Googleは2月8日、最上位に位置づけられる会話型生成AI『Genimi Advanced』を発表した。会話型生成AIの名称も「Bard」から「Gemini」へと変更されており、「Advanced」は有料にて利用可能だ。

【画像】名称が変更されたGoogleの最強AI「Gemini」

 一方で他社の有料会話型生成AIサービスを見回すと、OpenAIの『ChatGPT Plus』やMicrosoftの『Copilot Pro』なども存在する。『Genimi Advanced』はこれらのサービスと比較して、どのような特徴があるのだろうか。

■そもそも「Gemini」とはなんなのか

 「Gemini」は2023年12月に発表された、Googleの最新LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)だ。これまで同モデルは会話型生成AI「Bard」のLLMという位置づけだったが、今回のサービス発表とともにGoogleの対話型生成AIそのものが「Gemini」に名称変更されたことになる。

 「Gemini」は性能が高い順に、「Gemini Ultra」「Gemini Pro」「Gemini Nano」の3つのモデルが用意されている。「Gemini Nano」は、スマートフォンなどデバイス上でのタスク処理を想定している。

 「Gemini」では、テキスト、画像、音声、プログラミング言語のコードなどの入出力が可能だ。最も高性能な「Gemini Ultra」は、Googleが実施した数学や医学を用いたLLMのベンチマークMMLU」にて、90.0%の高い正答率を実現。これは、OpenAIの最新LLM「GPT-4」の86.4%を上回っている。また、これらは「Gmail」や「Google ドキュメント」といったGoogle製品とも連携できる。

■『Gemini Advanced』でできること

 今回発表された『Gemini Advanced』では、Geminiでも最新かつ最も高性能なLLM「Ultra 1.0」が採用された。Googleによれば、「Gemini Advanced」では「コーディング論理的推論、ニュアンスを含んだ指示の理解、クリエイティブなプロジェクトでの共同作業など、複雑なタスクの能力が大幅に向上」しているという。また、より長く精細な会話が可能で、過去の質問に基づく理解能力も向上した。

 『Gemini Advanced』は「Google One AI Premium Plan」として、日本では月額2,900円にて提供されている。これには、2TBのストレージを含む「Google One プレミアムプラン」のすべての特典が含まれており、同プランの料金が月額1,300円であることを考えると、実質的な利用料金は1,600円ということになる。『Gemini Advanced』は現在は英語にのみ対応しているが、利用可能な言語は今後拡大される予定だ。

 なお『Gemini Advanced』はAndroidやiOSでも利用可能になる。Androidでは撮影した写真のキャプション作成や、読んでいる記事についての質問、タイマーの設定、通話、スマートホームデバイスの制御が可能。iOSでは画像の生成やソーシャルメディアに投稿する文章の作成を助けたり、旅行計画を立てたりすることなどができる。

■Google、OpenAI、Microsoft……3社の会話型生成AIの強みを比較

 それでは、他社の会話型生成AIと『Gemini Advanced』を比較してみよう。まずは、Microsoftが出資するOpenAIの『ChatGPT Plus』だ。『ChatGPT Plus』ではLLM「GPT-3.5」「GPT-4」が利用可能で、無料ユーザーと比較してレスポンスが高められている。また豊富なプラグインにより、AIの機能を拡張できるのも特徴だ。月額料金は20ドル(約3,000円)で、『Gemini Advanced』とほぼ同等だ。

 Microsoftは自社でも、会話型AI『Copilot Pro』を提供している。『Copilot Pro』は利用者が多いピーク時でも「GPT-4」「GPT-4 Turbo」に優先的にアクセスでき、『Microsoft 365』アプリで文章の下書きやメールの要約、プレゼンテーションの作成などが可能だ。『Copilot Pro』の月額料金は3,200円で、これまで紹介した会話型生成AIのなかでは最も高額だ。

 3つの会話型生成AIを比較すると、『Gemini Advanced』はGoogle製品との連携や実質的な月額料金の安さが魅力的だ。一方で、『ChatGPT Plus』は豊富に用意されたプラグインを活用した、柔軟かつ実践的な利用が可能だろう。『Copilot Pro』は(『ChatGPT Plus』ユーザーと比較して)優先的なアクセス権による快適性を得られるほか、OfficeなどのMicrosoft製品との連携が必要な場合に力を発揮してくれそうだ。

 ここで紹介した3つのサービスだけでも、それぞれが少しずつ異なる強みを持っていることがわかるだろう。自分にあうAIサービスを考えるうえでは、利用環境や用途を踏まえて選択してみてほしい。

Source
https://japan.googleblog.com/2023/12/gemini.html
https://japan.googleblog.com/2024/02/bard-gemini-ultra-10-gemini.html
https://japan.googleblog.com/2024/02/gemini-15.html

(文=塚本直樹)

左からGemini、ChatGPT、Copilot