俳優の橋本マナミさん(39歳)が、公開中の映画『身代わり忠臣蔵』に出演中です。遊郭の花魁・高尾太夫役で、ムロツヨシさんや永山瑛大さんと共演。短いシーンながらも、存在感を残しています。



 映画以外でもドラマでの活躍も目覚ましく、福田麻貴(3時のヒロイン)主演の「婚活1000本ノック」、月10ドラマ「春になったら」など、話題作への出演が続いている橋本さん。プライベートでは結婚・出産を機に、それまでの価値観が180度変わったと言います。


 そして40歳を前に「いろんな経験をしたい」とも。本人にお話を聞きました。


◆お芝居には「人間性が全部出る」



© 2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会



――最近は、映画では今回の映画『身代わり忠臣蔵』、ドラマでは福田麻貴(3時のヒロイン)主演の『婚活1000本ノック』、月10ドラマ『春になったら』など出演が続き、今年は40歳の節目も迎えられると思いますが、決意新たにすることなどありますか?


橋本マナミ(以下、橋本):やっぱりお芝居が一番好きなんです。『身代わり忠臣蔵』の花魁みたいな役だけでなく、正反対の全然違うような役もいただけたりしてきたので、もっともっと人間的にいろんな経験をしたいと思っています。子どもを産んだこともわたしの中でとても世界が広がり、まだ経験したことがない感情などを感じることができたので、丁寧に毎日の生活をおくりつつ、そういうことをお芝居にも活かしていけたらなって。そういう人間性が全部(お芝居には)出ると思っているんです。


――『身代わり忠臣蔵』では遊郭の花魁役ということで、役柄についてはどう理解して演じたのですか?


橋本:高尾太夫は花魁の中でトップにいる人なのですが、その仕事を選ぶ背景にあるであろう生い立ちやつらさなどを全部自分の中で乗り越えて、あそこまでの地位を築いている人だと理解しました。つらい過去はあるけれど、自信や男性を包み込む母性を大事にして演じました。


――ムロさんのまるで子どものように自由奔放なお芝居の影響もあったと思いますが、確かに表情や佇まいに包み込むような母性のようなものを感じました。


橋本:トップに立つ存在感みたいなものも出せたらいいなと思ったのですが、なかなかそれって難しいんですよね。なので、落ち着きだったり、そういう点は意識しました。所作の先生はいらっしゃらなかったのですが、動きも指先までしっかり意識して丁寧に演じました。


◆子どもを産んだことで、ひとつ強くなれた
――お子さんが生まれる前と今とで、どう世界が変わったのでしょうか。


橋本:地に足が着いた感じです。それまでは仕事にすごく不安があったり、自分の中でこれでいいのかなとか、このまま仕事を続けられるのかなと思うことがあったのですが、子どもを産んだことでひとつ強くなれたんです。なるようになるさ、という気持ちで、ちょっと吹っ切れた感じがします。


なので、表情も変わったと言われます。それまでは戦闘体制だったのですが、少し表情が優しくなったり、あとは余裕が出ました。それまでは次に繋げなきゃと必死で、余裕が出たことによって見てくださる方々からの反応も変わったり。今は穏やかになったよね、とおっしゃっていただけたり、自分でもそうなることが、意外だったんですよね。


――吹っ切れたということは分かるのですが、余裕が出てきたことは不思議ですね。


橋本:不思議ですね(笑)。多分、自分が一番じゃなくなったからだと思います。


――お子さんが一番になった。


橋本:それまでは自分中心で、わたしがやりたいことをいっぱいやって、自由に生きて来たのですが、そうじゃない、思い通りにいかないものができたことによって、そこでいろいろな感情をかき乱されるわけですよね。子どもとの時間って、今しかないじゃないですか。自分が一番じゃなくなったことは、本当に大きいですね。


◆“お色気”的なキャラクターを演じていた時期も



――自分が一番の時は自由だったが、今よりも大変に感じる瞬間があったと。


橋本:しんどかったですね。楽しかったですが、視野がすごく狭かった感じがします。あと、メリハリもなかった。育児の時間、仕事の時間と、今はメリハリもできています。


あと結婚前は、たくさん飲み歩いていましたね。なので、体重管理もできなかったですし、人と繋がらなきゃみたいな焦りがあったんですかね。なんだか自分、本当にふわふわしてました。自分がちゃんと確立していなかった感じですね。


――世の中の人は、橋本マナミさんのことをテレビでの印象から“お色気”的なキャラクターとして観ていた時期だと思いますが、その時でも確立していなかった?


橋本橋本マナミっていうテレビに出ているキャラクターは作り上げられたものなので、ある意味それを演じていたみたいな感じなんです。たとえば自分がしっかりある人って、要求されたことでも嫌なことは嫌と言えると思うのですが、わたしはその作り上げられたものを、みなさんが求めるものへ近づけようとしか考えていなかったので、途中から自分がなくなっちゃった感じになっていました。やりたくないこともそれに合わせて背伸びしてやっていたりとか。無理をしていた感じもありましたね。


――だからその時と表情が違うわけなんですね。


橋本:その時はよかったのですが、飽きられちゃったりしたら何も残らないなって。自分というものを確立していないと、“この人、魅力的だな”と思われないんだろうなっていうのは、その経験を経て思ったことです。今は自分がやりたいことをやりたいけれど、これは違うということもはっきり伝えたり。以前は周りに合わせすぎていたかもしれないです。


◆“スマホ依存”を改善して、インプットの時間にしたい
――冒頭でいろいろな経験をしたいと言っていましたが、具体的には何かありますか?


橋本:趣味もなく仕事が趣味みたいな生き方をしているのですが、もっと学を増やしたいですかね。ボキャブラリーも少ないですし、もっと本読んだり、もっと映画を観たりしたいなって。1日にちょっとでもそういう時間を作りたいなと思っているのですが、なかなか上手くいかなくて。そういうところはもっと充実させたいですね。


――やっぱり仕事をしてお子さんもいたら、そんなに自分の時間はないですよね。


橋本:実はスマホ依存症で……(笑)。SNSをボーっと見ている時間をそういうことに費やしたらとてもいいのになと思ってはいます。本当にあっという間に1時間とか過ぎちゃうじゃないですか。そういう時間をなくしたいんです(笑)。


――ただ情報を流してるのではなく、ちゃんとインプットしたいですよね。


橋本:なのでもっと勉強したいなと思います。人って歳をとると、頭を使うとか面倒臭いことを止めて行くじゃないですか。40代はなるべくそうじゃないほうに行けるようになりたいです。


<取材・文/トキタタカシ


【トキタタカシ】映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。