全国のコンビニエンスストアや書店、ホビーショップなどで展開している、ハズレなしのキャラクターくじ「一番くじ」。発売から20年を超えたことを記念した「一番くじ『超20周年』プロジェクト」の一環として、2月23日(祝)・24日(土)の2日間、「一番くじ」初の単独イベント「一番くじ 超20周年祭 ~サンキューペリペリマッチ~」(会場:東京・池袋 サンシャインシティ)が開催される。

【写真を見る】「一番くじの一番くじ」B賞 一番くじブランド アクリルスタンド

2023年度の国内売り上げは724億円を記録(見込)。20年間(2003年~2023年3月見込)のくじ券総発行枚数は約7億5000万枚、取扱店は約6万6000店舗と、あらゆる面で驚異的な実績を誇る「一番くじ」だが、本記事では、そんな同商品を手掛ける開発陣にインタビューを実施。

BANDAI SPIRITS 執行役員 ロト・イノベーション事業部 ゼネラルマネージャーの藤田寛之氏と、企画第一チームの高橋和晃氏に、「一番くじ」がヒットした理由や今後の展望などを聞いた。

■20年を経て、親子二代で楽しめるコンテンツに成長

――「一番くじ『超20周年』プロジェクト」とは、どのような催しになるのか?その概要を教えてください。

【藤田】「一番くじ」が現在の販売形態になって20周年を超えたこと、くじ券の発行枚数が約7.5億枚(見込)を超えたことを記念して、お客様に感謝の気持ちをお伝えしたい……というのが、立ち上げのきっかけになります。まずは1月9日を“一番くじの日”に制定して、そこから続々と超20周年を記念した企画を展開していきます。2月に実施する「一番くじ 超20周年祭 ~サンキューペリペリマッチ~」は、来場特典として「一番くじ一番くじ」をご用意したり、とあるギネス記録に挑戦したりと、見どころ満載になっておりますので、ご期待ください。

――さまざまなIPのキャラクターグッズだけでなく、「一番くじ」そのもののグッズも作られるくらい、一番くじは多くのファンから支持されているコンテンツなんですね。

【藤田】ありがたいことにそうなっております。スタートから20年を超え、初期のころから親しんでくださった方たちが大人になられて。今ではお子さんといっしょに、ご家族で一番くじを楽しんでくださるケースも増えてきています。

――商品ラインナップも、親子二代で楽しめるものになっていると?

【高橋】一番くじでは、アニメ、芸能人、企業コラボなど、幅広いジャンルのくじを毎年多く展開しております。1本の一番くじの中でもいろんな賞品が入っているので、お子さんは「フィギュア」や「ストラップ」狙い、親御さんはかわいい「タオル」や「食器」狙いで引いて、当たった賞品を交換したりして楽しんでいただいているケースは多いと感じます。ちなみに、新商品は土曜日の朝に発売することが多いので、最近では目当ての一番くじを引くために、土曜の朝からご家族が、コンビニ前に並んでくださるという事例も増えてきました。

一番くじの創設期、変革期、飛躍期について

――ここで改めて、一番くじが誕生した経緯を教えていただけますか?

【藤田】もともとは風の力でくじを回転させる風力抽選機「とるとるキャッチャー一番くじ」として、物産展やGMSの玩具売り場などで展開していたんです。「さまざまなキャラクターグッズを展開すれば、よりヒットするのでは?」と思いつきまして。機器はもっと簡易な“くじ箱”に変更し、展開する先もより身近なコンビニに切り替えて、現状に近いフォーマットが完成した……という次第です。

――一番くじの歴史は、創設期、変革期、飛躍期といった3つ期間に分かれるそうですが、その流れについて、ザックリと教えていただけますか?

【藤田】「とるとるキャッチャー一番くじ」をリリースした1996年から、ユーザーの皆さんとの交流や、情報発信を目的としたWEBサイト「一番くじ倶楽部」を立ち上げた2006年までが“創設期”になります。キャラクター商品を取り扱うようになり、コンビニ展開に踏み切ったこと。マス向けの商品から、徐々にコアなファン層(男性ハイターゲット)向けの商品を扱うようになっていったのも、このころになります。

“変革期”は、さまざまな展開を試みる中で一時は赤字に転落するものの、再び売り上げを伸ばし、V字回復を遂げるまでの期間で、2007年から2019年までがそれに当たります。この期間はとにかく試行錯誤の連続で、女性ハイターゲット向け商品の拡充や書店での販売、それらに加えて“ラストワン賞”や、オンラインサービス「一番くじONLINE」なども、この時期にスタートしました。

