人生100年時代、年金だけでは心もとない中で、老後のお金にまつわる常識が大きく変わりました。そのため、定年前後で判断しなければならないお金の選択が、これまで以上に老後生活を大きく左右するようになってきています。本稿では、森田悦子氏の著書『定年前後のお金の選択』(青春出版社)より一部を抜粋し、「知っている人だけが得をする選択」をQ&A形式で紹介します。

転職経験のある人は「忘れている企業年金」があるかも

かつて、持ち主不明の年金記録の存在が明らかになった「消えた年金」が話題となったことがありました。

ところで、しっかりと記録されているにもかかわらず、当の本人が忘れているために宙に浮いた年金もあります。昔、勤めていた会社の企業年金です。

3階建ての3階部分の企業年金は、勤め先が社員の老後のために積み立てていますが、勤務先に企業年金制度があることを知らない人も少なくありません。

途中で辞めた会社となるとなおさらですが、すでに辞めている会社であっても、老後に請求すればいくらかの年金を受け取ることができることがあります。

企業年金連合会、国民年金連合会などに確認してみよう

たとえば、厚生年金基金や確定給付年金という企業年金を持つ会社を退職すると、その人の年金資産は企業年金連合会という組織に引き継がれ運用されていることがあります。

老後に請求すれば支給を受けられますが、この手続きをしていない人が、100万人を超えているそうです。連合会が案内を送っても、姓や住所が変わっていると、その案内が届かないのです。

また、企業型確定拠出年金(企業型DC)を持つ企業を退職している人も、自分の年金資産をiDeCoに移すか転職先の企業型確定拠出年金に移す移換の手続きが必要です。年金資産が投資信託などで運用されている場合、移換の手続きを怠ると自動的に売却・現金化され、国民年金基金連合会に移されます。これを「自動移換」といいます。

自動移換そのものに手数料がかかるうえ、預かってもらっている間も手数料が差し引かれ続け、最悪の場合は加入期間が足りずに老後に引き出すこともできなくなるのです。

心あたりのある人は、かつての勤務先か企業年金連合会、国民年金基金連合会に問い合わせてみましょう。その際は、基礎年金番号を用意するとスムーズです。

森田 悦子

日本FP協会認定AFP(ファイナンシャルプランナー

石川県生まれ。金沢大学法学部を卒業後、地方新聞記者、編集プロダクションを経て独立。主な執筆分野は資産運用、年金、社会保障、金融経済、ビジネス。新聞、雑誌、ウェブメディアなどで取材記事やインタビュー、コラム、ルポルタージュを寄稿。共著に『NISA&つみたてNISAで何を買っていますか?』、『500円で入門 今からはじめる株投資』(以上、standards)など。

(※写真はイメージです/PIXTA)