昨年12月にHKT48を卒業した田中美久が、初主演ドラマ『シンデレラ・コンプレックス』(MBSドラマ特区枠にて、2月29日スタート)で新境地を見せる。同作は、教師と教え子の女子高校の禁断の不倫をリアルに描いた人気ウェブ漫画をドラマ化。田中は、中毒的な魅力で担任教師・陽介をドロ沼不倫へと引きずり込む地雷系JK・前園由良を演じる。「自分にブレーキをかけずに挑みたい」と、大胆なシーンにも体当たりで挑んだ。そんな彼女にアイドル卒業後の演技に対する心境や、今年の展望などを聞いた。

◆アイドルを卒業したばかりなのに「大丈夫かな…」

 ――卒業後、初のドラマ主演ということでオファーがきたのときの心境を教えてください。

田中美久(以下、田中)原作がすごい人気だということは知っていたので、「嬉しい」という気持ちと同時に、「いきなり大丈夫かな……」という不安もありました。でもこれから俳優としてお仕事をしていくうえで、いいきっかけになると思って。自分にブレーキをかけずに仕事として、この作品に真剣に全力で取り組んでみようと思って受けさせていただきました

――不安になった部分というのは?

田中 アイドルを卒業したばかりなのに、女子高生から誘って担任の先生と不倫するっていう衝撃的なヒロインだったので(苦笑)。絶対に衝撃を受けると思うんですけど、それが話題を呼んでくれたらいいなと。この役を演じるのは本当に大変だったので。今まで応援してくださっていた方にも「頑張ってるな」と思って見てもらえたら嬉しいです。

――アイドル時代の経験が今回の役づくりに役立った部分はありました?

田中 由良ちゃんはウサギみたいにピョンピョンしていて、私もいつもステージ上でピョンピョンしてたから、そこは演じやすかったです(笑)。アイドルをやっていなかったら、地雷系ファッションも恥ずかしかったと思う。そういう点はアイドルの経験が活かされたなって。

――現場でも共演者から「この地雷系ファッションを着こなせるのは田中美久だけだ」と絶賛されていたそうですね。

田中 「違和感がない」って言われたのが嬉しかったです! 作品の世界観を邪魔しないようにしたいなと思っていたので。

◆他の俳優の演技を見て「悔しい」

――昨年12月の卒業前にSPA!にも出ていただきましたけど、そのときは「卒業したらスーパーのレジ打ちもしてみたい」という話も。

田中 今のところは、芸能界で頑張らせていただきたいです(笑)。卒業してから作品をたくさん見るようになったんですが、他の俳優さんの演技を見るたびに「悔しい」っていう気持ちも沸いてきて。私は駆け出しなんですが、もっと上手くなりたい、活躍したいっていう思いは強くなりました。自分が主演という形で演技させてもらえるのは不思議な感覚でしたけど、どんな反応があるのか楽しみです。

――作品を見ているなかで、1番悔しくなった俳優は誰でしたか。

田中 連続ドラマ「ブラッシュアップライフ」の安藤サクラさんの演技を見たときに、こんなにも自然に魅せる演技ができるのがすごいなと感じました。何度もリハを重ねてるはずなのに面白いんだろうって。それから、ドラマ「最高の教師」でご一緒した松岡茉優さんも本当にすごかったです。大勢の生徒を前にして、たとえセリフを間違えたとしても流れを止めずにカットがかかるまで役に入って演技を続けていて圧倒されました。私も今回は生徒役なんですが、いつか茉優さんのような素敵な教師役ができるように頑張りたいなと思いました。

朝ドラヒロインを目指す勢いで

――今作は「不倫」がテーマになっている作品ですが、禁断の不倫に突っ走る由良はどういう気持ちで演じていましたか?

田中 由良ちゃん自身が自分の顔にコンプレックスがあって、何度も整形を繰り返すような子。恵まれていない環境で嫌な思いもしてきたから、どうしても欲しいものは欲しいという気持ちで、思うがままにやり過ぎていくんですよね。最初は演じながら「何してるのよ。由良って嫌だなぁ」って思ってたけど、演じているうちに由良ちゃんがどんどん可愛く見えてきてました(笑)

――由良のように田中さんが、難しいけれど手に入れたいものってあります?

