わったチャーリーは、シグルにカタリーナにも話したのかと問う。しかしシグルは、「いや、味方が来るまで待とうと思ってね」とやんわり否定。先日強硬な態度を見せたカタリーナ・レーマン(バルバラ・スコヴァ)教授の反応を、予測したのだろう。

「ここ数週間、あり得ない現象をいくつも目にしてきた。だがこれは現実だ」シグルは関係者を集めて、クジラの異常行動、閉じているはずの熱水噴出孔の活動、突然変異したバクテリアを陸地に運ぶ生き物の不可解な行動…こうした事件が裏で繋がっているという自説を明かす。そしてやはり頑なな態度を崩さないカタリーナから「それを可能にするのは、何らかの知性を持った生命体ということになる。それが海から我々を排除したがってると?」という質問にも動じず、「そうです」と告げるのだった。

「そんな説を出す前に、もっとまともな説を考えてみたら?」と一笑に付すカタリーナに、レオンは「仰る通りです。でも直感が告げてる」とシグルへの賛同を示す。カタリーナは直感に頼ることが悪いわけではないとしつつも、「我々の知識や真実を無視して絵空事を信じるの?」と改めてシグルの案を否定する。

セシルから「我々の知る真実を超えてるの」と言われ、チャーリーから「慎重になる時間はない」と言われても、考えを変えられないカタリーナ。シグルの説を受け入れることは、これまで築いてきた自身の研究や理論の全てを捨てることと同じだ。彼の案はたしかに、それほど夢想的なワードにあふれていた。

■頼もしいミフネがシグルたちを後押し

シグルレオンブレスレットに刻まれた“未知”を示す文様から「YRR(イール)」と名付けた知的生命体について、国際海洋保護委員会で説明をおこなう。だがやはり「いまの科学では説明できない」という意見は、受け入れられなかった。科学の先端を行く委員会参加者にとって、カタリーナと同じく認めることができない言葉だったのだろう。

そんななか、レオンチャーリーが入手した映像に見えた謎の音について新情報が入った。天体学者のサマンサが同じ周波数の音が、北極や南極で観測されているというデータを持ってきたのだ。北極や南極に“イール”の手がかりがあるかもしれない…そうした情報に、アイト・ミフネ(木村拓哉)が協力の意向を示す。

ミフネは国際海洋保護委員会にシグルの意見が通らなかったことを残念だと表明しつつ、シグルの示したデータと仮説に納得したと告白。自身が地球の資源から富を得て、海に恩恵を受けた身だからこそ、海の恩返しする義務があると語った。「私もあなた同様、仮説が正しいか確かめたい」そう語ったミフネの援助を受け、すぐさまチームは北極海へと向かうことになる。

威風堂々たる姿を見せる木村拓哉

これまでもミフネが登場する回はあったが、日本の会社であることから部下は日本語でミフネと会話をしていた。外部との折衝はサトウに任せていた形だったのだが、今回はシグルと英語で会話することに。

財団として「イール」の調査に金を出す理由を語る重要なシーンだけに、BGMは控えめで木村の声だけが響く。息を飲むような緊迫した空気が流れるなか、木村は身振り手振りを交えつつ、流ちょうな英語を披露。

大きな影響力を持つ“財団”の主という役にばっちりハマった、威風堂々たる姿を見せた。さまざまな役柄を演じたことのある木村だが、今作でもその強烈な目力は健在。未知の存在に対する警戒と異常を解決したいという意思を、短い時間のなかで表現しきった形だ。

資金提供という立ち位置だけに現場には現れないミフネという役ながら、要所要所で強烈な存在感を示す木村。今後もチームの危機を助ける存在として活躍するのか、注視していきたい。

◆文=ザテレビジョンドラマ部

木村拓哉“ミフネ”協力のもと、科学者らは未知なる知的生物「イール」の正体をたしかめに北極海へ/(C)Hulu Japan