静岡大学工学部(電子工学研究所兼任)の小野篤史教授の研究グループは、金のナノ粒子でできたカラーフィルムの開発に成功しました。

【研究のポイント】
・直径50nm(ナノメートルは10億分の1メートル)程度の金のナノ粒子をおよそ100億個並べた膜で作製
・金のナノ粒子固有の発色を示し、高い色彩性を有するカラーフィルム
ステンドグラスのように半永久的に色褪せないカラーフィルム
・フレキシブル性と伸縮性を有したカラーフィルム

 小野篤史教授の研究グループは、直径50nm程度の金ナノ粒子を自己組織化的に集積させた膜(集積させたナノ粒子数はおよそ100億個)を作製し、シリコーンの一種である無色透明なPDMS(ポリジメチルシロキサン)を滴下することにより金ナノ粒子固有の発色を示したカラーフィルムとなることを発見しました。このカラーフィルムは金でできているため、顔料や染料といった着色剤とは異なり色褪せることがありません。PDMSは加熱温度によってフレキシブル性と伸縮性を有したり、ガラスのように硬くもなります。金ナノ粒子の大きさや形状に応じて、青色、緑色、マゼンタ色など様々な色のカラーフィルムの作製に成功しました。

 本研究で得られた研究成果は、今後、フレキシブルディスプレイや宇宙などの過酷環境下においても使えるようなカメラのカラーフィルタへの応用につながると期待されます。

 なお、本研究成果は、2024年2月9日に、American Chemical Societyの発行する国際雑誌「ACS Applied Optical Materials」に掲載されました。

金ナノ粒子で作製したカラーフィルム

【研究者コメント】

静岡大学工学部 教授 小野篤史(おのあつし

 金は金色というのが一般常識ですが、なぜ金色なのかということを考えることが重要なことだと思います。その光物理を理解すると金ナノ粒子が金色とは異なる色を呈することも理解でき、さらに応用することができます。不思議だな、面白いなと皆さんに興味を持っていただけるような研究を今後もしていきたいと思います。

【研究概要】

 本研究は、金属ナノ粒子を着色剤としたカラーフィルムの開発を目的とする。金属を材料とすることにより、顔料や染料などの着色剤では得られない発色性の高いカラーフィルムが得られ、その色はステンドグラスと同様に褪せることがない。金属ナノ粒子をはじめに単層に集積させた後、分散させるというアプローチにより、薄層でありながら粒子密度の高い膜を作製する。

【研究背景】

 高い発色性を得るためにはその原料の濃度を高めるあるいは量を増やせば良いが、金属ナノ粒子の場合その強い光散乱性から透過性が損なわれることになる。そのため、如何に薄い領域内の面内濃度を高くするかが課題であった。

【研究の成果】

 PDMS (Poly dimethyl siloxane)フィルム上に自己組織化的に最密充填配列させた金ナノ粒子単層集積膜を形成し、その上にさらにPDMS液を滴下すると、集積していた金ナノ粒子が浮き上がり、薄さ1µmの限定範囲に立体分散することを発見した。PDMSは硬化温度調整によりフレキシブル性も得られるため、フレキシブルなステンドグラスとして曲面形成など、適用範囲が拡がる。金ナノ粒子の大きさや粒子形状を変えると、紫、青、シアン、緑、マゼンタ、赤紫と様々な色を示すことを実証した。

【今後の展望と波及効果】

 今後、大面積に製造できる装置が開発されれば、実用展開が期待される。近年のカメラやディスプレイの高画素化に伴い、カラーフィルタの微細化も求められており、本技術はそのブレークスルーとなり得る。また、従来のステンドグラスに対してフレキシブル性を付与できるため、曲面など任意の場所に適用され、汎用性が格段に向上する。

【論文情報】

掲載誌名: ACS Applied Optical Materials

論文タイトル: Highly Chromatic Plasmonic Color Film by Sterical Dispersion of Au Nanoparticles in Polydimethylsiloxane

著者: Ayana Mizuno and Atsushi Ono

DOI: https://doi.org/10.1021/acsaom.3c00401

配信元企業:国立大学法人 静岡大学

企業プレスリリース詳細へ

PR TIMESトップへ