圧倒的な成果を上げるために、本当に注力すべき重要指標(KPI)とは何か?本連載は、ロングセラーのマーケティング入門書『ドリルを売るには穴を売れ』の著者が、“顧客に刺さる”マーケティング戦略のつくり方と追うべきKPIについて徹底的に掘り下げた『顧客の「買いたい」をつくる KPIマーケティング』(佐藤義典著/朝日新聞出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。
第5回は、10年間で売上が6倍という圧倒的な成果を上げた「ウタマロ石けん」が重視した「戦略の急所」と「2つのKPI」について解説する。
<連載ラインアップ>
■第1回 「ドリルを売るには穴を売れ」マーケティングの大家・レビットの真意とは?
■第2回 ハーゲンダッツを売るには、何を「強み」として、どう伝えればよいか?
■第3回 10年間で販売個数が約6倍、「ウタマロ石けん」の独自のマーケテイング戦略
■第4回 製品の「強み」を顧客に伝え切る、ウタマロ石けんの戦略の「急所」とは?
■第5回 「売上を増やせ!」と叫ばなくても、必然的に売上がアップする方法とは?(本稿)
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■ウタマロ石けんの「追うべき指標」(KPI)
この連載の最後に、ここまで見てきた「ウタマロ石けん」の事例を使い、「追うべき指標」としてのKPIの考え方を紹介します。
ウタマロ石けんのレベルまで急所が明確になっていれば、「追うべき指標」(KPI)は自動的に決まります。
本連載の第2回で見てきたように、KPIには、「行動量指標」と「反応量指標」の2つがありました。
行動量指標(KPI):お客様の「買いたい」を作った自社の行動量(=行動の進捗指標) 反応量指標(KPI):行動の結果としてのお客様の「買いたい」という反応量(=ゴール達成の進捗指標)「子どもの靴下の泥汚れが落ちる」というのがウタマロ石けんの「強み」であり、「あなたから買いたい」理由でした。ただ、その「強み」は口で言うだけでは伝わりにくいので、実際に使って試していただき、泥汚れが落ちることを実感していただくことが、お客様に「強みを本当の意味でご理解いただく」上でのカギとなります。
その「強み」を具体的な「行動」に落とし込んだのが、戦略の「急所」である「試せばわかる」です。お客様に実際に試していただくと、「ウタマロ石けんを買いたい」が生まれるのです。
となると、「試してもらった人数」が「追うべき指標」(KPI)となります。整理しますと、
急所:試せばわかる=試してもらえれば、強みが伝わり売上が上がる 行動量指標(KPI):サンプルを配布した顧客ターゲットの人数 反応量指標(KPI):サンプルを試し、汚れ落ちを実感した人の数 最終ゴールの指標(KGI):店に買いに行った人の数(=売上)となります。ここで、「追うべき指標」(KPI)は「売上」ではないことがわかります。
追うべきは、
行動量指標(KPI):サンプルを配布した顧客ターゲットの人数 反応量指標(KPI):サンプルを試し、汚れ落ちを実感した人の数のどちらかです。これらを増やせば、「買いたい」が作れ、売上は結果として必然的に上がります。売上を追う必要がなくなるのです。
行動量指標と反応量指標のどちらを追うべきか、ですが、「自社の行動量」と「顧客の反応量」が相関していることを確認しましょう。「自社の行動量」が増えれば、「顧客の反応量」が増えるはずです。そうなっていれば、行動量指標と反応量指標の、どちらを追っても問題ありません。
この場合は、「自社の行動量」と「お客様の反応量」はほぼ等しい、と言えそうです。
顧客ターゲットが「子どもの靴下の泥汚れに悩む親」ですから、石けんのサンプルがこの顧客ターゲットに届けば(=行動量指標)、お客様はほぼ間違いなくサンプルを使う(=反応量指標)だろうと推測できるからです。
ですので、「行動量」と「反応量」のどちらを追っても良い、ということになりますが、この場合は「行動量」である「サンプルを配布した顧客ターゲットの人数」を追う方が作業としてラクだと思います。
今回は「サンプルを配布した顧客ターゲットの人数」がウタマロ石けんの「追うべき指標」、すなわちKPIとなります。
「サンプルを配布した顧客ターゲットの人数」が多ければ多いほど、ウタマロ石けんの「強み」を実感する人が増えます。すると、その方々が「買いたい」と思い、スーパーやドラッグストアに買いに行きます。すると、売上が上がります。
そのために、年間50万個という大量のサンプルを配布しているわけです。それがウタマロ石けんにとって、売上を上げるための「適切な努力」であり、「追うべき指標」なのです。
経営者は「売上を増やせ!」と叫ぶ必要はありません。「追うべき指標」(KPI)である「サンプルを配布した顧客ターゲットの人数」を増やす方法を考え、実行していけばその「結果」として売上が上がるんです。
そしてそれは、「特売での安売り」などに比べて、極めて「適切な売上向上策」となります。
ウタマロ石けんには、もともと「子どもの靴下の泥汚れが落ちる」という「強み」がありました。この「強み」を伝え切れれば、「買いたい」を生み出せます。そのための具体的な手法がサンプルの配布です。
「売上」という「結果」を追うのではなく、サンプルを配布して「強みを伝え切る」ことで、「売上が10年で6倍」になるという「結果」を得られました。そしてそれは、「試せばわかる」という戦略の急所を刺したことで実現されたんです。
<連載ラインアップ>
■第1回 「ドリルを売るには穴を売れ」マーケティングの大家・レビットの真意とは?
■第2回 ハーゲンダッツを売るには、何を「強み」として、どう伝えればよいか?
■第3回 10年間で販売個数が約6倍、「ウタマロ石けん」の独自のマーケテイング戦略
■第4回 製品の「強み」を顧客に伝え切る、ウタマロ石けんの戦略の「急所」とは?
■第5回 「売上を増やせ!」と叫ばなくても、必然的に売上がアップする方法とは?(本稿)
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