田中 朝ドラのヒロインを摑みたい。そこを目指すぐらいの思いで、お芝居と向き合っていきたいです。ただ、今作を演じていて感じたんですけど、私は役に入りすぎてしまうのでプライベートとの境界線がわからなくなっちゃうんです……。なので、お芝居だけをやっているとメンタル的にもキツくなってしまうと思うから、グラビアやバラエティ番組などの幅広くお仕事もさせていただけたら嬉しいですね。

――由良を演じていた間はどんな感だったんですか。

田中 メンタルが終わってました(笑)。監督さんから、「クランクインするまで由良として生きてみて」って言われて。原作を全部読んで、由良の生い立ちやツラい過去などの背景も知っていたので、最初は本当にしんどかった。私は声も高くないし、喉も枯れてたし。実際に撮影に進んでいくと、私の演技を見ていた監督から「もう由良と仲良くなれたから、すぐに由良を出せるようになったね」と褒められて。それが嬉しくて2日ぐらい休みがあったときも、『由良を忘れないようにしなきゃ』と思って過ごしていたんです。なので、プライベートで(HKT48の)メンバーと話してると、「なんかあざとくなってない?」って言われてました(笑)

◆仲良くなった「意外な人物」

――あとは、不倫相手の妻を演じる宇垣美里さんとは現場で意気投合して、ご飯に行ったら初めて記憶を無くすぐらい盛り上がったと。

田中 そうです(笑)。私は覚悟を決めて臨んでいた作品だったので、それを説明したときに、宇垣さんがすごく褒めてくださって。ご飯を食べた日に私がバラエティ番組の収録があって、上手くいかなくて落ち込んでたんですよ。その話も聞いてくださって、お姉ちゃんみたいに慰めてくれてたんですよ。で、ヤケ酒をしてたらいつの間にか……。

――宇垣さんが介抱してくれた、と(笑)

田中 たぶん……。気づいたら家に着いてました。宇垣さんが明日早いからって言ってて一緒にタクシー乗ったところまでは覚えてるんですけど。翌日連絡したら「酔っ払っても良い子だったよ」と言われて安心しました(笑)。本当に優しかったです。

◆「田中美久」の攻めたグラビアをみせていきたい

――3月9日にはアイドルとしての卒業コンサートが控えていますね。演技に没頭するとアイドルに戻りづらくならないもの?

田中 昨年末でHKT48から卒業しているので、不思議な気持ちはありますね。「1日おかえり!」っていう感じで迎えてくれたら嬉しいです。でも、ちょうどこのドラマの初回が流れてからのコンサートなので、ブーイングとかされたらどうしよう……(笑)。こういう場を作ってもらえることは本当にありがたいので、これからも応援しようと思ってもらえるコンサートにできたらいいなと思ってます。

――アイドルを卒業してからグラビア活動も継続されていますけども、心境の変化はありました?

田中 よりオープンになれた感覚はあります。グラビア撮影のメイキング動画も配信できるようになったので表現の幅が広がりました。今まで100冊以上の表紙を飾らせてもらっているのですが、実は国内しか撮影に行ったことがないんですよ。なので、卒業してから初めて海外でのグラビア撮影に行けるのが嬉しい! 国内でこの時期の水着撮影って本当に寒いんですよ……。楽しみで仕方がありません(笑)。これまではアイドルとしてのグラビアでしたけど、「田中美久」の攻めたグラビアを見せていきたいですね。

――では最後に、今年掲げている目標を。

田中 グラビアを頑張りたいっていう気持ちは強いので、(年間で雑誌の表紙を最も多く飾った女性タレントを表彰する)『カバーガール大賞』の1位を狙いたいです。こないだカバーガール大賞で第8回・9回と二連覇をしている、えなこさんに初めて会ったんですよ。私が胸をジーっと見てたら、「触っていいですよ~」という感じだったので、つっついてきました(笑)。

取材・文/吉岡 俊 撮影/後藤 巧