コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、現在若い世代を中心に注目されている「HSP」(=生まれつき感受性が強く、繊細な気質をもった人)を題材にした人気作品『新人は自称HSP』をピックアップ。

【漫画】“自称”HSPの新人が上司に「配慮」を強要…そんな新人に寄り添おうとする上司の姿に「こんな人いるの」「良い人すぎる」と反響の声

作者のはむら芥さんが12月29日にX(旧Twitter)で同作を投稿。そのツイートには合わせて4万以上のいいねと共に、多くの反響コメントが寄せられた。この記事では、はむら芥さんにインタビューを行い、創作のきっかけやこだわりについてを語ってもらった。

■上司からの配慮を悪用する“自称”HSPの新人

入社5年目の加藤さんは、同じ部署に配属された新入社員の高瀬さんを指導することになった。一見、明るくて素直そうな高瀬さんだが、後に彼女の本性が明らかとなる…。

高瀬さんのミスが多いことに気がついた加藤さんは、高瀬さんをランチに誘いミスを指摘した。すると、ものすごい形相で睨みつけられてしまう。会社に戻ると倉庫に呼び出され「私の事バカだと思ってますよね!?」「私HSPなので配慮して下さい!」と詰められてしまった。

彼女の気持ちに応えようと、加藤さんは家に帰りHSPについて調べてみた。しかし、どんな配慮が必要なのかよく分からない…。

翌日、高瀬さんに困っていることはないか聞いてみると「新しく振られた仕事が他の仕事と同時進行できず困っている」と言われた。そこで、加藤さんは「明日まで待ってもらえるか聞いてみますね」と伝え、その場を後にする。

一方、加藤さんに助けてもらった高瀬さんは、配慮に感謝するどころか、「こんな楽に仕事減らせんの?チョロすぎる!」と笑みを浮かべていた…。

「私、HSPなので配慮して下さい!」と怒る“自称”HSPの新人と、そんな新人にできる限り寄り添おうとする上司の姿を描いた物語に、読者からは「上司が良い人すぎる」「必要な人に適切な配慮が届かなくなるのはすごく怖い」「興味深い話」など多くのコメントが寄せられている。

■「配慮について考えるきっかけになれば…」作者・はむら芥さんが語る創作秘話

――「新人は自称HSP」を創作したきっかけや理由があればお教えください。

数年前SNSなどでHSP(Highly Sensitive Person)が広く知られ始めた頃に、新しく職場に入った方が「自分はHSPなので配慮して欲しい」とおっしゃったことがありました。当時私を含め職場のメンバーはHSPについての知識がなく、どのように配慮すればいいのか、どこまで主張を取り入れればいいかが分からず、とても対応に悩んだんです。

それからしばらく経ったある日、友人にこの出来事を話すと「実は私もHSPかもしれなくて悩んでいた」と打ち明けられて…。自分がHSPであると自覚している人、そうかもしれないと悩んでいる人、また私達の様にHSPに対してどう配慮すればよいのか分からない人は意外と身近にも多いのではないかと感じ、このテーマを漫画にしてみることにしました。

――本作の中で特にお気に入りのシーンやセリフがあれば理由と共にお教えください。

最終話にある三人の新しい関係性が見えるところですね。マンガを書き進める中で、特に加藤さんの辛さを描くのが自分でも本当に苦しかったのですが、その分最後のこのシーンで一気に解放される感覚があってとても気に入っています。

――もともとInstagramやブログでも影響力のあるはむらさんではありますが、特に12/29のX(旧Twitter)の投稿に大きな反響がありました。コメントやSNS上の声などの反応に対してのお気持ちをお聞かせください。

反響の大きさに驚いたというのが一番の気持ちです。Instagramやブログと違いXは全然動かしておらず、投稿した時もフォロワーは50人程度でした。それがあっという間に拡散され多くの意見が届いたので本当に驚きました。届いた意見の中には、本書で『HSP』を初めて知ったという方や、実際にHSP気質だという方、中でも、「同じ経験がある」という声が多く寄せられて、『HSP』や『配慮』は、想像以上に身近な話題なのだと改めて気が付かされました。

――自称HSPと本物のHSPの区別は難しいと感じますが、はむらさんはどのようにお考えでしょうか?

本当に難しい問題ですね…。『自称』とされる方に関しては、高瀬さんの様に分かりやすい人もいますが、本物のHSPの方は周囲に気を遣って気質を隠してしまうことがあるので、外からは気づきにくいですよね。かといって、HSPを主張するかしないかでの判断も難しく、例えば高瀬さんの「HSPなので配慮してください」というセリフも、本物のHSPの方が勇気を振り絞って告白した一言かもしれないですし…。私たちが本当の意味で自称か本物かを区別することは難しいと思います。

だからこそ、HSP気質への理解と、私達一人一人が持つ思いやりが大切だと考えています。HSPという特性に対する理解が広がれば、具合が悪そうだなと感じたときには席を譲るようなフラットな感覚で接することができ、それが個人でも社会でも対応しやすい環境を作り上げる助けになると思います。もしかしたらあの人もそうかも?と、少しだけ広く想像力を持って相手を思いやる気持ちを多くの人が持てれば、最終的にはそれがHSPに留まらず、様々なタイプの方が生きやすい多様性に富んだ社会を作っていくのだと思います。

――本作を通して伝えたいメッセージがあればお教えください。

冒頭を見て関心を持ってくださった方も、ぜひ一度最後まで読んで頂きたいです!色々な価値観が発信しやすくなった今、誰にどこまで配慮すればいいのかと悩んだことがある方も多いのではないかと思います。本作は特定の何かを非難するために書いたわけではなく、多様な価値観の私たちがお互いに認め合って生きていくにはどうしたらいいだろう、本当の意味での配慮とはなんなのだろうと考えながら描き上げた作品です。是非一度、自分だったらどうするか、パートナーだったらどうだろうと、自身の身近なこととして読んでみて下さい。そしてこの作品を通して、配慮とは何だろう?と改めて考えるきっかけになれば本当に嬉しいです!

――今後の展望や目標をお教えください。

今回こうして大きな反響を頂けて非常にありがたかったので、今後も身近なテーマを追求して漫画を描いていければと思います。目標はドラマ化です!ドラマを通してもっと多くの方に作品をお届けできたらと思うので、見て下さったメディア関係者の方、ぜひよろしくお願い致します!

自分を”HSP”だと言い張り、「配慮」を強要する新人…/画像提供/はむら芥さん