【高橋】ラストワン賞とは、最後のくじを引いた人がもらえる特別な賞品のことで、こちらを採用したことで、お目当ての賞品が出てしまった後でも、最後まで一番くじを楽しんでいただけるようになりました。大勢の方に喜んでいただけて、大成功した施策だと思っております。

――そうして2020年からは“飛躍期”に突入された、とのことですが……。

【藤田】このころはコロナ禍の影響もあり、一番くじのステータスも大きく変わることが求められる時期でした。外出が制限され、お出かけができない状況が続く中、コンビニで楽しめる一番くじは「もっとも身近で楽しめるエンタメ」として、改めて注目していただけて。より便利になるように「一番くじONLINE」をリニューアルしたり、ドラッグストアでの販売をスタートしたり。他にも「一番くじ公式ショップ」や、駅ナカで一番くじを体験していただける「一番くじPOP-UP STORE」の展開も、この時期からになります。

■数ある商品のなかで最もヒットしたIPとは?

――「一番くじ」がここまで長く親しまれてきた理由は何だと思われますか?

【藤田】理由は二つあると考えていまして。まず一つは、単なる物販ではなく、“くじ”というシステムにおもしろさを感じてもらえていると思うんですね。くじを引くときのドキドキ感だったり、何度も挑戦することで目当ての賞品を当てる喜びであったり。そういった点が長く愛していただけている最大の要因だと捉えています。

そして二つ目の理由は、「お客様との接点を大切にしている」ということではないかと。「一番くじ倶楽部」は現在、約800万人もの方に会員登録をしていただき、商品展開に関するアンケートなど、ご意見を頂戴する機会を定期的に設けさせていただいております。そうした「お客様の望まれる商品をいっしょに考えていく」体制ができていることも、愛着を持っていただける要素なのではないかと認識しています。

――これまでにリリースされた一番くじのラインナップで、「実はこんな意外な商品もありました」というIPがあれば教えてください。

【藤田】3、4年くらい前から、飲食店やお菓子メーカーといった企業IPとのコラボ商品を展開しているのですが、これがかなり好評でして。お菓子のパッケージデザインを流用したグッズや、人気メニューをあしらったクッション、ブランケットなど、そういったアイテムはびっくりするくらい女性のお客様に好評で、いずれも好セールスを記録しています。一番くじではこれまで再販はしてこなかったのですが、これらの商品は人気が凄まじく、例外的に再販を行うことになりまして。我々としても、非常に勉強になるコラボ展開でしたね。

■超20周年をきっかけにワールドワイドな展開を目指す

――今後、挑戦を検討されている、新しい試みがありましたら教えてください。

【高橋】私からは3つ答えさせていただきます。まず一つ目は、一番くじそのもののIP化です。「一番くじ 超20周年祭」に合わせて、「一番くじ一番くじ」をご用意しましたが、そちらでの反応を見させていただきながら、どういった展開が可能かを検討していきたいと考えています。

二つ目は、お客様との交流の場をより良い形に改善していくことですね。私も藤田と同じく、一番くじをここまで続けてこられたのは、お客様との深い繋がりがあったからこそだと認識しているので、「一番くじ倶楽部」をはじめ、SNSなど、よりお客様にとって情報を得られるものにしていきたく思います。

そして三つ目は、これまで以上に大勢の方に一番くじを知っていただけるよう、タッチポイントの場をさらに増やす展開に注力するつもりでいます。

【藤田】高橋の話を捕捉する形になりますが、現在、「一番くじ公式ショップ」は全国に20店舗ありまして、そう遠くないうちに、すべての都道府県に出店することを一つの目標として掲げております。それと、自分たちでいうのは気が引けますが、この一番くじというシステムは、世界でも通じるビジネスモデルだと思うので、今後はワールドワイドな展開も視野に入れて、規模を拡張していきたいと考えています。すでにアジア圏では、いくつかの国や地域で一番くじを展開しているのですが、中国、台湾、韓国では数字が伸びてきているので、このタイミングで、さらに勢いを加速させてたいですね。

取材・文=ソムタム田井

「一番くじ」を手掛ける開発陣に、さまざまなエピソードを語ってもらった/撮影:ソムタム田井