作家・劇作家フロリアン・ゼレールの家族三部作より、『La Mère 母』『Le Fils 息子』の2作品同時上演が決定し、東京会場となる池袋・東京芸術劇場にて製作発表会見が行われた。会見には、日本版キャストの若村麻由美、岡本圭人、岡本健一、演出のラディスラス・ショラーが出席し、2024年4月の開幕を前に、意気込みを語った。

『Le Fils 息子』『La Mère 母』メインビジュアル

『La Mère 母』は、ゼレールが『Le Père 父』『Le Fils 息子』の執筆に先立って、彼が31歳の時に3部作の最初に書いた作品。2010年に本国パリで初演され、その後、さまざまな国での上演を経て、最近ではフランスの女優イザベル・ユペール主演でブロードウェイでも上演されて話題となった。

一方、『Le Fils 息子』は、フランス演劇界で最高の栄誉とされるモリエール賞を受賞するなど高い評価を受け、ロンドンウエストエンドなど世界13カ国以上で上演。2022年にはハリウッドでゼレール自身の監督によりヒュー・ジャックマンローラ・ダーンの出演で映画化、2023年に日本でも公開された。

緻密に人間の本質を描き出す演出力に定評のあるショラーだが、『La Mère 母』に関しては本国に先立ち、日本版で初めての演出を手掛けることになり「緊張しているが、ここにいる皆さんをとても信頼しているので、再びご一緒することに心配はない」と再タッグを組む日本版キャストに全幅の信頼を寄せる。

若村、岡本圭人、岡本健一については「まるでミルフィーユのように、麻由美さんは役柄をコツコツと構築し、進歩させる」「圭人さんの成長は、想像以上で驚かされた。演出家として、俳優の進歩を見られるのは幸せなこと」「健一さんは動物的な勘が鋭く、私はライオン調教師になった気分」とそれぞれ評した。

『Le Père 父』『Le Fils 息子』に続き、アンヌ役を勤める若村は、「役者冥利に尽きる」と感慨しきり。愛着を込めてショラーのことを“ラッド”と呼び、「愛に溢れた人。演出はとても明確で具体的なので、チャレンジしがいがある」とこちらも信頼感はたっぷりだ。また、『Le Fils 息子』の再演については「再演できるということは、演劇者にとっては特別なこと。(初演を)なぞるのではなく、もっと高みに、もっと深く臨みたい」と意欲を燃やした。

若村麻由美

また、ゼレールの戯曲に話題が及ぶと、「私たちそれぞれ役名はあるんですが、台本には『父、母、息子』といった書き方しかなくて。すべての父、すべての母、すべての息子へのメッセージを訴えたいんだと思う」(若村)、「シンプルな文体なので、観客の皆さんが、自分自身を見出すことできると思います。あえてディテールは語られていない、誰もが共感を覚える登場人物なのです」(ショラー)とその魅力を語った。

自分にとって、『Le Fils 息子』は、特別な舞台

アメリカの名門演劇学校での武者修行を経た岡本圭人は、2021年に『Le Fils 息子』の息子ニコラ役で、初舞台を踏み、実父である岡本健一との共演も話題を集めた。「自分にとって、『Le Fils 息子』は、特別な舞台。舞台俳優としての1本目であり、憧れだった父との親子共演。印象に残っているのは、初日の本番15分くらい前、一番緊張しているときに、父が楽屋に来てくれて『これからお前の新しい人生が広がっている。自分を信じてやってほしい』って。すごくいい言葉ですけど、今じゃないでしょ(笑)。不安的なニコラを演じるのに、(本番前に)満たされそうになり、涙が出そうだった」(岡本圭人)

初演に続いて親子で共演する岡本健一と岡本圭人

今回、岡本圭人は、戯曲の翻訳にも参加しており「直訳すると、どうしても翻訳調になってしまう。家族劇なので、会話のように翻訳したほうが、フロリアンの気持ちもしっかり届けられるかなと。語尾や主語の有り無しなど、日本語と海外の文化は違うので、翻訳家の皆さんや、若村さんと一緒に(翻訳を)進めていった」とこだわりを見せた。

岡本圭人

一方、父ピエール役を再演する岡本健一は、『La Mère 母』について「男は仕事が忙しく家を空けてしまうし、成長した子どもたちにもそれぞれの人生があって、巣立っていく。夫や子どもに全愛情を注いで生きてきた母親は、なぜこんなさみしい気持ちになるんだろうと考えてしまう」と物語の根底にあるテーマを分析。圭人との親子共演に対しては「楽しいだけの舞台じゃないし、作品をいかにお客さんに届けるかだけを考えているので、一緒にやれて幸せそうですねって言うかもしれませんが、そんなんじゃ全然ない」と表情を引き締めた。

