ウーバーイーツの配達中、想像の斜め上をいく出来事に遭遇することがたまにあります
ウーバーイーツの配達中、想像の斜め上をいく出来事に遭遇することがたまにあります

連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長チャリンコ爆走配達日誌】第37回

ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!

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先日、東京ドームで行なわれた「オードリーのオールナイトニッポン」のイベントのふたりのフリートークゾーンで、若林さんがこのイベントのためにウーバーイーツ自転車配達員として50回以上配達したことを告白。置き配にするべきかどうか迷った話など、配達中に困ったエピソードを語っていました。この連載でもこれまで、困った話をいろいろと書いていますが、今回はそのなかでも特殊なもの、想像の斜め上をいくような出来事に遭遇してしまった話を紹介します。

まずは、最近体験した話。

とある酒屋さんから運んだのは、網状の発泡スチロールにグルグルとくるまれた木箱。私は酒を飲めないので、配達員用のアプリに表示されている商品名を見てもピンと来なかったのですが、店員さんから受けた配達する際の注意を聞くと、どうやらものすごく高価なワインのようです。

リュックに入れ、木箱を倒さないよう慎重にワインを運んで目的のマンションへ。建物の入口でインターホンを押すと、スピーカーから女性の声。いつものように「お待たせしました。ウーバーで参りました」と言うと......。

「頼んでないです」

一旦「すみません。インターホンを押し間違えました」と言って会話を終了。再度、住所と部屋番号を確認しましたが、配達先は押し間違えた部屋で合っています。そこで再び押すも。

「頼んでないです」

そこで注文者の名前をみると、男の人っぽい名前が。この方が住所を間違えたのではないかと思い、電話してみると......。

「妻の誕生日にサプライズのプレゼントを送ろうと思って」

状況は理解しましたが、知らない配達員のおじさんがもう一度インターホンを押しても出ていただけない可能性があります。そこで奥さんに事情を話して欲しいと伝え、3分後にインターホンを押し、なんとか部屋まで届けることができました。

ウーバーイーツのシステム上よく起こるのが、配達員がなかなかマッチングせず時間がかかってしまうパターン。誤配達や商品の入れ間違えを防ぐため、商品を梱包した袋に伝票を貼る店があるのですが(配達員にとって、このシステムはすごくありがたいです)、そこの注文受付時間の欄を見ると「これは注文された方からBAD評価を受ける可能性が大きいな」と思われるような時刻が記されていることがあります。

とある日の14時ごろ、商品を受け取りに向かったのは大きな広場の中。1km以上離れたその店の注意書きにあったのは「当店はキッチンカーになります」の文字。建物のない広場へ向かうのはそんな理由なのかと納得してペダルを漕ぎ、指定された場所に到着すると、広場にたくさん停まっているキッチンカーはランチタイムの販売を終えて撤収の作業中。

「注文が入ってから私が配達を担当するまでにかかった時間や、私が店に到着するまでの時間がかなりかかったのだろうな」と思いながら、注意書きに記されたキッチンカーの特徴を頼りに店を探すも見つかりません。仕方なく、撤収作業中のキッチンカーの方に聞いてみると、

「あの店ならもう撤収して帰ったよ」

配達員が長い間マッチングしなかったのか、ウーバーから注文が入っているのを見過ごしたのかわかりませんが、受け取りに行った店がなかったのは初めて。配達員用のアプリには、受けた注文をキャンセルする際「営業時間外だった」「商品ができあがるまで時間がかかる」など、いくつかの理由が書かれたボタンの中からキャンセル理由を選ぶシステムになっています。その中に「指定の場所にお店がなかった」というのがあり、初めて見た時は「そんなことってあるの?」と思いましたが、「こういうことってあるんだ」と思いながらボタンを押しました。

最後は、マンションのセキュリティに関するトラブル。

最近建てられたマンション、特に高級住宅地にある物件や湾岸エリアのタワーマンションではセキュリティがガッツリ強化されています。そのため、建物の入口から部屋の前に到着するまでの間に何箇所もインターホンを押して、住民の方に自動ドアを開錠していただいたり、エレベーターのロックを解除していただく必要があります。そのあたりのことは、以前「部屋にたどり着くまで10分以上かかる!? タワーマンションへの配達はつらいよ」で書かせていただきました。

そんな、セキュリティが強化されたマンションの多いエリアで配達していた冬のある日のこと。建物の入口、エレベーターの前、部屋のインターホンを押して5階に住む方の部屋の前に商品を置き配、その後エレベーターに乗り込み「1」のボタンを押すと、本来なら光るはずのボタンの反応がありません。スマホ対応の手袋を着用したままボタンを押したためボタンが反応しなかったのだと思い、手袋を外してボタンを押しても「1」の数字が光りません。

何度もボタンを押しているうちにドアが閉まり、エレベーターは上のフロアに移動を始めました。そして8階で停止。住民の方が乗るのかと思ったら、エレベーターがストップしました。どうやら乗る人がいない間は建物の中間にあたる階で待機する仕様のエレベーターのようです。

何度押しても「1」のボタンが反応せず、配達員用アプリの「配達完了」ボタンを押してしまったため注文された方にも連絡を取ることができません。仕方ないので「開」のボタンを押して8階に出てみたのですが、人の気配がありません。もう一度エレベーターで「1」のボタンを押そうと、「▼」のボタンを押してエレベーターに乗るも、やはり反応しません。

と、その時エレベーターが上の方に動き出し、12階から住民の方が乗ってきました。私が経緯を話してエレベーターで1階に戻りたいと伝えると......。

「このマンションは降りる時も住んでいる人にエレベーターの開錠作業をしてもらわないと1階に戻れないんだよね。部屋の鍵をエレベーターのセンサーにタッチしたら1階のボタンが押せるけど、配達している人は大変だよね」

この方のおかげで、無事マンションから脱出することができましたが、危うくマンション内で遭難してしまうところでした。

こんな感じで想定外のトラブルもありますが、楽しみながら配達を続けております。

文/渡辺雅史 イラスト/土屋俊明

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