2歳未満の子どもがいる家庭を対象にしたユニセフによる現金給付を受け取った、ひとり親の母親と生後6カ月の子ども。家族のためにキャッサバや小麦粉、砂糖などを購入すると話す。(モザンビーク、2023年12月撮影) (C) UNICEF_UNI487985_Franc

【2024年2月14日 ニューヨーク発】

ユニセフ(国連児童基金)などが本日発表した新たなデータによると、世界全体で、0歳から15歳までの14億人の子どもがいかなる社会的保護(児童手当・家族手当等)も受けられず、病気や栄養不良、貧困の危険にさらされています。

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低所得国では、同年齢層の子どもで児童手当を受けられるのは10人に1人未満の割合で、高所得国の給付範囲とは著しい格差があることが浮き彫りになっています。

ユニセフが支援する保健所で、呼吸器感染症の診察を受ける8歳のアディナさん。地震により被災した家族は、ユニセフから現金給付の支援を受けて、食料や暖房・調理のための薪などを購入した。(アフガニスタン、2024年1月撮影) (C) UNICEF_UNI502638_

児童手当は、子どもたちの長期的なウェルビーイングの向上を目的とした、重要な社会的保護の一形態です。児童手当の給付や税額控除は、貧困を削減するだけでなく、ヘルスケア、栄養、質の高い教育、水と衛生サービスを利用するためにも不可欠です。さらに、こうした手当は、特に危機的な状況において、社会経済の発展を支援します。

そのような意味で、多くの子どもたちが、貧困から抜け出すために必要な基本的な資源・サービスを奪われ、飢餓や栄養不良による長期的な影響を受け、自らが持つ可能性も閉ざされてしまっているということです。 ユニセフなどは各国政府に対し、すべての子どもが普遍的な児童手当などの社会的保護の仕組みによって守られるようにすることを求めています。

データによると、児童手当の適用対象の子どもの割合(カバー率)は、全体的には2009年の20%から2023年の28.1%へと、14年間で緩やかに増加しています。しかし、その進展は不均衡なものでした。低所得国では、カバー率は約9%と依然として圧倒的に低く、一方、高所得国では84.6%でした。

南キブ州で、ユニセフの支援物資を受け取る母親と子ども。今後3カ月間、生活に必要な食料等を買うための現金給付を受け取ることができる。(コンゴ民主共和国、2023年12月撮影) (C) UNICEF_UNI494324_Benekire

気候変動の影響に対して非常に脆弱な国々の子どものカバー率は、そうではない国々のカバー率と比較して3分の1低くなっています。子どもを気候危機の最悪の影響から守るためには、 彼らを社会的保護の対象に含めることが重要です。

ユニセフの社会政策・社会的保護担当ディレクターのナタリアウィンダー=ロッシは、次のように述べています。「世界には、1日2.15米ドル未満で暮らす『極度の貧困』の子どもが3億3,300万人、多次元貧困に苦しむ子どもが10億人近くいます。現在の進捗速度では、SDGs持続可能な開発目標)で掲げた貧困撲滅のターゲットを達成することはできません。これは受け入れがたいことです。しかし、子どもの貧困に終止符を打つことは、政策の選択なのです。 貧困との闘いにおいて、子どもの社会的保護のカバー率を拡大することは、普遍的な児童手当の段階的な実現も含め、極めて重要です」

2009年から2023年にかけての児童手当のカバー率の地域別内訳は以下のとおり。

  • 東アジア太平洋地域では、児童手当のカバー率は 2009 年の 9.2%から、2023 年には 16.0%へと増加

  • 東部・南部アフリカ地域では、9.6%から12.3%へ増加

  • 西部・中部アフリカ地域では、3.1%から11.8%に上昇

  • 東欧・中央アジア地域では、59.0%から61.4%へ増加

  • 北米地域では、78.1%から84.0%に増加

  • 西欧地域では、91.0%から93.2%に増加

以下の地域では同期間にさらに著しい改善が見られました。

  • ラテンアメリカ・カリブ海諸国地域では、30.8%から41.9%に増加

  • 中東・北アフリカ地域では22.7%から32.5%に増加

  • 南アジア地域では9.2%から24.3%に増加

ユニセフなどは、児童手当のカバー率を把握し、格差是正に向けた政府やドナーへの働きかけを強化するためのオンラインプラットフォーム「グローバル・チャイルド・ベネフィット・トラッカー(Global Child Benefit Tracker)」を開発しました。このプラットフォームは、世界全体で8億2,900万人の子どもが1人当たりの所得が1日3.65米ドル未満の世帯で生活しており、子どもの貧困削減に向けた進展はほぼ足踏み状態となっているという、最新のデータが明らかになった重要なタイミングで立ち上げられました。

ユニセフなどは、政策立案者とドナーに対し、すべての子どものための普遍的な社会的保護を実現するために、以下のような思い切った措置を講じるよう強く求めます。

  • 権利を基盤としてジェンダーに配慮した包摂的かつ危機に対応できる社会保護制度を構築することで、不公平に対処し、例えば女の子や女性、障がいのある子ども、 移民の子ども、そして児童労働を強いられている子どもの状況を改善する。

  • 保護の格差の是正に必要な「経済的格差」を小さくする。なぜなら、すべての子どもに対する児童手当への資金投入は、子どもの貧困の撲滅に取り組み、子どもの健やかな成長を支えるための、実績ある費用対効果の高い方法なのである。

  • 国の社会保護制度を通じてさまざまな手当等を提供し、家族が質の高い保育を無料または手ごろな価格で受けられるなど、重要な保健・社会サービスを利用することもできるようにする。

  • 国内の財源を動員するとともに子どもへの公共投資を拡大させることで、社会保護制度のための持続可能な資金を確保する。

  • 十分な、失業、疾病、出産、障がいなどに関する手当や年金、働きがいのある仕事を保障することにより、親と養育者に対する社会的保護を強化する。

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ユニセフについて

ユニセフUNICEF国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/

ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます

日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、33の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

配信元企業:公益財団法人日本ユニセフ協会

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