岡本健一

最近では、『ハムレット』『ラヴ・レターズ』と立て続けで、若村と岡本圭人の共演が実現しており、若村は「本当に刺激的な存在」と声を弾ませる。「会うたびに成長しているので、『まるでにひまわりのようだね』って。大きな花を咲かせているので、ラッドも驚くと思いますし、著しい成長は観客の皆さんも感じるはず」と岡本圭人への感嘆の声をあげていた。

取材・文・撮影(会見写真):内田涼

<公演情報>
『La Mere 母』『Le Fils 息子』

作:フロリアン・ゼレール
翻訳:齋藤敦子
演出:ラディスラス・ショラー

【出演】 ■『La Mère 母』
若村麻由美 岡本圭人 伊勢佳世 岡本健一

■『Le Fils 息子』
岡本圭人 若村麻由美 伊勢佳世 浜田信也 木山廉彬 岡本健一

【La Mère 母 東京公演】
4月5日(金)~4月29日(月・祝)
会場:東京芸術劇場 シアターイースト

■チケット料金(全席指定・税込)
一般:9,800円
25歳以下:8,000円
65歳以上:9,000円
高校生以下:1,000円

発売日:2月26日(月)10:00~

【Le Fils 息子 東京公演】
4月9日(火)~4月30日(火)
会場:東京芸術劇場 シアターウエスト

■チケット料金(全席指定・税込)
一般:9,800円
25歳以下:8,000円
65歳以上:9,000円
高校生以下:1,000円
発売日:2月26日(月)10:00~

チケットはこちら:
『Le Fils 息子』
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2348218
『La Mere 母』
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2348099

【鳥取公演】
『La Mère 母』5月5日(日・祝) 14:00
『Le Fils 息子』5月6日(月・休) 14:00
会場:鳥取県立倉吉未来中心 大ホール

■チケット料金(全席指定)
一般:7,800円
2公演セット:6,800円(1枚あたり)
U18:3,500円

発売日:3月16日(土) 10:00~
【兵庫公演】
『La Mère 母』5月10日(金) 18:00 / 5月11日(土) 12:00
『Le Fils 息子』5月11日(土) 17:00 / 5月12日(日) 13:00
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

■チケット料金
8,500円(全席指定)
発売日:2月24日(土)

【富山公演】
『Le Fils 息子』5月18日(土) 14:00
『La Mère 母』5月19日(日) 14:00
会場:富山・オーバード・ホール 中ホール

■チケット料金(全席指定)
S席:8,500円
A席:7,000円
U25:3,000円
発売日:3月10日(日)10:00~

【山口公演】
『Le Fils 息子』5月25日(土) 18:00
『La Mère 母』5月26日(日) 14:00
会場:山口市民会館大ホール

■チケット料金(全席指定)
一般:6,000円
障がい者割引:5,500円
25歳以下:3,000円
高校生以下:1,000円

■2公演セット券
一般:11,000円
障がい者割引:10,000円

発売日:3月23日(土) 10:00~
【高知公演】
『Le Fils 息子』5月31日(金) 19:00
『La Mère 母』6月1日(土) 14:00
会場:高知市文化プラザかるぽーと大ホール

■チケット料金(全席指定)
一般(前売):8,500円
U23シート(前売):4,500円

■当日(全席指定)
一般:9,000円
U23シート:5,000円

発売日:3月23日(土)

【熊本公演】
『La Mère 母』6月8日(土) 14:00
会場:熊本県立劇場 演劇ホール

■チケット料金(全席指定)
S席:7,000円
A席:5,000円

■U25割・障がい者等割(全席指定)
S席:4,000円
A席:2,500円

※障がい者等割引は熊本県立劇場のみ取り扱い

発売日:3月8日(金)

【松本公演】
『La Mère 母』6月15日(土) 14:00
会場:長野・まつもと市民芸術館 主ホール

■チケット料金(全席指定)
一般:7,000円
U25:4,500円
発売日:4月6日(土)

【豊橋公演】
『La Mère 母』6月29日(土) 13:00 / 6月30日(日) 13:00
『Le Fils 息子』6月29日(土) 18:00
会場:愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール

■チケット料金(全席指定)
S席:10,000円
A席:7,000円
U25(A席):3,500円
高校生以下(A席):1,000円
S席セット券:18,000円(枚数限定・プラットチケットセンターのみ取扱い)
発売日:4月6日(土) 10:00~

公式サイト:
https://www.lefils-lamere.jp

『La Mère 母』『Le Fils 息子』の2作品同時上演製作発表会見より、岡本健一、岡本圭人、若村麻由美、演出のラディスラス・ショラー