伊東純也と中村敬斗が所属していることで知られるスタッド・ランス。フランス・リーグアンで現在8位という成績となっている。
その指揮官を務めているのがイングランド出身の若手監督ウィル・スティール。フットボール・マネージャーというゲームのプレーヤーからコーチに転身したという31歳で、今もUEFAのプロライセンスを所有していないためクラブが毎試合罰金を支払い続けているという異例の人物だ。
スタッド・ランスでは当初アシスタントコーチを務めていたものの、2022年10月にオスカル・ガルシア前監督が解任されたことを受けて30歳で暫定指揮官に就任。それから5試合連続無敗を続けたことから正式な監督として雇われることになった。
それから1年半を指揮して成績は56試合で23勝16分け17敗。得失点差は+16と安定した成績を残しており、予算が限られる中でリーグアンの上位を狙えるチームを構築している。
ただ、この冬には中心選手のアゾール・マトゥシワをレンヌへと放出した上、アジアカップとアフリカネーションズカップに6人の選手を送り出すことになり、1月22日のソショー戦から公式戦5試合に渡って勝利がない状況に。順位も5位から8位まで急落した。
ウィル・スティール監督は『The Athletic』のインタビューで以下のように話し、クラブの方針との折り合いをつけることが難しかったと明かしたそう。
「このクラブのDNAと運営方針のため、我々は選手を獲得して、そして半年から1年ごとに売っていく。そしてチーム全体が更新されていく。
クラブからは『アゾール・マトゥシワを売ることはチャンスであり、自分たちはそうしなければならない立場だ』と説明された。それはよく分かっているし、リスペクトしている。
しかし、私は本当に野心的なんだ。自分自身に挑戦したかったし、このチームで最後まで戦い続けたかった。『我々にこんなチャンスは2度とないぞ』とね。ウィンターブレイク前には5位だったから」
ただ、チームはアゾール・マトゥシワをレンヌへと売却した上、目立った補強を行うこともなかった。
「熟考しなければならないし、再出発しなければならない。新しいチームを作り上げるために時間が必要になった。それが我々が半年ごとに行っているようなことだ。
選手を売って僅かなお金を稼ぐことはできる。そして8位から12位くらいでフィニッシュするような安定感あるクラブにすることもできる。
一方で、本気で上を目指して最高の選手をチームに残し、1~2年の間ヨーロッパの大会に出場し、それによってお金を得るのを狙うこともできる」
1960年代から70年代にかけてはフランス屈指の強豪であったスタッド・ランスであるが、現在は選手を育成して売らなければ経営が苦しくなる立場のチームだ。
ウィル・スティール監督としては5位の状況からさらに上を目指したかったものの、クラブは少しでも高く売れるときに選手を放出しなければならない…両者の立場はなかなか難しいものがあったようだ。
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